「本気のしるし」:ヤキモキと腹立ちと #本気のしるし #深田晃司
映画『本気のしるし』は、昨秋の公開時に1週目を逃したら2週目にはもうほとんど(時間帯的に)観にくい状態であきらめ、この再公開(@シアター・イメージフォーラム)を待望していた作品。何しろ深田晃司監督ですし、評判はやたらといいし、これを観ずにベストテンは選べないでしょうから。
ドラマを編集した劇場版なのですが、3時間52分あって間に「INTERMISSION」が入ります。でもまあ2本立てと同じことなので、そんなに「長ーい」って感じはなくて、いやむしろ「短かったな」ぐらいの印象を受ける4時間なのです。面白いと言えば面白い。
(以降少々ネタバレあり) ただ、大江戸はその間ずっとけっこうヤキモキしていました。いやむしろこの変な女に腹を立て続けておりました。なんなんだ、このモンスターは?! そして、男に対しても。なんなんだ、その不条理な理解しがたい行動は?? その行動を正当化できるような、二人の恋愛が破滅的に惹かれあっていることを納得させる描写がないので、多くの場面でリアリティがなく、むしろコントのように見えてしまいます(そもそも何であんなに簡単に金をポンポン渡しちゃうのか? あんた、どう考えてもだまされてるだろう?)。そこが、ちょっと似たものを感じさせながらも、濱口竜介の『寝ても覚めても』とは決定的に違う所ですね。
しかもこの女がそこまでのファムファタール的な何かを持っているように見えたら、映画的にはまだ納得できたのですけど、あまりに素人顔過ぎて、輝くものがなくて、この男が堕ちていくだけの映画的理由が感じられないのです。実世界ではこういう顔の人がそういうことになることもあるのかも知れませんが、映画としては成り立たないと思います。観てる間ずっと「ミスキャストだな」という違和感しかありませんでした。例えばこれが(『寝ても覚めても』に主演した)唐田えりかだったら、現在の悪いイメージまでひっくるめて、非常に納得性の高いキャスティングになったように思えます。
ああ、この女の口から頻繁に出る白々しくもイラっと来る「すみません」が、頭にこびりついてしまいました。そういった意味からすると、この映画にまんまと一撃食らってしまったのかも知れませんけどね。 その一方で、ラストは腰砕けだったと思います。もっと衝撃のラストが似合う作品なのになあ…。
| 固定リンク
コメント