「傲慢と善良」辻村深月 #傲慢と善良 #辻村深月 #究極の結婚小説
辻村深月の小説『傲慢と善良』(朝日文庫)を読み終えました。2019年の刊行で、昨秋文庫化されたものです。この表紙の絵、妙に惹かれる神秘性がありますよね。 いやー、面白かったです。
(以降少々ネタバレあり) 序盤からしばらくの間は犯罪がらみのミステリー小説だと思って、読み進むのです。ところが中盤以降、読者は思いがけない方向に運ばれて行きます。そしてだんだん、「これいったいどういう所に着地するんだろう?」と思って、ページを繰る手が止まらなくなる。そんな小説です。そして最終的には、思いがけない所、でも素晴らしい場所に連れて行ってくれました。
そのタイトルが示す通り、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』(作中の会話にも登場します)につながるものがあるのです。18世紀末から19世紀初頭のイギリスの田舎を舞台にした「究極の結婚小説」と言われているのですが、それに倣えば本作は、現代日本を舞台にした「究極の結婚小説」たり得ているのです。そこにあぶり出された今の日本の(地方のムラ社会や家族や世間体や見栄やマウンティングなどなどの)病理が、見事な社会批評とも人間界の真実ともなっていて、いろいろと考えさせられました。自分と言うものがなくても、流され続けても生きていける、そんな時代ゆえの「生きづらさ」にメスを入れた見事なエンタテインメントだと思います。観察眼や事象の分析、そして心理表現が卓越しておりますね。
最終盤などはかなり感動させられました。大江戸なんか電車の中で立ちながら読んでいて、目に涙がたまっていき、泣いてました。「なんだこの人は?」状態ですね。
これ、映像作品になるなあと思いながら読んでました。NHKの5-6話連続のドラマあたりが一番適しているように思えますが、映画でもなんとかなると思います。
辻村深月の小説は初めて読んだのですが、昨年の秀作映画『ハケンアニメ!』の原作者ってことで、読む前から一目置いておりました。読んでからは、もちろんもっと尊敬して、他の小説も読みたいと思った次第なのです。
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