「おーい、応為」:長澤×永瀬の芝居合戦 #おーい応為 #大森立嗣 #長澤まさみ #永瀬正敏 #葛飾北斎と応為
映画『おーい、応為』は、葛飾北斎の娘「応為」が主人公ですが、北斎の比重も大きくて、この父娘のユニークな関係性を描く作品なのでした。
大森立嗣監督作といえば、ダークだったりバイオレントだったり屈折していたりする作品が本筋だと思っているのですが、本作は『さよなら渓谷』や『日々是好日』などと同じ数少ない「正統派」グループに属します。で、とにかくしっかりした映画作りが成されています。一つ一つのショットが揺るぎいというか、映画的映像の強度が高いのです。そんな中、無音のシーンが多かったり、一方でトランペットを効果的に多用した大友良英の音楽が上出来だったりして、絵も音も一流なのです。
そしてもちろん役者も。小生は特に長澤まさみのファンではなく、彼女と大森監督が組んだ『MOTHER マザー』でも、力演は認めるけどちょっと「作ってる」感があるなあと思っておりました。でも本作の長澤は素晴らしいですよ。男きものの着こなしで、自分のことを「オレ」と呼び、それはもうシャキシャキと「男前」なのです。そして、やけにキレイです。いずれにしても、この役に「魂」が入っていると感じられました。
北斎を演じる永瀬正敏も、素晴らしかったです。もう長いこと、「永瀬といえばこんな感じ」って具合に「謎めいた曲者の雰囲気」を出すためだけに使われることばかりだったと思うのですが、ここでは台詞の発声を含め、演技力を遺憾なく見せつけておりました。その上、徐々に老いていき90歳までを演じるという、芝居の見せ所たっぷりの役。長澤との掛け合いも最高でした。
でも、北斎や応為の創作活動の細部や作品にまつわる部分は割と淡白な見せ方。ここらへんにもっと力を入れて、芸術家映画にしてもらえたら、もっと面白かったろうにと、残念に感じた大江戸なのでした。












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