「当りや大将」:ドイヒーな大将 #当りや大将 #中平康 #新藤兼人 #長門裕之 #轟夕起子
映画『当りや大将』(1962年)を、シネマヴェーラ渋谷の中平康特集上映で観ました。日活映画、モノクロです。なんと脚本は新藤兼人です。
都会派・中平康監督にしては異例な、大阪・釜ヶ崎ドヤ街のガラが悪い連中の物語。主役の当りや大将は長門裕之(この頃は桑田佳祐の若い頃っぽいんですよね)が演じます。
いやー、いろんな意味で今では作れない作品です。日本、貧しかったんですよね、まだこの頃は。そしてこのぐらいコンプライアンスだの何だの無用だと、あまりに猥雑で自由で、むしろハッピーな気がしてしまいます(本当はそんなことないんですけどね)。 でも物語自体は予想以上に重いんですよ。なにしろこの大将が相当ひどい奴、悪い奴で、「道徳観念ってものがない」んです。ま、新藤兼人が書いたわけですから、「そんな非道で欠落した人間を生んだのは、たどっていけば“戦争”だ」となるのかも知れませんが、映画ではそこまで明示はされておりません。
(以降ネタバレあり) そんな大将に、息子のためのなけなしの貯金をだまし取られてしまった轟夕起子の絶望が、これはもう名演というしかありません。凄みがあり、圧倒されます。そういったわけで、終盤はかなり暗い話になります。
でも、子供たちのための公園だとかブランコだとか…、黒澤明『生きる』の裏バージョンだったのかあ!と思っちゃいました。まあ、そういうことなんでしょうけど、映画としては異常にバランスの悪い失敗作と言ってもいいのではないでしょうか?
轟夕起子演じるホルモン屋の女将がいつも「♪雪の降る街にー 雪の降る街にー」と壊れたレコードのように歌っていて、絶対その先(思い出だーけが通り過ぎてゆーくー)には行かないんですけど、終盤にも多用されて、このフレーズが耳に残っちゃいます。でもなんで大阪の釜ヶ崎でこの歌? しかも正しくは「雪の降る街をー」でしょ? 謎過ぎます。
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