「さがす」:鈍器的な社会派エンタテインメント #さがす #片山慎三 #佐藤二朗 #伊藤蒼 #清水尋也 #森田望智
映画『さがす』は、2019年の『岬の兄妹』で、重苦しいインパクトを残した片山慎三監督の第2作目にして、初の商業映画。佐藤二朗をはじめ名の知れた俳優を使っています。
写真で見る片山慎三監督は、短髪で首が太くてガタイが良くって、ラガーマンのようです。映画の現場よりも工事現場が似合いそうです。その作品にも、「首が太い人が作った」感じがあります。それにしても、前作から大きく進歩しましたね。ミステリー&サスペンスの要素を持つ社会派エンタテインメントとして、きっちり成功作になっています。貧困、死への願望、ネットの闇、安楽死、親子の問題など多くの要素を詰め込みながら、適切なバランス感覚で、一般観客にも受け入れてもらえる娯楽作になっているのです。観る者の心に、爪痕を残しながら。
この、ハンマーでぶっ叩くような、鈍器で殴るような作風(とその中にあるユーモア)は韓国的だなあと思ったのですが、片山監督は韓国でも修行していて、ポン・ジュノの現場なんかについてるんですってね。なるほど、さもありなん。納得です。
役者が誰も彼も見事。それは演出の良さってことなんでしょうねえ。 佐藤二朗は福田雄二作品の印象が強過ぎて辟易していたのですが、本作では抑制を効かせて、韓国映画に出て来そうなオヤジさんを演じてます。 八の字眉毛の伊藤蒼は、冒頭走って信号が変わる前の横断歩道に走り出したりするもんだから、『空白』を観た人はみんな「危ない! 大型トラックに轢かれるぞ」と思ったことでしょう。その後の場面も「スーパー」「万引き」なので、笑ってしまいます。偶然なんでしょうけど。いやー、それにしても先が楽しみな「女優」です。 清水尋也の得体のしれない個性を生かしたこの役柄もなかなかです。 そしてアッと驚いたのが森田望智(最後まで彼女だとは気づきませんでした)!いやー、この役のインパクトは強いっす。嫌悪感すら感じさせるいかがわしさと性格の悪さ、そして最後に見せる別の表情。ほとんど助演女優賞ものです。
(以降ややネタバレあり) ラストシーンも見事。卓球台を挟んでラリーを続ける父と娘。そこでの会話の映画的効果と複雑な味わい。あのピンポン玉は、映画『ピンポン』のようにCGなのかなあ(ですよね)と思いながら、観ておりました。
最近のコメント