「アフター・ヤン」:哲学と建築と眠気 #アフターヤン #コゴナダ #哲学的エスエフ
映画『アフター・ヤン』は、静かで独自の美学に満ちた佳作『コロンバス』のコゴナダ監督の長編第2作。ゆったりとした東洋的時間の中で描かれる哲学的SFです。先日も何かの折に、「SFというものはすべからく哲学的だ」とか「SFは哲学を語るための道具」とか書いた大江戸ですが、本作もまさにそういう作品です。
ただ、面白かったかと問われれば、前作のようには面白く感じませんでした。建築を通して人間を描いた前作の才気に比べて、本作はかなりスタイリッシュに作っているものの、どうも没入できないのです。それどころか、眠くなって困りました。静謐でゆったりなのが、睡魔を誘います。 それに哲学部分も、それらしくはあるのですが、「結局何が言いたいの?」と思わなくもありませんでした。
前作ほどではないにしても、建築やインテリアの見せ方が素敵であり、本作の一番の見どころかも知れません。窓や扉や柱を使い、四角く切り取られた風景や空間。その美しさ。矩形の構図への感覚が見事です。ある意味、石本泰博の写真集『桂離宮』を思わせるようで…。
小津安二郎の信奉者であるコゴナダ(小津作品の脚本家=野田高悟から取った名前)監督だけに、正面からのバストショットも時々あって、おおなるほどと思ったりしました。
それにしても、冒頭の家族ダンス対抗戦はヘンテコリンでしたねえ。本編とぜんぜん合わない奇妙なトーン。なんだったんだ、あれ?
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