2020年7月11日 (土)

「透明人間」:サスペンス・ホラーの新たな古典   #透明人間 #リーワネル

1_20200711230501 映画『透明人間』は、従来の透明人間映画とはだいぶ毛色が違いますけど、まぎれもなく傑作。心理ホラーとして、サスペンスとして、ドキドキハラハラと無駄のない2時間(124分)を楽しませてくれます。

脚本・監督は『ソウ』シリーズの脚本を書いていたリー・ワネル。あの作品同様、何とも嫌な感じの「悪意」が禍々しく全編を覆っています。ノー・スターだし、あまり金かけてないなあと思えるのですが、アイディアと物語の力、演出の力で、とても面白いものを作ってくれました。キャメラや演出で、見えないものを感じさせ、緊張感を持続させ、主人公のみならず観客の神経まで消耗させていく映画作りの技が見事なのです。主人公の追い込み方、次々と襲いかかる恐怖と困難が、実によく組み立てれらているのです。

まったくのところ魅力的ではないエリザベス・モスの主人公が、リアルな恐怖と発狂しそうな心神耗弱状態を熱演します。いちばんのツッコミ所は、「なんでこんな女にそれほどまでにこだわるのか?」ってところなんですが、まあ、それを言っちゃあおしまいなんでしょうね。

恐怖と緊張を醸すカメラワークも見事、編集も上出来なのでありました。これ、こういったジャンルのお手本になっていく映画ですよ。今後このジャンルを志す映画作家は、これをよく研究すべきだと思います。

古典的に透明人間といえば…の包帯は出て来たりしませんが、終盤の病院の場面で包帯男が1カット写って、ああこれ意識してやってるなって感じでした。

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2020年7月 9日 (木)

「一度も撃ってません」:自由過ぎませんか?   #一度も撃ってません #丸山昇一 #石橋蓮司 #豊川悦司

1_20200709224501 映画『一度も撃ってません』は阪本順治監督が石橋蓮司を主役に据えて撮ったハードボイルド…というよりは、コメディーですね。大江戸にとっては、久々に脚本・丸山昇一ってのが嬉しいところ。松田優作との『処刑遊戯』『野獣死すべし』『ヨコハマBJブルース』といった和製ハードボイルドを手掛けたのも丸山ですし、『すかんぴんウォーク』に始まる大森一樹×吉川晃司3部作の脚本も丸山ですし、大好きな『翔んだカップル』や『友よ、静かに瞑れ』も丸山の脚本ですからねえ。映画は、2010年の『行きずりの町』以来10年ぶりのようです。

で、出来上がった作品は、うーん、微妙。出て来るベテラン俳優たちが楽しそうに和気あいあいとやってるのはいいけど、皆さんあまりに自由過ぎません? 特に桃井さん、自由過ぎて「これでギャラもらっちゃっていいの?」的領域まで行ってるんじゃありませんか。それに比べると大楠道代さんはちょうどいい塩梅で、良かったなあ。岸部一徳さんはかなり『ドクターX』でありました。蓮司さんは、なかなかカッコ良かったですよ(カッコ悪いところも含めて)。

(以降ネタバレあり) 驚いたのは豊川悦司。エンドタイトルで名前を見て、いったいどの役だったか考えてもわからなかったほどです。その後になって気づいた時には、ショーゲキでした!  まさかあんな短髪になっていようとは!

そして、佐藤浩市と寛一郎はさりげなく親子共演を果たしているのでした。

まあ、終始ゆるゆるグダグダで、一杯やりながら観るのが良さそうな作品。でも、作ってる人たちの方が面白かったんじゃないかなあ、これ。あ、でも懐かしの「東映セントラルフィルム(セントラルアーツ)」の匂いは出ておりましたね。

とってもオシャレで印象的だった「y」と「z」の木製看板のデザインが原田芳雄だとエンドタイトルでわかって、「へー、さすがだなあ」と感じ入りました。

 

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2020年7月 8日 (水)

