「ドント・ウォーリー・ダーリン」:フェミニズムと反トランプの寓意 #ドントウォーリーダーリン #オリヴィアワイルド #フローレンスピュー
映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』は、広告に「ユートピアスリラー」とあるように、明るくハッピーな画面と、その奥の不穏で得体の知れない恐怖が同居した作品。フローレンス・ピュー主演なだけに、どうしても『ミッドサマー』を連想してしまいますが、あれとはだいぶ違いますね。
むしろジョーダン・ピール作品のような、居心地の悪い不安感に満ちています。そして、ビジュアル的にも色々と凝っております。’50年代の「古き良きアメリカ」を思わせる世界が舞台で、みんな同じような家が並ぶサバーバン的風景は、ティム・バートンの『シザーハンズ』の住宅地にそっくり。また、デイヴィッド・リンチの『ブルー・ベルベット』的な悪夢でもあるわけです。てな感じに、オリヴィア・ワイルド監督が先人たちの遺産に敬意を表しながら、なかなかセンスの良い仕事をしています。
本作は監督と脚本家(ケイティ・シルバーマン)が女性であり、終盤になって「ああ、これはフェミニズム映画だったんだ」と納得がいきました。 (以降ネタバレあり)「理想の主婦」むしろ「トロフィー・ワイフ」として、夫を立て自分は存在を消すような価値観をを尊ぶ世界の不気味さ。それは女性の側からの異議であると共に、「強いアメリカをもう一度」というドナルド・トランプ的潮流への警告でもあると感じました。そういったポリティカルな寓意を内包しつつ、これだけのエンタテインメントに仕立て上げるんですから、やっぱりハリウッドってすごいですね(残念ながら日本映画じゃ、こういうの絶対出てこない)。 とはいえ、ラストは放り投げ過ぎ、解決しなさ過ぎだと思うけどなあ。
フローレンス・ピューはやっぱりクロエ・グレース=モレッツに似てるなあ。そして、(言っちゃあなんだけど)太りやすい体質なんでしょうね。彼女の演技が意外なほど見事でしたが、ガラスに顔を押し当てる場面があったり、サランラップを顔に巻き付けて変顔になる場面があったりして、その撮影現場を想像すると笑っちゃいますよね。現場でもきっと笑っていたことでしょう。
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