2025年3月27日 (木)

「書藝問道 ブックデザイナー呂敬人の軌跡」@ggg    #書藝問道 #呂敬人 #ブックデザイナー #ggg #豪華本

Dsc_24673_copy_1048x1526 ggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)で本日まで開催されていた展覧会『書藝問道 ブックデザイナー呂敬人の軌跡』を数日前に観ました。

Dsc_24683_copy_1358x1044 いやー、圧倒されましたね。ただただ「恐れ入りました」って感じ。真っ暗な会場の中に照明で浮き上がった豪華本の異常な世界が、そこに展開されていました。

Dsc_24782_copy_1600x1200 ブックデザイナーの名は呂敬人(リュ・ジンレン)。1947年上海生まれで、あの杉浦康平に師事したのだそうです。

Dsc_24752_copy_1063x787 とにかく手の込んだ装丁、表紙、箱などにあきれます。一般的な書物の概念を超えるだけではなく、工芸品、いや芸術品の領域を軽々と超えているのです。只事ではないですよ、これは。

Dsc_24763_copy_636x551 だって、この写真の作品だって、箱の4面に細かく仏像?が彫られているんですよ。確か490体も!

Dsc_24733_copy_1600x974 まあ、レーザー彫刻で彫ってあるそうですが、だから百部とか千部とかも製作できるのだそうですが、いやはやそれにしても驚愕するばかりです。いったい1冊いくらするんだろう?

Dsc_2472_copy_1436x1015 地下の会場もありまして、こちらは1階よりは簡単な本が並びます。と言っても、こっちの感覚がマヒしてるのであって、十分に手の込んだ驚くべき作品ばかりです。

Dsc_24712_copy_867x961 すげーなー。中国おそるべし。どんな政治的プロバガンダよりも有効な国威発揚となるのではないでしょうか。ペンは剣よりも強し みたいなものでしょうか??

Dsc_2470_copy_1016x1089まるで昔のラジオみたいな書箱もありましたし、そのアイディアとデザイン純度の高さ、精緻さには、もうひれ伏すしかありませんよね。へへー。

Dsc_24693_copy_1460x9883階には氏の(もう少しカジュアルな)書籍を手に取って眺められるコーナーもありました。作品の格式をきちんと伝える硬質な会場デザインも含め、とにかく「恐れ入りました」と繰り返すしかないような展覧会なのでした。

 

 

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2025年3月21日 (金)

「仮名手本忠臣蔵」夜の部@歌舞伎座    #仮名手本忠臣蔵 #忠臣蔵 #歌舞伎座 #菊之助 #愛之助

Dsc_2463_copy_1600x12003 歌舞伎座三月公演の『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』、前回は「昼の部」Bプロ( ↓ )を観ましたが、昨日は「夜の部」Aプロを鑑賞。

「仮名手本忠臣蔵」昼の部@歌舞伎座    #仮名手本忠臣蔵 #忠臣蔵 #歌舞伎座 #切腹最中: 大江戸時夫の東京温度

Dsc_2463_copy_683x972 いやあ、まさにトータル1日がかりの大仕事でした。二日に分けて鑑賞して、正解だったかも。でも、そんなに疲れたりお尻や腰が痛くなることはありません。そこらへん、歌舞伎座の椅子は優秀です。

Dsc_2422_copy_1564x1148 五段目&六段目、七段目、十一段目の上演。五、六段目は舞台も地味だし、話も静かで重い。だんだん華やかになっていきます。やはり見どころは十一段目の「討ち入り~引き揚げ」の勇壮さと晴れがましさ。引き揚げの場に馬に乗って登場する服部逸郎(尾上菊五郎)と義士たちが創り出す清涼さのおかげで、多人数での老人殺しの持つある種の凄惨さが浄化されます。菊五郎と言えば、この五月に菊五郎を襲名する菊之助の「勘平腹切の場」もなかなか荘重かつ哀れで、感銘を受けました。

