2023年5月29日 (月)

「最後まで行く」:濃い犯罪コメディー    #最後まで行く #藤井道人 #岡田准一 #綾野剛 #カメレオン監督

1_20230529220401 映画『最後まで行く』は、タフなサスペンス・アクション・コメディー。もうこれは、コメディーと言っちゃってもいいと思います。それぐらい変な笑いに満ちた娯楽作でした。

オリジナルの同名韓国映画(2014年)は未見ですが、確かに韓国映画的な濃さとしつこさがありますね。そういった表現にしても、キャラクターにしてもかなりの濃さなので、笑えちゃうのです。

岡田准一と綾野剛が、まるでサンダとガイラのように激しくぶつかり合います。今回の岡田は、シャープな二枚目を封印して、むさ苦しくもっさりしたゴキブリ刑事を演じていますし、綾野剛は狂気全開で顔芸やってます。この二人の執拗な対決が、実に韓国映画っぽいんですよねー。

他の役者で印象的だったのは、綾野剛の上司(にして義父)役の千葉哲也さん。かなり國村隼産っぽいテイストで、そこに小ずるい感じを漂わせて秀逸。今後、國村さんのポジションが取れる役者になるんじゃないでしょうか。

いろいろツッコミ所はあるのですが、まあ、これだけ楽しませてくれたら、そこは見逃してあげようって気になるってもんです。それにしても藤井道人監督って、『新聞記者』もあれば、(未見の)『余命十年』もあれば、『ヴィレッジ』もあれば、本作もあるという何でも屋で(一応「社会派」メインなのでしょうけれど)、題材に合わせて大きく変化するカメレオン監督なのだと思っております。アクションは初めてだったそうですが、いえいえ、なかなかどうして見事なもんでございました。

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2023年5月28日 (日)

「波紋」:日常の裏のブラックコメディー    #波紋 #荻上直子 #筒井真理子 #ブラックコメディー

1-1_20230527234201 映画『波紋』は、優等生的イメージの強い荻上直子監督が作ったブラックコメディー。これだけ毒気がストレートに出ている荻上作品は、これまでになかったのではないでしょうか。現代社会のちょっとした歪みを描きながら、何でもない日常の裏側に潜んだ危機や毒をあぶり出していきます。

縁命水、水晶玉、枯山水、プール、雨など「水」のイメージがあふれるのですが、爽やかさや浄化のシンボルであるはずの水が、なぜか不安や不穏さを感じさせます。タイトル、『波紋』ではなくて『水紋』でも良かったような…。実際に「水紋の異世界」のイメージ映像が何度か登場します。モノクロのシュールな世界。ただ、この部分は成功しているとは言い難かったですねえ。

そしてラストはぶっとんだ割には、「いかにも作った」感じがしちゃって、その表すところもはっきりしなくて、成功していないように思えました。

これはやはり筒井真理子さんのぶっ壊れ方を見る映画なんじゃないでしょうか。筒井さん、映画に出るたびにほとんど毎回ぶっ壊れているような気さえしてきます。でもフィルモグラフィーを見てみると、近年では『よこがお』(2019年/深田晃司監督)ぐらいかも知れません。それなのに、そんな印象を与えてくれちゃう女優さんです。本作でも彼女の行動を見てると、思わず笑っちゃいます。「コメディー寄りのブラックコメディー」と言っていいのかと思えます。

ほかのキャストもやたらと名脇役揃い。光石研、磯村勇斗、木野花、柄本明、江口のりこ、平岩紙、安藤玉惠、キムラ緑子…。でも本当に聴覚障害者だという津田絵理奈さんの声や演技が、非常に印象に残りました。

 

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2023年5月27日 (土)

「ソフト/クワイエット」:胸クソ悪いけど、教育的    #ソフトクワイエット #胸クソ映画 #ヘイトクライム #白人至上主義

1_20230527224101映画『ソフト/クワイエット』(原題は『Soft & Quiet』)は、信じられないほど胸クソ悪くて、信じられないほど真摯で、信じられないほどパワフルな作品。92分の作品ですが、全編ワンカット撮影。観ている自分も登場人物の陰からずっと現場で目撃し続けているような、そんな臨場感をもたらしています。

(以降少々ネタバレあり) 思い出すだけでムカムカするほどの白人至上主義で人種差別主義のゲス女たちが繰り広げるヘイトクライムの世界。不気味だし、恐ろしいし、とにかくdisgustingで、ほぼ全編平常心ではいられません。そして、カラードであり東洋人である私にとって他人事ではありませんし、これを作った意義は大きいと思います。だってこれを観たら、さすがにこいつらと同じような考えをちょっとでも持ったら恥だと思うはずですもん(そりゃあ何人かは「そうだそうだ」と賛同する人もいるのでしょうけれど)。「反面教師」として、教育的価値を持つ作品だと思うのです。