2000年代日本映画ベストテン   #2000年代日本映画ベストテン #2000年代邦画ベストテン #大江戸時夫

今出ている『キネマ旬報』で、前号の外国映画に続き「2000年代(2000~2009年)日本映画ベストテン」を特集しております。
1位:顔、2位:EUREKA ユリイカ、3位:パッチギ!と、「そこまで素晴らしかったかなあ?」って感じですが、まあ選者の好みが大きいですからね。それにしても、選考メンバーを現在の執筆者だけとしているって、どうなんでしょう? それに、昔と比べて淀川さん、双葉さん、佐藤忠男さんみたいな、規範となる人がいませんからねえ。 そして、'80、’90年代に引き続き「邦高洋低」の'00年代です。

大江戸時夫の2000年代(2000~2009年)邦画ベストテン ( )内は監督
1.天然コケッコー(山下敦弘)
2.花とアリス(岩井俊二)
3.風花(相米慎二)
4.好きだ、(石川寛)
5.それでもボクはやってない(周防正行)
6.千と千尋の神隠し(宮崎駿)
7.花を摘む少女と虫を殺す少女(矢崎仁司)
8.エヴァンゲリヲン新劇場版:破(庵野秀明)
9.トウキョウソナタ(黒沢清)
10.運命じゃない人(内田けんじ)

今回は、全て別の監督になりました。

はみ出した作品を列挙すると・・・
嫌われ松子の一生(中島哲也)
たそがれ清兵衛(山田洋次)
とらばいゆ(大谷健太郎)
深呼吸の必要(篠原哲雄)
誰も知らない(是枝裕和)
阿修羅のごとく(森田芳光)
春の雪(行定勲)
スウィングガールズ(矢口史靖)
博士の愛した数式(小泉堯史)
キサラギ(佐藤祐市)
クロエ(利重剛)                                                        ハルフウェイ(北川悦吏子)

ALWAYS 三丁目の夕日(山崎貴)

おお、ここまで含めてもダブってる監督がいないじゃないですか! なんかすごいことです。それだけ多士済々で粒揃いだったってことですよね。本当にステキな映画たちが揃いました。

※’00年代の外国映画篇はこちら↓

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-400919.html

 

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2020年7月 7日 (火)

「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」:ウディ印のNY映画   #レイニーデイインニューヨーク #ウディアレン #エルファニング

1_20200707232401 映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は、ウディ・アレンの2018年作品。ウディが#MeToo運動で糾弾されて、アメリカではいまだ公開されていないのだとか。このニューヨーク映画をニューヨーカーたちが観られないなんて、不幸なことですね。

作品は久々のニューヨークで、たっぷりロケ撮影をしたゴリゴリのウディ印。美男美女によるスクリューボール・コメディーということで、実に古き良きアメリカ映画の伝統を継承した作品です。ティモシー・シャラメが昔のアレンみたいな茶系のヘリンボーン・ジャケット姿でマンハッタンを歩き、そこに早口のモノローグがかぶるという、まさに『アニー・ホール』や『マンハッタン』を思わせる作品でもあります。そこにジャズとエル・ファニングと来ては、大江戸好みのてんこ盛りではありませんか。

でも100%気に入ったかというと、そこまでは行きませんでした。ウディが主役じゃないから…ってこともあるのかも知れませんが、面白いんだけど面白さも中ぐらいなり、って感じ。鑑賞前に自らハードル上げすぎちゃったかなあ。エル・ファニングも天真爛漫にキラキラしているのですが、今ひとつ圧倒的とまでは言えません。セレーナ・ゴメスにしても、さほど魅力的ではなかったし(だからラストが唐突な印象)。 それぞれのエピソードも、割と普通にまとまった感じで、これまた突き抜けたものになりませんでした。ギャツビー(シャラメ)の母親をめぐるびっくり展開も、なんか微妙でしたし…。

撮影は『カフェ・ソサエティ』『女と男の観覧車』に続いて名手ヴィットリオ・ストラーロ。でも、『女と男~』の見事な色彩設計と圧倒的な美しさに較べると、本作はやはりそこそこ。オレンジ色の夕日みたいな光と、人の顔への光と影の作り方が特徴的でしたが、変に主張が強すぎて、この物語には合っていないような気がしました。

