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2020年11月29日 (日)

「アンダードッグ 前編/後編」:やさぐれボクシング映画の最高峰   #アンダードッグ #武正晴 #森山未來 #ボクシング映画

1_20201129223401 映画『アンダードッグ』前編(2時間11分)/後編(2時間25分)を続けざまに観ました。いやー、「凄いものを見せていただいた」って感じ。夢中になって、一気に観られます。いつも大江戸がディスっている足立紳の原案・脚本なので、ここまで良いとは思っておりませんでした。あー、でも足立×武正晴監督のコンビ作『百円の恋』(2014年)は素晴らしかったですもんねー。このコンビとボクシングは相性が良いのでしょう。武正晴も近作『ホテルローヤル』では、テイストがマッチしていなかった感じなのですが、本作の見事なハマり具合ときたら! やはり男系の資質を持っている監督なんです。

やさぐれロートル・ボクサーの堕落と復活みたいな、邦洋ともに過去何度も作られてきた定番の物語を、素晴らしい役者たちの頑張りで、ドラマもボクシングの試合部分も見ごたえ十分、いや、それ以上です。ボクシング映画の最高峰に躍り出たと言っても過言ではないでしょう。それぐらい試合の描写が凄まじくも見事!感動してしまいます。他のボクシング映画と較べて、ちゃんと3分やってるんじゃないかと思うほど(本当はどうなんでしょうか?)ラウンドごとの描写が延々と長いのです。それでも目が離せないだけの迫力とバリエーションなのです。ラウンドのインターバルにおけるセコンドの描写も、詳細かつ的確です(こちらもちゃんと1分やっています)。

練習場面を含めて、見事な動きと見事な肉体を見せる森山未來。本当にボクサーの体を作っています。もちろん、やさぐれ男の情けなさに関しては自家薬籠中の役柄ですが、これまでの彼の集大成であり、最高の代表作となりました。 彼の対戦相手を演じる勝地涼、北村匠海の二人も、体の作り方は及ばないけど、ボクシングの動きに関してはしっかりしていました。作りもの感、違和感はほとんどないレベルです(ま、二人とも上腕二頭筋まではボクサーのようにはできなかったようですが)。

群像劇としての人間ドラマ部もしっかり構築されていて、それぞれがやるせなかったり胸に迫ったりします。まあ、こういう作品なので通俗的ですし、時々わかりやす過ぎるぐらいの説明的描写や台詞もあったりはします。でも、それとても少なめに抑えようとしていることがわかりますし、逆に通俗なるがゆえの「強度」を獲得していることも確かです。Underdog

脇役の中では森山が所属するジムの会長を演じる芦川誠が(特に最後の試合の終盤など)良かったです。後から調べて、ああ芦川誠だ!と驚きました。初期の北野武映画での気弱そうな彼が、こんなおっちゃんになったんですねえ。

同じボクシング映画であり、前編は素晴らしかったのに後編で大いに失速してしまった『あゝ、荒野』(2017年)の例があるもんですから、本作もちょっと心配したのですが、杞憂でした。後編も全く揺ぎなく素晴らしい出来でした。

もう(後編の)最終版にはかなり泣けてしまいました、そして、森山の放つ「やっぱこれだよな」に胸を打たれました。従来の日本映画の枠を超えるほどの重量級なエンタテインメントです。結構な衝撃を受けました。大江戸の本年度ベストワン候補であることは、言うまでもありません。

 

 

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