Dsc_2462_copy_677x962 でも、外国人客の方で一幕目には小生の右斜め前方と左斜め前の方に離れて座っていた方々の席が、30分休憩が終わってからはそれぞれ空席のままでした。五、六段目のテンポがスローで、言葉もわからなくて、こりゃたまらんと逃げ出しちゃったのかなあ。討ち入りを観ないなんて、もったいないなあ。

Dsc_2423_copy_1454x1118  まあ、それにしても、今の基準でいくと殺人集団だったり、実の妹を殺そうとしたり、それって英雄としてどうなのよ?ってことが結構あります。でもそれは、「そういう時代だったんです」「みんながそういう考え方をしてたんです」と言うしかありませんし、それが正解です。何でも現代の基準でジャッジしてはいけないのです。こういう時代で、こういう価値観、倫理観を持っていたということが前提にあるから、感動できるのです。

大江戸は1階後方、花道の揚幕のやや後ろで鑑賞。花道の役者さんたちを間近に見られて結構でした。今日は菊之助、愛之助(大星由良助)、松緑らの「花」と芸を堪能いたしました。

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2025年3月 9日 (日)

「仮名手本忠臣蔵」昼の部@歌舞伎座    #仮名手本忠臣蔵 #忠臣蔵 #歌舞伎座 #切腹最中

Dsc_2417_copy_1600x1129 歌舞伎座の三月公演で『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』をやると聞いて、大江戸は「よっしゃ!」とスイッチ入りました。近年はけっこう『忠臣蔵』ファンの大江戸ですが、歌舞伎は一幕だけの演目を観た程度だったので、昼の部・夜の部で全体像をつかめるように上演する(それでも全てではないのですが)通し狂言を観るのは初めてなのです。今回は「松竹創業130周年」を記念しての上演ということです。

Dsc_2421_copy_1324x1134 ただ、昼の部と夜の部を一気に観ると10時間がかりになってしまうので、今日は昼の部(Bプロ)のみ。後日、夜の部(Aプロ)を鑑賞します。まあ、そうすりゃ「二回楽しめる」ってことですし。でも、大江戸が気がつくのが遅くて、チケット売り出しの三日後ぐらいだったものですから、自分が行ける日、行ける時間などを考慮すると、あまり選択肢が多くはなかったのです。もう売り切れちゃった日も多かったし。だから、昼の部Bプロ、夜の部=Aプロということになってしまい、後から配役をチェックすると、菊之助、愛之助はたっぷり見られるのですが、一番のメインというべき仁左衛門丈を見ることはかないませんでした。そこがちと残念。

Dsc_24242_copy_968x1465 さすがに着物姿の女性が多く来場していました。いつもより多かった印象。外国人のお客様もちらほらいらっしゃいましたが、思ったよりは多くなかった印象。 大江戸は気合を入れて、イヤホンガイドも筋書きも入手しました。1階席上手側での鑑賞。

この演目ならではの演出として、開演10分前から「口上人形」が舞台中央で配役を紹介します。やはり忠臣蔵だけあって、豪華キャスト勢揃いなのです。昼の部では、大序、三段目、四段目、道行旅路の花聟 を上演。やはり三段目の「松の間刃傷」と四段目の「塩冶判官切腹」が最大の見せ場ですね。あとはやたらと登場人物の数が多い場面が多く、40数名出てきた場面もありました。夜の部はもっとなんでしょうね(四十七士が出るし)やはり物語の途中で終わるので、続き(夜の部)が楽しみです。

Dsc_24243_copy_680x890 てなことで、お土産にはこの品! 「切腹最中」を買いました。いやー、ふさわしいですね。忠臣蔵仕様の特別ラベルです。

Dsc_24252_copy_455x366 あんこがたっぷりというか、はみ出していて、それが切った腹から〇〇がはみ出しているように見えるという、ちょっとグロテスクな発想の商品ですが、既にけっこうなロングセラーとして定着しました。粒あんの中には求肥も入っているのであります。

Dsc_2424_copy_582x445 最近は「忠臣蔵」を知らない若い人も多いと聞きます。何とかこの作品の「日本人の心」を後世につなげていく手立てはないものですかねえ。

 

 

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2025年3月 2日 (日)

