「チャンシルさんには福が多いね」:何も起きずに地味でささやか #チャンシルさんは福が多いね #キムチョヒ
映画『チャンシルさんには福が多いね』は、ホン・サンス作品のプロデューサーを務めてきたキム・チョヒによる長編監督デビュー作。冒頭のアレを除けば、大したことは起きない映画。地味でささやかな小品です。
主人公のチャンシルさんは映画プロデューサーで、自伝的要素の強い作品なのでしょうが、ある理由でプロデューサーじゃなくなっちゃった彼女がどうするか?という話なので、もちろん創作の部分も多いのでしょう。そこらへんの様々な人々との関わりが、ちょっとおかしくてクスリとさせる感じ。終始、そういう「くすぐり」に満ちた作品です。
(以降少々ネタバレあり) でも結局チャンシルさんにはあんまり福がないような映画でして、まあ多少の希望を示して終わりますが、「福が多い」とは言い難いんじゃないでしょうかねえ。でもそんな厄介や面倒のある日常を生きていること自体が「福」なんだってことかしらん?
そういえば、作中でチャンシルさんが気のある男性と日本風居酒屋で映画談義をする場面があるのですが、小津安二郎が好きなチャンシルさんは、男性から『東京物語』は何も起きなくてつまらない、自分はクリストファー・ノーランの方が好きなどと言われて、ちょっと反発します。この作品の「何も起きない」感は、小津に起因しているんですかねえ?(ホン・サンス作品も、かなり何も起きないですけど。)
大江戸はやっぱりホン・サンス師匠の「男女の機微」と「エスプリ」の方が、好きなのであります。
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