「ショーイング・アップ」:繊細な心の動きと美しい余韻 #ショーイングアップ #ケリーライカート #ミシェルウィリアムズ
映画『ショーイング・アップ』は、ケリー・ライカート監督の2022年作品。「A24の知られざる映画たち」という特集上映における公開です。大江戸にとっては、新年の1本目と2本目が期せずしてケリー・ライカート作品となりました。
小生の好みからいくと、断然こっち推しです。ライカート作品4本目となるミシェル・ウィリアムズがまたも好演。アートをめぐるアマデウスとサリエリのような要素もある物語。
結局この主人公、常識人過ぎるのです。なので、陶芸人物像の作品も悪くないけどある意味常識的。そこいくと非常識な所のあるジョーの作品は、もっと突き抜けています。アートの深さや格の違いが、主人公にはわかってしまう、それゆえの辛さとむしゃくしゃする心情。そういう微妙な心の動きをきちんとわからせる、見事に繊細な映画なのです。
のんびりと、ユーモアをまぶしながら描く作品なのですが、序盤からずっと何か不安なもの、悲劇を予感させるような雰囲気が、常に感じられました。それがサスペンスのように続き、終盤に進むにつれて「いつ悲劇が起きるのだろう」とおびえながら観ておりました。
(以降ネタバレあり) ところが、意外にも悲劇は訪れず、美しいラストを迎えるのです。これには心底驚きました。一風変わった社会不適合な弟は、「神」だったのですね。雨上がりのように爽やかな余韻を残すラストでした。
それと「欠損」が重要なモチーフとなっておりましたね。鳩の負傷も、自信作(陶芸)の焼成の失敗も、シャワーのお湯が出ないことも、主人公の兄も、みんな不完全で「欠損」を抱えているのですが、まあそれが世の中であり人生であるってことです。
本作は12月22日公開。今回の『キネマ旬報』ベストテンは、「12月21日までの公開作」が対象。『PERFECT DAYS』もそうなのですが、1日違いで次年度回し。どうしてアカデミー賞のように、暦年(12月31日まで)にしないのか?と、残念でなりません。月2回から1回の発行になり、2月5日ではなく20日発行をベストテン号にすればよくなったのだから、日程的にも余裕が出たはずなのに…。それでもダメなら、3月20日であっても全然かまわないんですけどね。
(追記) 『PERFECT DAYS』は対象になっておりました。「読者投票のご案内」をよーく見返すと、「『PERFECT DAYS』の一般公開は12月22日ですが、10月に東京で7日間以上、先行上映されたので、今年度の対象となります」って書いてありましたー! でも、あの書き方じゃ見落としちゃうよー(責任転嫁)。作品リストも12月に入ってないのは確認していたのですが、まさかの10月に入ってました(そもそも東京在住なのに、10月にやったこと知らなかったし)。
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コメント
「キネマ旬報」のベストテン発表号は、増刊号として従来と同じ2月5日に発売されるようですよ(以後も毎年同じ)。
それでも、昨年は締切が12月31日で、ベストテン号発売は2月3日というスケジュールでしたから、月1回発行で時間的余裕もあるはずなのに、なんでこんなに締切早めたのか疑問です。12月22日公開作品にベストテンに入りそうな傑作が数本あるから余計残念ですね。1年遅れてベストテン対象になっても気の抜けたビールになっちゃいますからね。
まあそれはともかく、本年もよろしくお願いいたします。
投稿: Kei | 2024年1月 4日 (木) 10時26分
Keiさん、ベスト20拝見しました。今年もよろしくお願いします!
ベストテン発表号、そういうことだったんですね。知りませんでした。確かにそれでも疑問ですけどね。
これに対しては、できるだけ多くの読者で文句言った方がいいと思っております。
投稿: 大江戸時夫 | 2024年1月 4日 (木) 21時52分