エロール・ガーナーの『Misty』(2回流れます)だけは、とっても素敵なのでありました。

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2020年7月 6日 (月)

「のぼる小寺さん」:ゆるくて普通で素敵   #のぼる小寺さん #ボルダリング #古厩智之 #工藤遥 #青春部活映画

1_20200706222501 映画『のぼる小寺さん』は、高校生の学園ものですが、いわゆるキラキラ映画とは一線を画した古風な青春映画。かといって、決してクソ真面目な作品などではありません。楽しめるいい映画です。

監督は古厩智之。これまで彼が作って来た『ロボコン』『奈緒子』『武士道シックスティーン』などと同様、上出来の「部活映画」なのです。で、今回はボルダリング部という珍しい(たぶん映画史上初の)切り口を持って来たところが、成功の一因です。 そして脚本は、『けいおん!』や『聲の形』などの吉田玲子。いいです。独特のゆるさと普通さかげんが素敵です。

とにかく(元モーニング娘。の)工藤遥(小寺さん)がほとんど自分で壁を登っているところがスゴイです。カットを割らずに見せられることで、映画の強度が増しています。言っちゃあ何ですが、美人なわけでも特別にカワイイわけでもない彼女(普通は主役を張るタイプではない)が、とても魅力的に見えるのです。身体能力が効いているのです。

そして、彼女の周囲の一人一人をしっかり描いていることも勝因。ある意味、一人一人がそれぞれに「小寺さん」=主役でもあるってことを示して、秀逸です。

ほんわかとゆるいラストを含めて、「傑作」といったレベルではありません。でも観ると、ちょっと幸せな気分、高校生の気分になれる映画です。それって、価値があることですよね。 ちょっぴりボルダリングを体験してみたくなりました(簡単なやつね)。

*上映前に、工藤遥と古厩監督からのビデオメッセージがついておりました。

 

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2020年7月 5日 (日)

「MOTHER マザー」:悪意のモンスター   #MOTHER #マザー #長澤まさみ #大森立嗣

11_20200705221701 映画『MOTHER マザー』は、『あゝ、荒野』『愛しのアイリーン』『新聞記者』『宮本から君へ』と、近年日本映画を揺さぶるヘヴィーな問題作を連打している制作会社=スターサンズ、プロデューサー=河村光庸の新作。しかして、これまで以上にヘヴィーな問題作なのでした。

先日観た『許された子どもたち』でも重要なモチーフだった「毒母」「母子の共依存」を、もっと突き詰めて描いた力作。とにかく嫌な気持ちになることにかけては、『許された子どもたち』以上だと思います。長澤まさみ演じるこの母親にムカついて、憤って、映画を観てる間中腹を立てていた大江戸です。とにかく善悪のネジがぶっ飛んじゃっている女で、人としてやっちゃいけないことばかりやっちゃうのです。しかも何があろうと、どんなに金がなかろうと、絶対自分では働かないという謎のポリシーを貫いているのです。悪意のモンスターです。長澤にしてみれば、勝負をかけた汚れ役。いろんなところで「主演女優賞」を狙える役です。大いに奮闘していると思います。でも、奮闘止まりかなあ。撮影時32歳の長澤よりも、もう少し年上の女優が演じた方が良かったんじゃないかなあ。ひと頃の永作博美とか、小池栄子とかみたいな…。もしかしたら広末涼子や宮崎あおいがやっても面白かったかも知れません。

阿部サダヲのチンピラが、ゲスでサイテーで、ちょっと『彼女がその名を知らない鳥たち』で彼が演じたキャラクターを思わせたりします。阿部と皆川猿時が共演している場面などは、大人計画かグループ魂ですね。 そして、夏帆演じる福祉職員も、物語に陰影を与えています。主人公の悪意の前では、彼女の善意がいかに無力で脆いものだったか。彼女のみならず、全てのキャラクターが見事に描けています。脚本は大森立嗣監督と港岳彦(『あゝ、荒野』『宮本から君へ』)。