知った顔のいない俳優の皆さんも、よく頑張ったと思います。

ただ、終盤は割と凡庸。もっと驚くべきラストを創造できたら、映画史に輝く傑作となったかもしれないのに、そこはちょっと残念。

脚本・監督のベス・デ・アラウージョは、母親が中国系アメリカ人、父親がブラジル出身なのだそうですが、やはり自分の経験がこの作品のモチベーションになっているのでしょうね。考えてみれば、日本各地で起きているヘイトスピーチやヘイトクライムも、まったく同根だと思います。なので、日本からもこのようなパワフルな娯楽作品が生まれてしかるべきだと感じました。

 

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2023年5月26日 (金)

閉館後の飯田橋ギンレイホール    #ギンレイホール #飯田橋ギンレイ #名画座 #佳作座

Dsc_1303_copy_1280x720 昨年の11月27日をもって閉館した飯田橋の名画座「ギンレイホール」。1974年以来48年の歴史だったそうです。昨年、最後に行くことは結局なかったのですが、そして実のところ何十年も行ってなかったのですが、その昔はずいぶんお世話になりました。で、先日どうなってるかと思って見に行ったら、まだそのままの外観で存在しておりました!

Dsc_13042_copy_1206x720 Wikipediaによりますと、この地には往年「銀鈴(ぎんれい)座」という映画館があり、1960年に今に至るこの銀鈴会館ビルが竣工し、1Fに銀鈴ホールが入ったのだそうです。「ギンレイホール」への改称は1974年で、そのタイミングで名画座になったのだそうです。

裏手の地下1階には、成人映画の「飯田橋くらら劇場」(2016年閉館)ってのもありました。

Dsc_13053_copy_475x720 ギンレイそばの表通りには飯田橋佳作座があり、どちらも洋画2本立ての名画座として人気を誇りましたが、佳作座は早々と1988年に閉館してしまいました。佳作座の看板は、JR中央線や総武線から見ることができたので、映画ファンは電車の窓から見るのが楽しみだったんです。

それと比べると、ギンレイは地味な場所に地味に存在した映画館です。映画館単体の建物が多かった時代から、ビルの中の劇場だったわけですし。でも、プログラム(上映作品)の良さやこだわりに関しては佳作座よりも上でしたし、それが魅力のコヤとしてずっと続いていました。後年は(小生が行かなくなってから)、好きなだけ見放題の年間パスを発行していることでも有名でした。

Dsc_13063_copy_504x720 正面左手の券売所跡もそのまま残っておりますし、ポスターが貼られていたガラスケースもそのままです。で、ガラスケースの中にはこんな貼り紙が…。閉館のお知らせと、現在の連絡先(千葉県成田市)でした。

閉館時の報道では、「今後移転先を見つけて、再開館する」ような話でしたが、どうなるんでしょうかねえ。都内で再開したら、ぜひ行ってみたいと思います。

 

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2023年5月22日 (月)

「宇宙人のあいつ」:玉石混交系コメディー    #宇宙人のあいつ #飯塚健 #日村勇紀 #中村倫也 #伊藤沙莉 

1_20230522222101 映画『宇宙人のあいつ』は、かなりぶっとんだコメディー。でもねえ、発想はそれなりに面白いけど、いざ映画として観ると、けっこうスベッてました(笑えた所もあるけどね)。

脚本・監督の飯塚健って、地味めの良作『ステップ』を撮ってるんですけど、それ以外はねえ…って感じのコメディー畑の人。本作なんか観ていて「これ、演劇界の人が書いたホンなの?」って思うようなダイアローグでした。面白い時もあれば寒い時もあるという玉石混交系。

最大の失敗は、重要な役に置いたバナナマンの日村勇紀にコントみたいな芝居をさせちゃったこと。お笑いの人に映画でそういうのさせちゃあダメなんですよ。お笑いの人には地味にマジメにやらせるほど、ペーソスや得難い味わいが出てくるのにねえ。

中村倫也はミステリアスなところが宇宙人っぽくもあるけど、変な顔したり変なことしたりする芝居が、弱い。突き抜けられていないんです。そこいくと、伊藤沙莉は何やらせてもうまいんだよなあ。関めぐみ、久しぶりに見た。大人になってた。

