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2021年12月26日 (日)

「偶然と想像」:知的で奇跡のような3篇   #偶然と想像 #濱口竜介 #世界に誇れる日本映画

1_20211226222701 映画『偶然と想像』は、濱口竜介監督による3話からなる「短編集」。実はこの後にまだ4話分の構想があるのだそうです。濱口監督と言えば、5時間17分の『ハッピーアワー』とか2時間59分の『ドライブ・マイ・カー』があるので、長い映画の人って印象なのですが、今回は40分ほどの作品を3つつなげた2時間1分の作品です。

いやー、凄かった。見事です。ベルリン映画祭銀熊賞は伊達じゃありませんでしたね。大江戸的には『ドライブ・マイ・カー』よりも断然上です。「凄かった」という言葉が全く似つかわしくないほど、軽々と飄々とした作風。でも、よくぞこんなアイディアを思いつくというぐらい、脚本(もちろん濱口竜介)が天才的なのです。大胆かつ繊細。ほとんど奇跡のような展開で、これはこれまで日本映画のみならず世界の映画界においても、誰も成し得なかったレベルの達成なのではないでしょうか。いやー、濱口竜介おそるべしです。しかも笑えるし。

エリック・ロメールを意識したと監督自身が言っていますが、小生はロメールを全然観たことがないので、よくわかりません。3篇とも、とにかく言葉の力を信じた会話劇です。それと同時に役者の演技の力を信じてもいます。考えてみれば、3篇とも「演じる」ことが重要な要素となっています。そのあたりも、いかにも濱口監督なのです。どの役者もピタリとハマっているように見えますし、古川琴音も渋川清彦も「あ、こんなに巧かったんだ」って感じでした。渋川さんにこんなインテリの役ができるなんて、(失礼ながら)びっくりでした。

あえて台詞の棒読みをさせて、言葉をはっきりわからせるようにしていたりもするのですが、棒読み度は役者によって差があります。それに加えて真正面からのバストショットが出てきたりすると、どうしても小津安二郎を連想してしまいます。 一方ではホン・サンスのような「バカズーム」があったりもするのですが、まあ、ホン・サンスの使い方とはちょっと違いますね。

3篇とも素晴らしく、世界に誇れるレベルとなっていました。世界の人々に「日本にはこういう映画を作れる監督がいる」と自慢したい気分です。日本映画界に、ここまで「知的」な監督はかつていなかったと思います。残る4篇(+α?)を観ることのできる日が楽しみです。

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