「黄線地帯 イエローライン」(1960年):上出来な日本版ノワール #黄線地帯 #イエローライン #石井輝男 #天地茂 #本郷播
シネマヴェーラ渋谷の石井輝男特集で『黄線地帯 イエローライン』(1960年)を観ました。何しろ新東宝だし石井輝男だし、トンデモ映画に期待していたのですが、まったく違いました。いや、いい意味で。意外なほど真っ当な良作だったのです。
脚本が良く出来ていて、日本版ノワールとしてなかなかの成功例となっています。男と女のやり取りだとか、メッセージを書いたお札が人から人へ渡っていくあたりの展開だとか、良いです良いです。そして台詞の良さ。キザでカッコいい名台詞が次々と出て来ます。そんな台詞を口にする天地茂を見ていて、沢田研二『カサブランカ・ダンディ』の歌詞「あんたの時代は良かった 男がピカピカのキザでいられた」を思い出しちゃいましたよ。
このニヒルな殺し屋・天地茂が、クールなのにどこかお茶目な善人っぽさがあって、帽子こそかぶっていないものの泉昌之のマンガの「本郷播」(『かっこいいスキヤキ』とか『食の軍師とかね)』のようでした。
(以降少々ネタバレあり) その善人さが最も発揮されたのはラスト。まるで『汚れた顔の天使』のジェームズ・キャグニーのようでした。しかもアメリカン・ニューシネマの先取りのようでもあり、あの断ち切るような「完」の出し方はちょっと唖然とするほど。言い方を変えれば、ゾクッとするような「名ラスト」です。
娼館で働かされている黒人のムーアさんですが、彼女、どう見ても白人に「塗って」ますよねえ。うーむ。時代を感じるなあ。それにしても彼女の最期をはじめ、この作品の石井輝男はぜんぜんエロ・グロ・ナンセンスには走らないのです。こういう監督でもあったのですね。
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