「椿の庭」:日本の美 #椿の庭 #上田義彦 #富司純子 #葛西薫 #日本家屋 #着物映画
映画『椿の庭』は、写真家・上田義彦の初監督作品(脚本・撮影も担当)。とにかく映像が美しく、実にフォトグラファーらしい作品に仕上がっています。でもそれだけではなく、映画としてもいい線行ってます。
懐かしい日本家屋(とその庭)の中で、美しく丁寧な生活が営まれています。現代では本当に希少になった、日本の忘れてはいけない、なくしてはいけない美と矜持でしょう。その家と一体化しているかのように凛として生きているのが、富司純子演じるおばあちゃん。いやー、素晴らしいです、この気品。彼女が手慣れた様子で着物を脱ぎ着するシーンの、その所作の美しさ。しびれますね。さすがに長年梨園の妻を務めてきただけのことはあります(着物自体も渋くて品があっておしゃれで、良い物です)。富司さんの気品あふれる名演は、何か賞をあげたいぐらい見事なものでした。
静かな映画です。人物の背景や現在の状況などを、ほとんど説明しません。だから、台詞の端々から少しずつ想像していくしかなくって、終盤に至ってようやく「そういうことか」と全体像が飲み込めた次第(それでも個々人の解釈に任せているところもあるように思います)。
庭やら金魚やらを結構長めに撮っていたりして、人によっては飽きちゃう人もいるかもしれないのですが、大江戸は気持ち良くてしょうがなかったです。まさに「眼福」の映像。匂いや風までもが感じられるようです。
そしてこの家が主役と言ってもいいぐらいです。日本家屋としての端正な美しさはもちろんのこと、洋風な部分もあって、それが実に上質なのです。洗面所の陶器の洗面器やその下の籠、廊下や革張りの椅子やモダンなテーブルなど、いかにも昔の金持ちらしい質感と趣味の良さが見て取れるのです。やっぱり写真家の目ですねえ。この葉山のお屋敷は、上田監督がかつて暮らした家だとかスタジオだとか(詳細不明)ネットに書いてありました。さすがですねえ。そしてポスターをはじめ、繊細で美しいアートワークは、大江戸が大好きな葛西薫さんなのでした。
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