「完全な遊戯」(1958年): 悲劇と正義 #完全な遊戯 #芦川いづみ #神保町シアター
神保町シアターの特集上映「恋する女優 芦川いづみ」(かれこれ第5回目です)で、『完全な遊戯』(1958年/モノクロ・ワイド)を観ました。原作は石原慎太郎。太陽族映画の週末を告げる作品という位置づけのようです。
なかなか見ごたえがありました。監督は舛田利雄。オープニングからいきなり雀卓の周りをカメラがぐるぐる回ったり、雀卓の俯瞰があったりで、攻めてます。その後はテンポの良い演出で、物語の面白さをたっぷり味合わせてくれます。
悲劇なのです。物事が「そっちへ進んじゃいけない」方にばっかり進むのです。そして軽いノリで始めた大学生たちの競輪ノミ屋詐欺が、中盤以降とんでもない方に転がっていきます。それにしても太陽族ってこういうことだったんですかね?単なるゴロツキどもじゃん。まあ、だからラストは正義の方を向いていることで、何とか作品のバランスをとっています。観てる方の気分的にも、あのラストで救われます。
芦川さんはかなり素敵でした。そして薄幸な役。でも彼女の顔は幸薄い役が似合うのです。(以降少々ネタバレあり) 彼女が岡田真澄演じるチンピラ大学生にレイプされたことを示す場面における、薄暗い場所での芦川さんの後ろ姿が見事でした。放心して抜け殻になったような後ろ姿と乱れ髪。これはまあ、舛田演出をほめるべきなのでしょうけれど。
小林旭が不良大学生の一人を演じているのですが(当時の大学生なので、詰襟学生服姿)、似合わないなー。大学生に見えません。まあ、そんなこと言ったら全員見えないんですけどね。特に最年長の女房持ちの学生を演じた梅野泰靖にびっくり。『ラジオの時間』をはじめとする三谷幸喜作品でおなじみの梅野さんに、こういう若い時代があったのですねえ(あたりまえですが…)。
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