2022年6月25日 (土)

「ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行」:映画の映像で映画評論を行う    #ストーリーオブフィルム #111の映画旅行 #マークカズンズ

1_20220625231201 映画『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』は、2010年から21年の世界の映画111本のフッテージを紹介しながら、「ここ10年」の映画の傾向と変化を紐解いていく映画評論のような作品。

167分ありますが、冒頭『ジョーカー』『アナと雪の女王』から始まった割には、かなりの部分がインディペンデントの地味な映画だったり、欧米以外の国の未公開作品だったりします。有名なヒット作としては『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ブラックパンサー』『ミッドサマー』あたりが出て来ますが、そんなに多くはありません。 その他の作品はシネフィルの大江戸だから観ているような作品もあり、そもそも日本未公開なので知りもしない作品もあり、です。一般的映画ファンだと、ちょっと退屈しちゃうかも知れません。

時々過去作も引用されて、現代の作品との類似や影響が示されます。『キートンの大列車追跡』あり、小津の『東京物語』ありです。こういう作品内でのフッテージ利用って、許可は簡単に取れるものなんですかね? あるいはその料金はどうなんでしょう? これだけ多量に使っていると、そのあたりが気になります。

いずれにしても、これだけ延々と淡々とやられると、ちょっと飽きますね。第1部「映画言語の拡張」とか第2部「我々は何を探って来たのか?」という切り口で論評されても、そこらがそんなに鮮やかに浮かび上がってこないし…。 配信が力を持ってきた10年間だったという事実はわかるのですけどね。

実際の映画フッテージを見せながら映画評論をするというマーク・カズンズ監督の手法は「発明」だと思います。

 

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2022年6月23日 (木)

「はい、泳げません」:シリアス不要なのに…    #はい泳げません #長谷川博己 #綾瀬はるか #阿部純子

1_20220623135201 映画『はい、泳げません』は、水泳というか「泳ぐこと」がテーマのライトコメディ かと思いきや…、って作品(詳しくは後述します)。

長谷川博己と綾瀬はるかって、どちらも大河ドラマの主役経験者なんですね--『麒麟がくる』と『八重の桜』。しかも『八重の桜』では夫婦役だった二人(その上、ピロキさんは『まんぷく』で朝ドラ(安藤サクラとダブル主人公と言っていい)もやってますけどね)。

(以降ネタバレあり) で、この作品の美点は長谷川と綾瀬がまったく恋仲になったりしないこと。水の中で水着で抱き合っても、ぜんぜん恋愛につながっていかない、その気配すらないところが斬新です。爽やかです。これからの時代は、どんどんそういう作品が増えていくに違いありません。

ライトなコメディとして進行していって、途中からシリアスな場面が増えていきます。ただ残念なことに、それで作品が重たくなったりテンポがスローになったりしてるんですよねー。(ま、原作があるのでしょうがないのでしょうが)正直言って、大江戸はそういうトラウマ部分が邪魔でたまりませんでした。なんか、「ライトなコメディで終始するより、シリアスな部分が入ってた方が上等」みたいな思想があるのでしたら、そんなのは間違いです。

本作で一番良かったのは阿部純子。言葉なしに感情を伝えたり、このけなげなキャラクターに命を吹き込んでおりました。珍しくもお母さん役でしたが、ちゃんと似合っておりました。

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2022年6月20日 (月)

「オフィサー・アンド・スパイ」:世に冤罪の種は尽きまじ    #オフィサーアンドスパイ #ロマンポランスキー #ドレフュス事件 #エミールゾラ

1-1_20220620220101 映画『オフィサー・アンド・スパイ』は、現在米寿のロマン・ポランスキー監督作品。ユダヤ人としての魂がこもった作品ですね。スピルバーグにとっての『シンドラーのリスト』のように。

ドレフュス事件は名前ぐらいしか知らなかったので、勉強になりました。でも、この作品、始まって1/3ぐらいまではかなり退屈。とにかく台詞に頼って状況を説明するだけなので、かなり眠くなりました。でもそこを過ぎると、面白くなります。やはり(大江戸の好きな)「正義の物語」ですし、法廷モノにハズレなしですし、映画としてのクォリティは高いですもんね。

ユダヤ人がどうのこうのという差別部分よりも、冤罪を生む組織・権力の構造がしっかりと描かれていました。保身のため、組織防衛のため、面子のために、人は(組織は)冤罪を生んでしまうんですね。古今東西いつの世にもです。おそろしいことです。でも、そんな卑劣さに真っ向から闘った人がいるってことには胸が熱くなります。エミール・ゾラ、えらかったんですねえ。