ウナギの件りとかジャガイモの件りは、迷走しまくってましたね。それにあのジャガイモ、ほとんど『エブエブ』の石じゃねーか(製作のタイミング的には、偶然だと思うのですが)。

(観た人だけわかる)一ヶ所、あのボウイのマークの件りだけは、声を出して笑っちゃいました。

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2023年5月21日 (日)

「TAR ター」:上質で上等な映画    #TAR #ター #映画ター #トッドフィールド #ケイトブランシェット 

1_20230521225601映画『TAR ター』は、上質な、上等な映画。メジャーな娯楽映画の枠内でこういう作品が作れるってのは、さすがアメリカ映画はまだ死んじゃいないってところです。「わかりやすさ重視」のメジャーな日本映画からは絶対出て来ない作品でしょう。その表現は、飛ばし見や倍速視聴では絶対伝わらないようにできているのです。

とにかく親切に「皆まで語る」ことはしません。部分を描いて、それで観客が想像して理解に至るように作られています。その塩梅が絶妙であり、逆に言えば「観客を信頼している」作り方なのだと思います。観る方も信頼に応えて、集中して頭を働かせる必要があります。でも映画を観る喜びって、そういうことではないのでしょうか。

『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』のトッド・フィールド監督が16年ぶりに撮った第3作ということです。見事な演出力であり、音楽映画とかサイコホラーとか転落のドラマとか、そういったたジャンル分けを超越した力作です。

その原動力となっているのが、ター役のケイト・ブランシェット。パワフルに、繊細に、リアルさと狂気を往還しながら、圧巻の演技を見せつけます。その上、指揮! ドイツ語! 今年のアカデミー主演女優賞は、『エブエブ』のミシェル・ヨーでしたが、改めて「なんで?」と笑っちゃいます。このケイトを超える人なんていませんもん。彼女のキャリアの中でも、『ブルー・ジャスミン』と並ぶ最上級の演技です。

2時間38分(「キネ旬」では2時間39分の表記)と長い作品ではありますが、ゆったりペースの序盤を除けば、長いと感じることはありません。むしろ、ディテールや伏線や映画表現の緻密さをきちんと味わうために、もう一度観たいとすら思いました 。 ドイツ生まれの撮影監督フロリアン・ホーフマイスターによる、怜悧な映像も見事です。

 

 

 

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2023年5月18日 (木)

「デスパレート・ラン」:怪物だーれだ?    #デスパレートラン #フィリップノイス #ナオミワッツ #馬鹿っ母 #知らぬが仏

Desperate-run 映画『デスパレート・ラン』は84分というコンパクトな上映時間を、ナオミ・ワッツがほぼ一人で駆け抜ける作品。監督は『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』『ボーン・コレクター』『ソルト』などで、大江戸がほとんど信頼していないベテランのフィリップ・ノイス。いま誤変換で、「フィリップ・の椅子」と出て来たんですが、どうしましょう?

そんなことはどうでもいいんですが、久々のナオミ・ワッツ、獅子奮迅の大奮闘です。終盤を除いては、ほぼ一人で画面に映ってます。そもそもこの映画、顔が出る役者は6人のみ。あとはボイス・キャストですから。

でもねえ、このナオミ・ワッツ演じる母親が、かなり大変なお方でして。わが子かわいさゆえの暴走っぷりが、ほぼモンスター・ペアレントなんです。知人や学校の先生や警察に相当わがまま言ったり悪態ついたりしています。その独善的暴走の結果、警察の事件解決に悪影響を及ぼすほどなのです。自分の子さえ無事だったら、あとはどうなってもいいみたいな感じで。なのに、みんな彼女に協力したりやさしくしてあげたりで、…なんか「ん?」って感じでした。ダメだよ、こんな人甘やかしちゃ。

ほとんど一昔前の女性週刊誌の広告の見出しによく出てきた「馬鹿っ母」って感じです。それはそうと、ずっと気になってるのですが、「馬鹿っ母」って、どう読むんでしょうね? 「ばかっはは」? 「ばかっぱぱ」?  「引き(ひき)」→「岡っ引き(おかっぴき)」とか「端(はな)」→「初っ端(しょっぱな)」みたいな音の変化から類推すると、「ばかっぱは」となるのですが…。「ぱは」・・・、言いにくい。

ナオミ・ワッツがスマホを縦横無尽に使いこなして、息子の情報を得て救出しようとするのですが、これ見てて「スマホのない時代だったら、ずっとシンプルなのに」「いらぬ心配をしないで済むのに」と思いました。彼女がランニングに出るときにスマホを置いてくるだけで、「走って帰って来てシャワー浴びて髪を乾かしたら事件は片付いていた」となるんじゃないの?と。知らぬが仏。まあ、それだと映画にならないんですけどね。

