「子供はわかってあげない」:上白石萌歌が圧巻! #子供はわかってあげない #沖田修一 #上白石萌歌
映画『子供はわかってあげない』が予想以上に素晴らしくて、驚きました。2年ほど前に『殺したい彼彼と死なない彼女』(小林啓一監督)が予想以上に素晴らしかったのと同じぐらいのレベルで驚いて、そして感動しました。これまで沖田修一監督作品って、イマイチの評価だったんです。ゆったりし過ぎていて&オフビートなユーモアが笑い切れなくて、ちょっとかったるかったりして…。ところが本作は、実にステキな夏の青春ものであり、見事な家族の映画であり、少女の成長譚でもあり、いろんな要素を入れながら、どれも満足のいくレベルに仕上げてくれてました。138分を一気に駆け抜ける好テンポの「ネオ沖田」的快作です。
プールの青、海の青、空の青、制服のシャツの白、雲の白、水しぶきや波や砂浜の白。夏のまばゆい光の中、白とライトブルーが基調となっている映像が、爽やかです。衣装もこの白とライトブルーを意識していて、成功しています。
そんな世界で描かれる高2の夏の日々。みずみずしく、ペーソスやちょっとした感動もあって、描写は素直だし、それでいて沖田流のとぼけた笑いも満載だし、いやー、今回は映画として見事なバランスで成功しておりますね。満足しました。笑いました。涙腺にも来ました。ラストの屋上シーンは、名場面として映画史に残っていくことでしょう。
役者たちがみんな素晴らしいのです。細田佳央太、千葉雄大、豊川悦司、古館寛治、斉藤由貴、中島琴音(子役)、それぞれにいい味出してます。 けれど、圧倒的かつ奇跡的に素晴らしいのが、上白石萌歌! いやー、ここまでの味わいを出してくれるとは! まいりました。ショートカットで、やけに頬がふくらんでいる顔型をしっかり露出させながら、現在21歳、撮影当時19歳だったという彼女が、高2の女の子の輝きを見事に発しています(決して熱演などはせずに)。相米慎二が薬師丸ひろ子を使って、少女の内面からの輝きを画面に定着させた、そんな感覚です。大江戸的には、今年の主演女優賞候補です。
物語の重要なファクターとなる(架空の)アニメ番組『魔法左官少女バッファローKOTEKO』を、本気で作って、オープニングからたっぷり見せたりもしています。そこらのしっかりした作り込みと情熱が、映画のクォリティ・アップに貢献しています。そういった意味では、撮影(芦沢明子)も美術も衣装も脚本も演出も…みんなレベルが高いのです。そして撮影と言えば、序盤と終盤に学校の階段をずーっと降りる長回し、ずーっと昇る長回しがあって、その躍動感、スピード感も見事。それ以外の長回しも、それぞれに効果的でした。そんな所にも、相米慎二の十代少年少女映画を思ったりしたのでありました。
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