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2021年2月28日 (日)

「あのこは貴族」:現代日本の「階級」   #あのこは貴族 #岨手由貴子 #上流階級 #東京映画

1_20210228225301 映画『あのこは貴族』は、新進の岨手由貴子監督(脚本も)による完成度の高い逸品。日本映画の歴史に残っていく作品だと思います。原作の山内マリコの功績も大きいのでしょうが、とにかく脚本と演出が見事で、最初から最後まで引き込まれました。平等社会であるはずの日本の中の「階級」という目の付け所を、物語として鮮やかに昇華させています。

大江戸は庶民というか、マジョリティー的な一般家庭の出なので、社会に出るまでピンと来なかったのですが、ある程度長く生きてるとこの映画で描かれているような上流の家庭というものが日本にも確実に存在することがわかって来ますし、その片鱗に触れることもあります。そういう世界の方々って経済的には苦労がないかも知れませんが、一方では庶民が全く分からない苦労を抱えていたりする--そこらへんがこの映画でも描かれています(逆もまた真)。こういうの見ると「上流も庶民も、それぞれ別種の悩みや苦労を抱えていて、その総量はどっちも同じようなもの」かも知れないなあと思ってしまいます。

それと合わせて描かれるのが、ジェンダー的呪縛の問題。女も男も、それぞれの「らしさ」や「こうあるべき」に絡み取られて動けなくなっている、特に「家」制度を中心に存続している上流の人々にとっては。でもそういう人々が日本を動かしていることも事実。ここらをきちんと描いたことも、日本映画の中の問題意識として貴重です。

しかも二つの階級が争うでもいがみ合うでもうらやむでもなく、ゆるやかな連帯(少なくとも心情的に)へと歩み寄っていく、少しでも理解しようとしていく--この映画のそういった姿勢はとても気分の良いものでした。

大江戸は門脇麦も石橋静河も非常に苦手な女優なのですが、本作ではいつもよりも悪くなかったです。あと、門脇と水原希子が役をチェンジしたらどんなことになっただろうかと夢想したりもしました。そして、「主役の親友キャラ」が十八番になってきた山下リオ。 今回もいい味出してます(夜の東京での二人乗り自転車の場面とか)。これからもその芸風で、バイプレイヤーとして重宝されるのではないでしょうか。

ロケーションを生かした「東京映画」としても良い出来だったことを付記しておきましょう。

 

 

 

 

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