「すばらしき世界」:不寛容の時代 #すばらしき世界 #西川美和 #役所広司 #ヤクザと家族
映画『すばらしき世界』は、西川美和監督が初めて原作ものを手掛けた作品。昨年の秀作『朝が来る』は河瀨直美監督初の原作ものでしたが、興味深い符合ですね。両作とも現代社会の抱えるいろんな問題と真摯に渡り合うことにおいても共通しています。共通点といえば、先週観た『ヤクザと家族』とも相通じる部分の多い作品です。
各方面から「2021主演男優賞は決まり!」とか言われている役所広司ですが、まさに彼の魅力や巧さから目が離せない役どころです(「役所」と書くとまぎらわしいので)。この男を描き、彼のまわりの人々を描くことで、その中に現代社会の歪(ひずみ)が浮かび上がって来ます(「歪」っていう字は「不正」なんですねえ)。質の高い表現の中で、人間の良い所も悪い所も等価に描き出される、そういう映画です。『ヤクザと家族』同様、元受刑者や元ヤクザの更生、社会復帰の機会をつぶすようなシステムや法律というのはどうなんだろう?という訴えも含んでいます。
役所さん以外の俳優たちも、素晴らしい演技です。ヒゲ&メガネでいつもとはちょっと違った印象の仲野太賀をはじめ、六角精児、キムラ緑子などがみんないい。やっぱり(脚本も手掛けた)西川美和監督の腕ってことなんでしょうねえ。
よく言われることですが、今の社会はどんどん不寛容になって来ました。同調圧力や異物排斥による息苦しさ。一発アウトでやり直しが許されないことや、罪と罰の割合が合わないほどに徹底的に叩きつぶす無名の人々の容赦なさ(昔は逃げ道を残しておいてあげるのが人の道ってもんでした。「お互い様」とか「明日は我が身」ってことをみんな理解してましたから)。この生きづらい社会を上質な娯楽映画に仕立てながら、観たものにいろんな事を考えさせる・・・西川監督、良い仕事をしたと思います。でも、いつもの彼女の「毒」がないのでは?と思ったら、ありました。このタイトル自体が一番の「毒」になってますよね。
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