忘れてましたけど、ケン・ラッセルのTVムービー(日本では劇場公開)『逆転無罪』(1991年)って、本作同様ドレフュス事件を扱ったものでしたっけ。調べてみたら本作の主人公ピカール大佐(ジャン・デュジャルダン)は、リチャード・ドレイファスが演じてたんですよねー(ドレフュスだからドレイファスにしとけ!って感じ??)。あれは妙に軽い作品で、ケン・ラッセルらしさは全然なかったんですよねー。

それにしても、フランス軍の軍服の赤いズボン(パンタローン)、素敵ですね。さすがはフランスだと感心しちゃいました。

 

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2022年6月19日 (日)

「メタモルフォーゼの縁側」:後ろ姿の映画    #メタモルフォーゼの縁側 #芦田愛菜 #宮本信子 #岡田惠和

1_20220619224401『メタモルフォーゼの縁側』は、後ろ姿の映画。こんなに後ろ姿だらけの映画って、観たことありません。

特に主人公の芦田愛菜が徹底して後ろ姿です。いや、もちろん前向きや横向きもありますよ。でも印象的なショットがことごとく後ろ姿ですし、走る姿なんかもほとんど後ろから撮っていて、表情を見せません。最後の方では走りが横から撮られていたりしますし、暗いながらも前向きに撮ってある場面もあったりするのですが、そこに込められた意味は明解になっていないような気がします。「後ろ向き=自身の無さ、ネガティブさ」で、そこからの脱却で前を向いたとか、そういう単純な話ではないと思います。ただ、その後ろ姿が特に気にならないのです。ぼーっと見てたら、「え?そんなに後ろ姿だらけだった?」と思うかも知れません。でも考えてみれば、人はリアルには他人を正面から見ているばかりではありません。後ろから見ていることって結構多いわけです。それに後ろ姿って、表情が見えないだけに想像力の「余白」がありますもんね。

いずれにしても、心がほっこりする素敵な作品でした。やっぱり岡田惠和脚本ですね。あ、もちろん原作マンガの力もあるのでしょうけれど。「みんないい人」の作品って、岡田さんの得意とするところであり、そこが大江戸は大好きなのです。

そして言うまでもなく、芦田愛菜と宮本信子のコンビネーションが最高です。芦田さんは『星の子』で圧倒的な演技力を見せましたが、ここでも見事に「演じて」います。しっかり計算して演技しています。後ろ姿の「走り」にも、気持ちが溢れています。彼女が固まっちゃう場面、サイコーでした。

やっぱり「大好きなものがある」ってこと、「同好の士がいる」ってことは、素晴らしいですね。ラストの静かな幸福感も、得難いものでした。狩山俊輔監督、良い仕事をしましたね。

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2022年6月17日 (金)

「犬王」:室町の琵琶ロックミュージカル・アニメ    #犬王 #琵琶ロックミュージカルアニメ #湯浅政明 #アヴちゃん

1_20220617224901 映画『犬王』は、湯浅政明監督がまたも攻めたアニメーション。600年前の日本を舞台にした実験的なロック・ミュージカルです。脚本は野木亜紀子だし、音楽は大友良英だし、キャラクター原案は松本大洋だし、実に多士済済ですね。

そして主演の2人=若きポップスターの声を演じるのがアヴちゃん(女王蜂)と森山未來。「歌える」この2人が…ってところが重要なのでした。特にアヴちゃんの声は、歌ってる時(圧巻)も話してる時もスゴかったです。

湯浅監督の特徴はある程度現れていますが、あのくねくねびよーんとした感じは抑え目。今回はむしろカッコ良く音楽にフィットするダンスの動きやロックな動きを追究していったように見えました。

色調も抑制の効いたものから美しくカラフルなものまで、場面により使い分けておりました。そして音楽はさすがに大友さん。ガンガンのロックを「なぜこの時代に?」と一瞬しか思わけないほど上手にカッコ良く使っていますし、琵琶のサウンドも違和感なくロックでした。

大江戸としては、権力者とアーティストの関係および権力者の怖さがきちんと描かれていたところが印象的でした。

作品全体としてはそんなに面白かったとか気に入ったとかではないんですけど、よくぞ作りましたという意味でリスペクトを捧げたい作品なのです。

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2022年6月15日 (水)

「トップガン マーヴェリック」:バカっぽいけど、トムは奇跡    #トップガン #トップガンマーヴェリック #トムクルーズ #ザフー

1_20220615225301 映画『トップガン マーヴェリック』は、奇跡の59歳(7月2日で還暦!)トム・クルーズのヒット作の36年ぶりの続編。と言っても、撮影は3年前ぐらいだったのでしょう。何しろコロナ前から予告編がかかっていて、公開が何度伸びたことやらでしたから。