「ヒプノシス レコードジャケットの美学」:贅沢な無駄ってサイコー!    #ヒプノシス #ヒプノシスレコードジャケットの美学 #HIPGNOSIS #レコードジャケット

Hipgnosis 映画『ヒプノシス レコードジャケットの美学』は、1970年代を中心に活躍したアルバム・ジャケットのデザイン・アート集団。(メインは二人)。ジャケットデザインをアートにまで高めた人たちの足跡をたどりながら、その舞台裏を数多くのミュージシャンや関係者のインタビューでたどっていきます。

ピンク・フロイド『原子心母』『狂気』『炎~あなたがここにいてほしい』、レッド・ツェッペリン『聖なる館』、ポール・マッカートニー(ウィングス)『バンド・オン・ザ・ラン』『ヴィーナス・アンド・マース』『グレイテスト・ヒッツ』などの製作の秘密やこぼれ話の一つ一つが、実に面白いのです。実際にLPやCDで持っているものもたくさんありますしね。

ヒプノシスは(ギャラが)「高い」そうですが、それもむべなるかな。現代から見ると、何と贅沢な創作環境なのでしょう。製作費に糸目はつけてませんね。まあ結局は、依頼するアーティストやそのファンが払ってるようなものですが。ウイングスの『グレイテスト・ヒッツ』の彫像、別に何とも思っていなかったのだけど、あれをわざわざエベレストの山頂に持って行って撮影したと知って唖然! ほんとにスタジオで撮っても変わらない絵柄ですよ。ハワイで羊を撮影した話もそうですけど、いやー、無駄って素晴らしいですね。現代社会に欠けているのは、こういう道楽なんですよねー。今ならコンピューター内で簡単に作れちゃう絵も、ぜんぶ一発撮りが基本ですもんね。『炎』の撮影なんか、今なら完全にアウトでしょう。

中心人物であり、存命していて多くの話をしてくれるオーブリー(ポー)は、凄い才能を持ちながらも真っ当な常識人。一方で、社会性のないワイルドな天才ストームは、本当に厄介な人。まあ、こういう人と仕事を長く続けるのは、いかにアート界といえども難しいですよね。常識人の大江戸としては、そう思うのであります。

 

 

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2025年2月13日 (木)

「RETURN TO REASON リターン・トゥ・リーズン」:マン・レイ✕ジャームッシュ   #リターントゥリーズン #マンレイ #ジムジャームッシュ 

Returntoreason

映画『リターン・トゥ・リーズン』は、写真家でありダダイストでもあったマン・レイが1920年代に撮った4本の短編映画をまとめた70分の新作。製作総指揮を務めるジム・ジャームッシュが音楽ユニット「スクワール」と共に、映像に合わせる音楽を作って演奏しているってのがミソです。

この作品で使われているマン・レイの『ひとで』とか『骰子城の謎』とかって、その昔は自主上映とか私設フィルムアーカイブなんかでよくやってましたよね。『ぴあ』の自主上映欄でしょっちゅう見ていたので覚えてます。行かなかったけど。

まあ、この手の作品もいろいろ観てきたので、今さら驚きはしませんが、やっぱり眠くなりますよねー。とにかく集中力が続かず、睡魔が襲って来ます。スイマーは襲って来ません。本作ではただプールの中を泳いだり遊んだりしてます。

東京ではこれ、4館で上映中ですが、それって凄いですよね。普通に考えて単館です。むしろ写真美術館あたりでやった方が似合います。まあ、ジャームッシュの力と言うべきか。でも誰が観に行くんでしょうか?(って、大江戸も観たわけですが…) 場内は各年代の男性客が多かったです。

ついでに、ブニュエル✕ダリの『アンダルシアの犬』(17分)にも、この座組で音楽をつけてもらいたいなあ。

 

 

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2025年2月 1日 (土)

日比谷に牛と豚    #東京ミッドタウン日比谷 #牛と豚 #わらの牛と豚 #松本勇馬 

Dsc_2272_copy_768x490 東京ミッドタウン日比谷の前の広場に、巨大な藁(わら)の牛と豚が! サム・ペキンパーの『わらの犬』って映画はありましたけど、こちらは「藁の牛と豚」です。

