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2021年1月 3日 (日)

「クリスト ウォーキング・オン・ウォーター」:幸福な景色の裏側の地獄   #クリスト #ウォーキングオンウォーター 

01_20210103215301『クリスト ウォーキング・オン・ウォーター』は、2020年5月に逝去したクリストの最後の大プロジェクト「フローティング・ピアーズ(浮かぶ桟橋)」のドキュメンタリー映画。これまでクリストのドキュメンタリー映画というと、1995年のライヒスターク(ドイツ帝国議会議事堂)梱包プロジェクトを記録した『議事堂を梱包する』(2000年日本公開)がありますが、長年のパートナーとして作品づくりを二人で行ってきたジャンヌ=クロードが2009年に他界した後では初めてのこと。

『議事堂を梱包する』では、作品公開の何年も前からの関係者説得や役所対応、素材の開発などを入念に描いていき、最後に作品公開の幸福な時間が用意されていたのですが、本作はちょっと違います。事前準備段階をすっ飛ばして、数十日前からスタートしていき、直前のあれこれ、そして開催されてからのトラブルをかなり丁寧に追っていきます。作者本人のコントロールを超えて動いていくプロジェクトの予想外のスリリングな動きとか、クリスト作品の制作資金となっている絵画のコレクターへの販売風景など、興味深いシーンも満載です。

見事なパートナーであり、緩衝材ともなっていたジャンヌ=クロードがいなくなったためか、クリストが随分と攻撃的なジジイになっちゃったようです。映画の中でも終始、周囲と激論を交わし、しばしば怒鳴りながら怒っています。とても孤独に見えます。ただ今回の場合はその怒りも正当なことが多く、作品の公開直前に風雨が襲い、公開が始まってからイタリア当局の動きの悪さ、対応の悪さによって想定以上の観客をさばけずに追い込まれていくあたりは、デスパレートな状況が延々と続いて、観るのがつらいほどです。これで本当に事故でも起きてたら、まさに地獄ですよね。

それでも最後には、クリスト作品につきものの、人々が心から作品をエンジョイする「幸福な景色」が映し出されます。これがあるから多くの困難にも負けずに、彼はプロジェクトを続けたんでしょうね。本作の最後も、ドバイの砂漠で次のプロジェクトを構想するクリストを捉えた映像です。

スポンサーには頼らず、何十億という費用はすべて作品にまつわる絵画やドローイングやリトグラフを売って自ら捻出するという、驚くべきアーティスト=クリスト。もう、こんな人は二度と現れないでしょうねえ。 良い映画でした。

(当ブログのクリスト逝去の記事はこちら ↓)

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-0e6fce.html

 

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