36年ぶりの続編だそうです。びっくりですね。しかも36年たっても同じような現役主人公が同じような物語を演じるのですから、驚天動地です。そんなことが可能だってことが、トムの奇跡です。体型も動きもぬかりなく若々しいですもん。さすがはアメリカの郷ひろみです(と小生が勝手に言ってます)。

「マーヴェリック」ってトム演じる主人公の名前ではありません(それはピート・ミッチェル)。コールネームがマーヴェリックなのでして、そのスペルは彼のヘルメットにも記されているように“MAVERICK”。英語によくありそうな“MARVERICK”じゃないんですよね。で、意味は「一匹狼」。そんな孤独で、大人なのに大人になり切れてない奇跡のトムくんの荒唐無稽な物語です。

バカみたいなんだけど、中坊が心を掴まれそうな映画です。がんばれ軍人さん的な国威発揚映画を危惧したのですが、なんかバカっぽくてそうだとも思えないぐらいです。むしろゲームみたいな映画ですよね。いろんな危機をクリアしながら、次のステージに進んでいくというような…。

でもCGに頼らない実写撮影の努力と迫力は、大いに評価したいところです。やっぱり本物の映像の力があります。それを可能にするにあたって、トムくんが果たした役割も大きいそうです。さすがですね。

いずれにしても、戦闘機は撃墜されてもパラシュートで脱出して人間は無事(敵も味方も)ってあたりもハッピーですね(そういうところもバカっぽい)。 個人的には空中戦訓練の場面にザ・フーの“Won't Get Fooled Again”(無法の世界)がかかっていたのに、キュンです。

 

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2022年6月12日 (日)

「冬薔薇」:No one was saved.    #冬薔薇 #ふゆそうび #伊藤健太郎 #阪本順治 #毎熊克哉 #エリナーリグビー

1_20220612132301 映画『冬薔薇(ふゆそうび)』は、伊藤健太郎がひき逃げ事件で謹慎を続けた後の復帰作。阪本順治が脚本・監督で、彼にアテ書きした渋い作品となっております。

その昔の東宝映画『連合艦隊』の主題歌が谷村新司の『群青』で、サビの歌詞が「せめて海に咲け 心の冬薔薇(ふゆそうび)」だったよなあなどと思い出す小生は、古い人間でござんす。

それはさておき、今日び珍しいタイプの日本映画らしい日本映画です。で、暗くてやるせなくて辛い映画です。普通、興行の事を気にしたりして作れないタイプの作品です。それを作っちゃうんだから、阪本順治にはやはり周囲からの人望があるってことなんでしょうか。

半グレがうろついている港町なんで、どこの地方かと思いきや、横須賀なのでした。絵からはもっと北陸や東北の感覚が溢れているんですけどね。そこで描かれる人々が誰も彼も不完全っていうか、むしろしょうもない人たちばっか。しょうもなさの比べっこをしてるみたいで、気が滅入ります(そういうのが好きな人もいるんでしょうけれど)。そういうところが、大江戸が阪本作品をあまり好きになれない理由の一つでしょうね。

主人公の伊藤も相当しょうもない奴なんですが、もっと卑怯でサイアクなのが永山絢斗演じる美崎。好青年役も多い永山が演じるこの役に、ほんっとムカつきました。一方、人としての基本がしっかりしている毎熊克哉の方は、カッコ良かったですねえ。 あとはシニア組の小林薫、余貴美子、眞木蔵人、石橋蓮司、伊武雅刀らが余裕のある芝居で、みんな観ていて面白かったです。

でもやっぱりみんな哀しい人々です。唐突ですが、ビートルズの『エリナー・リグビー』の歌詞、“Ah, look at all the lonely people. (中略)No one was saved. ”を思ってしまいました。

 

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2022年6月11日 (土)

「帰らない日曜日」:捉え所のない映画    #帰らない日曜日 #グレンダジャクソン #サンディパウエル

1_20220611232201 映画『帰らない日曜日』の原題は“Mothering Sunday”=母の日。英国では米国風のMother's Dayではないんですね。しかも、3月にあるという…。宗教的行事に起因しているのだそうですが、いやー、勉強になりました。

いかにも英国的な、名家の人々とメイドのお話。ある種の格調を持って語られます。舞台は1924年。原作小説をカズオイシグロが絶賛したというのも、なんとなくわかる気がします。ただ、語られてることにはあまり動かされませんでした。しかもその時代だけでなく、3つの時代を入れ込んでいるのですが、あまりうまくいってるとも思えませんでした。サスペンスを漂わせながらもそっちの方には行かないし。どうにもこうにも、捉え所のない作品です。映像もまあキレイなんですけど、そんなに映画的な強さを感じませんでした。強いて言えば、「官能」の部分において優れています。

