「ONODA 一万夜を越えて」:不可思議な秀作 #ONODA #一万夜を越えて #小野田寛郎
映画『ONODA 一万夜を越えて』は、フランス人監督(アルチュール・アラリ)&スタッフによる5か国合作映画。あのルバング島の生き残り兵士=小野田寛郎さんを描くという驚くべき企画ですが、真剣な秀作に仕上がっておりました。
2時間54分もあるのですが、決して長いとは感じませんでした。もっと観ていたいぐらいでした。小野田さんがジャングルで過ごした長い長い時間を、少しだけでも映画的に体感させるためには、このゆったりとした時間の流れが必要だったのだと思います。
遠藤雄弥と津田寛治が(年代別に)二人で演じる小野田さんはそれぞれ名演であり、フィクションに血を通わせ、説得力を持たせていました。津田さんなんかやせ細って、凄い恐ろしさを身にまとって、鬼気迫るものがありました。仲野太賀もイッセー尾形もその他の俳優たちも素晴らしかったです。
なんか戦争映画とも言えないし、サバイバルのドラマって言うのも違うし、日本人論でもないし、もっと普遍的な、何か不可思議なものを描いているような気がします。一方では、こういう人(横井さんも含めて)を生んだのが世界で唯一日本だったということに対し、当時の教育に対して思いを馳せないわけにはまいりません。教育というのは、恐ろしいものでもありますから。
(以降ネタバレあり) 映画の中でも小野田さんらによる放火や殺人が描かれていますが、実際にそういうことも数多くあったようです。ということで、小野田さんを巌窟王的ヒーローとして描くなどということはなく、そのあたりも一般的な娯楽映画とは異なるテイストの作品となっています。
でも、とにかく「力のある」映画でした。これ、日本で作るべき作品だったんじゃないかなあ。『MINAMATA ミナマタ』といい本作といい、外国人の方が真摯に作ってくれたことには感謝ですが…。
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