「夜明けのすべて」:恋愛なしの新しさ #夜明けのすべて #三宅唱 #上白石萌音 #松村北斗 #じんわりほっこり
映画『夜明けのすべて』は、『ケイコ目を澄ませて』で映画賞を総なめにした三宅唱監督の新作。瀬尾まいこの原作を得て、またも静かな名作が誕生しました。三宅唱、「旬」ですねえ。
パニック障害とPMS(月経前症候群)の二人の物語でありながら、淡々とした日常の描写を積み重ねて描いていきます。そして時間が経過するほどに、じんわりほっこりと心に訴えかけて来ます。それは、この二人(上白石萌音と松村北斗)が困難と生きづらさを抱えながら、真摯につましく生きていて、周りの人々もそれを優しく見守ったり、ちょっと助けてあげたりしているから。なんか、そういう様子を見ていると、「日本、捨てたもんじゃないな」と思えて来ます。「大きな声」ではなく「小さな声」で語りかけて来る、良い映画です。
朝ドラ『カムカムエヴリバディ』では夫婦役だった上白石、松村の二人ですが、この作品では二人の関係がまったく恋愛には発展しません。夜に相手の部屋に行ったりしていても、恋愛には(ましてや性愛には)つながらず、ただ淡々とフレンドリーな空気が流れるだけ。それを「あたりまえ」に描きます。そこが新しいです! なかなかこれまでの日本映画にはなかったんですよ、そういうの。新しい時代の人と人との関係性を示していて、新鮮でした(「これじゃあ少子化に歯止めがかからんなあ」などと、ちょっぴり思ってしまうもう一人の自分には黙っていてもらって…)。
映像のトーンもやさしい、ユニークな音楽もやさしい、出てくる人々もやさしい、そもそも主人公二人がやさしい。恋愛を抜きにして、これからの希望が感じられるような、じんわりほっこりとあたたかなラスト。「夜明け前が一番暗い」、小生も好きな言葉です。
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