でも目が離せなかったのは31年ぶりに俳優業復活したという(『恋する女たち』などの)グレンダ・ジャクソン! 今年86歳になった彼女が、すっかりおばあちゃんになったけど、グレンダ・ジャクソンの顔でした(あたりまえだ)。

衣装担当は見事な実績を誇るサンディ・パウエルですが、本作でも見事な英国トラッドと、それ以上の洒落っ気を見せてくれます。水色フレームのまん丸サングラスなんか、最高ですよね。

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2022年6月 8日 (水)

「大河への道」:ゆるい&ぬるい    #大河への道 #伊能忠敬 #立川志の輔 #中井貴一 #松山ケンイチ #北川景子 #草刈正雄

1_20220608212301 映画『大河への道』は、松竹らしい時代劇コメディ。時代劇と言っても、現代劇パートもございます。全編を通していろいろゆるいんです。そのゆるさもまた松竹っぽさですかね。

県庁や市役所などの公務員の方が奮闘する日本映画って、なぜか結構ありますよね。これもそんな一本。立川志の輔の創作落語が原作なのだそうで、志の輔さんご本人も出演しています。で、中井貴一、松山ケンイチ、北川景子をはじめ多くの出演者が現代劇パートと時代劇パートの両方に出演してるって趣向です。でも、現代と過去の二つのキャラクターの間にあまり関連性がなくて、ある意味行き当たりばったりの設定。そこは弱い所です。

それ以外にも、ダイアローグの弱さ、平凡さとか、根本の発想以外は既視感ありありの展開とか、メリハリのつかない演出とか、どうにもこうにも映画としてゆるい&ぬるいのです。

役者に関しても、「おお、この人は凄い」ってレベルの人はおりません。中井貴一はいつもの中井貴一なのですが、松山ケンイチはミスキャストですよねー。チャラさが似合っていません。北川景子は、着物姿がよく似合っておりました(粋な縦縞とかね)。橋爪功さんだけは、いつもながらの余裕なのですけど…。

あ、でも草刈正雄さんのスペシャル感はさすがでした。彼の将軍役、いい味出してました。(以降ネタバレあり) 彼の登場場面で披露される日本全図のとてつもないい大きさ! いくら誇張と言ったって、畳何百畳分あるんですか! あそこまでの大広間は、さすがにあり得ません。「映画の嘘」にも限度があるってもんです。感動的な場面のはずなのに、あまりのことにちょっとのけぞっちゃいましたよ。

 

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2022年6月 7日 (火)

「夜を走る」:この逸脱をどう捉えるか    #夜を走る #佐向大 #足立智充 #古館寛治

1_20220607175601 映画『夜を走る』は、かなりの劇薬。前作『教誨師』で、問題意識の高いシリアスな個性を見せていた佐向大監督(「大 だい」は名前なんですけど、こう書くと「大監督」みたいですね)ですが、本作ではもっと自由自在にぶっこわれてくれてます。

主人公の顔が極めて平凡です。彼の周りの人々も平凡な顔立ちですが、彼(足立智充)が一番そこらの素人みたいな顔です。そんな平凡な男を使ったジャパニーズ・ノワールかと思わせといて、後半、っていうか残り1/3ぐらいで、思わぬ方向にぶっ飛んで行きます。その逸脱をどう捉えるか?ですね。

大江戸はちょっと当惑しました。あのまま普通にミステリーというかクライム・サスペンスとして完成させたら、相当なもんが出来上がったと思うのです。それほど、そこまでのリアルなミステリーとしての引き込み方と先が読めない展開は、上出来でした。これ、どういう結末をつけるんだろう?と思ってドキドキしていたら、・・・うーん、何かおかしなことになっちゃいましたね。

(以降少々ネタバレあり) 怪しげな新興宗教→女装→拳銃→ダンス…と、作品は迷走・暴走を続けます。もはやミステリーの結末なんて、置き去りになってしまいました。うーん、これはこれで個性の強い映画だし、こういう作品もあったっていいんですが…。それにしても、ねえ。大江戸は変な映画も好きですけど、今回の場合はウェルメイドにしていただいた方が良かったなあ。まあ、問題作には違いありません。

宇野祥平、松重豊ら脇を固める役者たちがとても良いのですが、3度ほどカーラジオから流れる気象情報を淡々と読み上げる声に聞き覚えが…。あれって、古館寛治さんの声ですよね(ノー・クレジットでしたが)。古館さんといえば、『教誨師』ではいつもと違う個性を見せて好演しておりましたが、そのご縁なんでしょうね。

それにしても埼玉県の人口の少ないエリアって、殺伐としてて不穏ですねえ(『ビジランテ』とか、そういう映画がたくさんあるような気がします)。

 

 

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