Dsc_2269_copy_768x541 きょろきょろしたけど、特に説明ボードなどはなし。虚心坦懐に作品と対峙するしかないようです。

Dsc_2270_copy_756x1024 それにしてもでかい。写真で見ると、あまり大きくは感じられませんが、いざそばで見るとでかいんですよ、これが。

Dsc_2271_copy_768x1024 見上げるほどのでかさです。

Dsc_22672_copy_768x559 子どもと比べてもでかいです。よく藁でこんなもん作りましたね。 

形状はけっこうリアルです。夜の闇の中にぬーっと屹立してたら、けっこうこわそうですね。

Dsc_22642_copy_768x555 調べてみたら、夜には照明演出されて、むしろそっちの方が素晴らしそうだったりします。うーむ、夜にも来てみねば。

さらに調べてみると、これは美術作家の松本勇馬氏による「食の原点、よろこび、未来への希望」をテーマにした作品なのだそうです。牛と豚だけど、作家は「馬」なのですね。

Dsc_2265_copy_768x567 豚ちゃんの長さは6メートル。いやー、でかいっすよ。

Dsc_2266_copy_768x593 牛さんは高さがあります。でも単純に、大きさの持つ迫力ってすごいですね。ゴジラみたいに50メートルもあったら、どうなっちゃうんだろう?

2月24日までやってるそうです。やっぱり夜また来てみましょう。

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2025年1月17日 (金)

デイヴィッド・リンチ死す    #デイヴィッドリンチ #デビッドリンチ #裕木奈江 #ブルーベルベット 

Dsc_22082_copy_1106x820 デイヴィッド・リンチが亡くなりましたね。享年78。RIP. 『イレイザーヘッド』『エレファントマン』『ブルーベルベット』『ワイルド・アット・ハート』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』・・・そしてもちろん『ツイン・ピークス』。ああ、赤い部屋でくねくね踊る小人…。

唯一無二の人でした。多くの追随者を生みながら誰も真似することができない、あのリンチ・ワールド。その闇と狂気と歪んだ笑い。そして重工業感。映画監督のみならず、アートの人でもあり、あ、映画俳優でもありました。

Dsc_2209_copy_1600x1150 1991年に当時表参道にあった東高現代美術館『デビッド・リンチ展  David Lynch: Paintings and Drawings 』にも行きました。彼の絵画の凄さに衝撃を受けましたね。

小生のごひいきである裕木奈江を『インランド・エンパイア』で使ってくれたことにも、イーストウッドが『硫黄島からの手紙』で彼女を使ってくれたことと同じく感謝しております。リンチはその後、『ツイン・ピークス The Return』でもNaeを(誰だかわからないような特殊メイクで)使っておりました。今、奈江さんのインスタを見たら、やはりリンチを追悼して2ショット写真をアップしていました。

晩年は映画を作らなくなってしまったけど、俳優としては一昨年日本公開のスピルバーグ作品『フェイブルマンズ』にジョン・フォード役で出て、名演でした。なにしろその年の大江戸の助演男優賞でしたから。

2月7日から新宿のシネマカリテで『ブルーベルベット』の4Kリマスター版を公開するそうです(これは逝去の前から決まっていた)。久々に観てみようかな。

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2025年1月15日 (水)

恵比寿のシャンデリア(今冬は終了)    #恵比寿ガーデンプレイス #バカラエターナルライツ #恵比寿のバカラシャンデリア

Dsc_2179_copy_768x966去る12日(日)にYEBISU GARDEN CINEMAに行った帰り、駅に向かおうとすると、おお、今年もまたありました。年末年始の恵比寿名物、バカラのシャンデリア!