人間の心の闇を黒々と描き出すことが特質の大森立嗣監督ですが、あの清らかな『日日是好日』の後には、かなりハードな『タロウのバカ』やこの『MOTHER マザー』を出して来るあたり、あたかも反動のようです。思えばデビュー作『ゲルマニウムの夜』からして、かなり胸糞の悪い映画でしたからねえ。相変わらず人間の「闇」をぶちまけて、置き去りにして、観る者の心に影を落としてくれちゃうのです。困った人だ。

オーディションで選ばれたという息子役の奥平大兼は、大型新人登場という趣き。期待できそうです。

 

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2020年7月 2日 (木)

「ペイン・アンド・グローリー」:色彩は魅力的だけど…   #ペインアンドグローリー #ペドロアルモドバル #アントニオバンデラス

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映画『ペイン・アンド・グローリー』は、ペドロ・アルモドバル監督の成熟を示す集大成的な作品とか言われて、高評価を得ているようですが、大江戸はそんなに感心しませんでした。

アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルスといったアルモドバル一座を配役し、そもそもバンデラスはアルモドバル自身をモデルにした映画監督の役ですもんねー。で、今年60歳のバンデラスがアルモドバル風の老けメイクで、実に渋いんです。いい感じに枯れて、これでカンヌの主演男優賞を獲ったり、オスカーの主演男優賞にもノミネートされたりしたのですから。 ペネロペも今年46歳なんですねえ(うーむ)。でもまあ、若々しいです。

映画監督による人生の回顧録といった趣き(『8 1/2』が引き合いに出されているようです)。このパーソナルな感じが、そんなに好きになれませんでした。まあ大江戸の場合、アルモドバルご本人にさして興味がないってことなんですけど。

美術にしても衣装にしても、ポップな色遣いはいつも通り魅力的でした。特に赤が効いてますね。 アルモドバル作品も『トーク・トゥ・ハー』('02)以降は、『ボルベール<帰郷>』とか『抱擁のかけら』とか『ジュリエッタ』とか、結構好きな映画が多かったのですが、本作はそこまで届きませんでした。ナルシシズムが普遍化を遠ざけたと言いましょうか…。まあ、評価は人それぞれでございましょうけれど。

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このブログの保存容量の残量がけっこう少なくなってきたので、これからは映画の画像も1点にしていったりします。でも、内容は今まで通りですので、今後ともごひいきに!

 

 

 

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2020年7月 1日 (水)

「その手に触れるまで」:不寛容と寛容   #その手に触れるまで #ダルデンヌ兄弟 #カンヌ映画祭監督賞

003_20200701213701 映画『その手に触れるまで』は、カンヌの常連ダルデンヌ兄弟が昨年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞した作品。84分と小体(こてい)ながら、見事に無駄のない、立派な映画です。

ほんのひと月ほどの間にすっかり(洗脳されたかの如く)筋金入りのムスリムになってしまった少年。その彼がとった行動と、その後の日々を描きます。いや、もう語り口がうまいこと! 映画と言うものを知り尽くした演出で、描かずにわからせる、微妙な心情を感じさせる、描いてないことを想像させる---こういった難事をやすやすとこなしているのです。監督賞も当然と言える手さばきなのです。

001_20200701215201 ムスリム、移民、洗脳、ジハードといった題材を描きながら、そこには特定の人種や宗教を越えた普遍性が浮かび上がって来ます。イスラム教に限らず、どの宗教だって大なり小なり「我々=正義、異教=邪悪」という危うい考え方を持っているわけですから。「自分の正義は他者の不正義」を意識的に頭に置いて、「物事を他者の立場で考えてみる」行為を通じてしか、望むべき明日はやって来ないでしょう。だって、KKKとかヒトラーとかドナルド・トランプなんて、その真逆ですもんね。

002_20200701220101 つまり、この映画が全体として訴えているのは、不寛容と寛容ということです。物事の多様性を認め、自分とは相容れない他者を許す寛容性。ラストにもそれが現れておりました(が、大江戸はいささか唐突な印象を持ちました)。とはいえ、わかっちゃいるけど「行うは難し」なんですよねー。でも、あきらめずに心掛けることが大切なのでありましょう(と自戒します)。

 

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2020年6月30日 (火)