Dsc_2180_copy_734x1024 ほんとに冬の風物詩として定着しましたね。三越の閉店などいろいろと様変わりして、ガーデンプレイスの人手って昔に比べるとちょっと寂しい気がするのですが、それでもこいつが続いているのは嬉しいですね。

Dsc_21832_copy_704x1024 近寄って見ると、やっぱり大きいです。壮麗です。バカラの歴史と実力です。人を魅了するものがあるのです。もちろん白一色だからこその品格も。

Dsc_2185_copy_768x576 冬のピンと冷たい空気の中、夜の闇の中に浮かび上がるこの白い光の美しさ。大江戸は寒いのはキライですけど、この光はやはり寒さの中だからこそですよね。

Dsc_2184_copy_768x576 その後ろ、駅側の坂の両側にイルミネーションを施した並木があるのもいいですよねえ。ガーデンプレイス、やっぱりいいなあ。

Dsc_21822_copy_768x599 ただこの「バカラエターナルライツ」、大江戸が見た翌日(13日)までで終了してしまいました(11月9日からやっていたのですね)。今回で25回目だったそうです。うん、「続けることに意義がある」の典型ですね。

 

 

 

 

 

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2024年12月 1日 (日)

「海の沈黙」:とっ散らかって失敗    #海の沈黙 #倉本聰 #本木雅弘 #小泉今日子 #石坂浩二

F6c29fd44cc23793 映画『海の沈黙』は、あの倉本聰89歳の脚本を、『Fukushima 50』(2020年)の若松節郎が監督した作品。本木雅弘、小泉今日子らによる大人の映画。

うーん、でもかなり微妙なというか、どうも失敗ゾーンに足を突っ込んでしまった感じがしております。倉本先生のような老境に至ると理解できるようになるのでしょうか。

贋作の話を通して、芸術の本質に迫ったりしております。そこに昔日の恋だとか、刺青だとか若い女だとかを絡ませているのですが、どうにもみんな唐突だったり中途半端だったりして、なんだかとっ散らかってます。なので、心打たれることもありませんでした。それにこんな話なのに、人が3人も死んでおります。

画家を演じた本木雅弘の浮世離れした個性が、生きてはおります。でも、この役があまりになんだかよくわからない人物造形になっていて…。創作の光景を見ると、おそらく統合失調症だと思われるのですが…。

小泉今日子さんも妙にマダム化していて…。先ごろNHK-BSでやっていた『団地のふたり』の彼女の方が、ずーっと魅力的ですよね、いきいきとして。 そして石坂浩二さんが太い黒ぶちメガネとクシャクシャ頭で画伯を演じるのですが、最初のうち誰だかわかりませんでしたよ。彼の若さや魅力を封印して、ずいぶん化けたものですね。

 

 

 

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2024年11月 7日 (木)

「八犬伝」:八犬士パートよりも馬琴パート    #八犬伝 #滝沢馬琴 #役所広司 #正義で何が悪い #映画八犬伝

8dogs 映画『八犬伝』は、滝沢(曲亭)馬琴の『南総里見八犬伝』というよりは、山田風太郎によるアレンジバージョンの原作がベース。なので、八犬士たちの講談的、ファンタジー的活躍よりも、物語の作者である馬琴や友人の葛飾北斎および周辺の人々を描くパートの方が惹きつけるような作品になっておりました。

八犬士パートも別につまらなくはないんですよ。でも、作品の構成上、物語がブツ切れになってしまうのが痛い所。しかもまあどうにもこうにも「古い」感覚の物語ですからねえ。そして役者たちが弱い。大江戸にとっても板垣李光人と水上恒司ぐらいしかなじみの役者がいないもんで…。河合優実の役柄もあまりに彼女に合わなくて、彼女としても非常に居心地悪そうで、どう演じたらいいかわからないって感じで、これはミスキャストでした。

それに比べて、役所広司をはじめ演技派のしっかりしたキャストを揃えた馬琴パートは、味があって面白いですねー。ただ、こっちをメインにしても集客は望めないので、難しいところですね。まあ、うまくコントロールしたので、ちゃんとヒットしたってことなんでしょう。

本作の白眉は、馬琴と鶴屋南北(立川談春)が歌舞伎小屋の奈落で妙な体面をする場面。ここで二人の間に交わされる創作の虚と実をめぐるバチバチの会話が、緊張感あふれて圧巻です。この深い芸術論の場面を映画にできただけでも大したもんだと思います。それを受けて、この映画のキャッチコピーも「正義で何が悪い」となっているのですね。

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