「ランボー ラスト・ブラッド」:トランプ大喜び?   #ランボー #ランボーラストブラッド #シルベスタースタローン

003_20200630214101 映画『ランボー ラスト・ブラッド』は、シリーズ第5作にして、たぶん最終作。そしてシリーズで最も人体損壊描写がエグい作品。かなりキてます。このシリーズ、毎回監督が代わっていて、本作は新鋭のエイドリアン・グランバーグです(おお、スタローン&エイドリア~ン!と思ったら、男性でしたけど)。

今年74歳のスタローンが、堂々のアクション・ヒーローですもんねー。体のキレも良く、とてもそんな爺様には見えないのですが、いやはやスゴイ時代になったものです。

 

009_20200630215001 ほとんど孫のような姪っ子を救出し、そして悪党一味を壊滅させる「一人の軍隊」=ランボー。ちょっと、リーアム・ニーソン的世界でもあります。序盤の「災害救助」、中盤の「殴り込み」、終盤の「からくりトンネルで待ち受けて」と、3つの見せ場がありますが、怒りの超絶エネルギーと周到な仕掛けで敵を(いったいどんだけいるんだよ!?ってぐらいに)ぶっ壊しまくるトンネル内外の場面が圧倒的なクライマックス。派手だけど、凄惨でもあり、観ていて気分は良くありません。観終わっても、辟易としてしまって嫌な感じです。

001_20200630215801 そもそも「メキシコ人は極悪だから、一網打尽にしてやりましょう」って話ですからね。トランプ大喜びですよ。トンネル決戦の手前では、炎の「壁」ができますし。

ベトナム戦争へのアンチテーゼ的に生まれた第1作(1982年:原題=First Blood)から幾星霜、この「Last Blood」では、単純な正義と悪の戦いになってしまいました。そういう単純化って、まさにトランプだと思うんですけどね。まったくもう。

 

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2020年6月29日 (月)

「潮騒](1975):めでたしめでたし   #潮騒 #山口百恵 #三浦友和 #あまちゃん #三島由紀夫

Shio 先週の『伊豆の踊子』に次ぎ、NHK-BSPで百恵ー友和コンビの『潮騒』(1975年)をやっていたので、見ちゃいました。こちらも初見です。

(『伊豆の踊子』はこちら ↓)

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-7797e8.html

正月映画だった『伊豆の踊子』の後のゴールデンウイークの公開。昔は何かとスピーディーですね。監督はこちらも西川克己。言っちゃあ悪いけど、同じような泥臭さというか、この頃のプログラム・ピクチャーの安っぽさみたいなものがよく表れています。

山口百恵は、ほんのちょっと大人になった感じでした。そして三浦友和は、またしても水もしたたる「美男子」ぶりです。実際に、嵐やら荒れる海やらで、水がしたたりまくっています。ふんどし姿で筋肉美を披露したりもしており、おお、これってまさに三島由紀夫的世界ではありませんか。

『あまちゃん』ファンの大江戸としては、あの『その火を飛び越して来い!』の原典を確認したかったこともあったのですが、いざその場面を見たら、意外とあっさりでしたね。もっとドラマチックにクライマックスでなのかと思っていたら、半分よりも少し前の場面でした。 でも、この場面での百恵さんの背中ヌードとかは、ちょっとオドロキですよね。まだ16歳だってーのに。後半にも海女たちの場面で、カメラの視界からは隠れているのですが、胸を露出させられるという場面があって、びっくり。『伊豆の踊子』にも(肌色の水着を着ていたようですが)びっくりシーンがあったし、この頃のアイドルはなかなか大変でありましたねえ(大らかな時代だったとも言えます)。

物語自体は通俗的に面白く、ラストなんか(『伊豆の踊子』のラストを反省したのか)爽やかで明るくて実にハッピー。めでたしめでたし。さすがはアイドル映画という仕上がりです。三島文学の換骨奪胎という感もございます。バックに『潮騒のメモリー』を流しても似合うぐらいです。 ナレーションの石坂浩二も軽やかで、彼の『ウルトラQ』のナレーションとはだいぶ異なる路線なのでありました。

 

 

 

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