 

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2023年5月15日 (月)

「映画を早送りで観る人たち」を今ごろ読む    #映画を早送りで観る人たち #稲田豊史 #タイパ #映画館原理主義者 #文化を殺すな   

Dsc_13046_copy_600x887 1年ほど前に発行され、けっこう話題になっていた『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―ーコンテンツ消費の現在形』(稲田豊史・光文社新書)をようやく読みました。興味はあったのですが、ここまで遅くなったのには理由があって・・・なんか、読むといやな気分になりそうな気がしたからなのです。

で、やっぱりけっこう心が波立ちました。ざわざわ来るものがありました。早送り、倍速視聴、飛ばし見、ファスト映画、事前のネタバレチェックなどなど近年顕著な現象面から始まり、流行語にもなった「タイパ(タイム・パフォーマンス)」という考え方、失敗したくない気持ちの強さ、セリフで全部説明しないとわからない人たち、評論が読まれない時代、SNSの影響力、共感強制力などなど、すべての指摘が興味深く納得性の高いものですが、それだけに無力感、敗北感が強いというか、遺憾を通り越して絶望的な気持ちになったのでした。

ダメだこりゃ、です。快適さ、楽さばかりを追い求めて、日本人が、人類が、知性と教養を捨てて、白痴化が加速していきます。「学ぶ」心がなくて、文化が死んでいきます。読み進めていくと、これは時代がそうさせているのであって、しょうがないことだってのも理解できます。小生だって、今十代、二十代を送っていたら、当たり前のようにそうなっていたでしょう。でも、現在の常識が当たり前ではない、少なくとも当たり前とは思っていない人たちがいることはわかってほしいなあ。自分と意見を異にする人の考えを尊重し、なぜそうなのかを想像力をフル回転させて考えてほしいと思うのです。

著者による「おわりに」の最後の言葉で、救われます。そう、やっぱり映画を早送りで観るのは、おかしなことなんです。作品や作った人への冒涜という前に、自分自分自身が損をし、自分を貶める行為であるとさえ思います。早送りどころか、配信で映画を観る行為すら認めたくない「映画館原理主義者」の大江戸としては、深くそう思うのであります。人類の文化を殺すな!と。

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2023年5月10日 (水)

「銀河鉄道の父」:賢治も父もしょーもない    #銀河鉄道の父 #宮沢賢治 #じゃじゃじゃ

1-1_20230510221401 映画『銀河鉄道の父』は、宮沢賢治とその父をめぐる物語。門井慶喜の小説が原作です。監督は成島出。

まあ基本的には役所広司と菅田将暉が演じる父子を見る映画です。この二人の絡みも、それぞれの芝居の見せ場もたっぷりあります。でも大江戸は今回、まったく乗れなかったんですよねー。この厄介で不出来な賢治も、過保護で息子ラブ過ぎる父親も、好意的に思えないし、彼らを見ても何の感動も起きないのです。

小生は宮沢賢治の人も作品も全然好きではないので、この作品自体にも、賢治にも父にも、感情移入はできませんでした。てか、二人とも(特に菅田)熱演がちょっとウザい感じに思えました。強いて挙げれば、森七菜演じる賢治の妹・トシだけは(森七菜の好演もあって)見たくなるキャラクターでしたね。

賢治、しょうがない奴だなー。父親が何でも肯定して甘やかしちゃったんじゃないの?などと考えながら観ておりました。後半は日本映画の悪い所が出たって感じに、情感を込めた愁嘆場を台詞にたっぷりに長々と撮っていて、退屈しました。やけにアップの多いカメラも、室内で寄りの絵なのに手持ちで揺らしたりして、技法が意味不明でしたね。

今再放送中の『あまちゃん』といえば、驚いた時の「じぇじぇじぇ」ですが、本作では「じゃじゃじゃ」でした。同じ岩手でも場所で違うんでしょうね。

 

 

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2023年5月 9日 (火)

「EO イーオー」:人間なんて(by ロバ)   #EO #イーオー #スコリモフスキ #ロバ映画 #人間なんて

1_20230508225101 映画『EO イーオー』は、もちろん『ET』とは無関係です。むしろ『くまのプーさん』に出てくるロバの「イーヨー」に近いです。てか、そこに引っ掛けたネーミングなのだと思います。関係ないけど、『キャプテンEO』ってのも、ディズニーランドにありましたね。マイケル・ジャクソン主演、フランシス・フォード・コッポラ監督でした。

そんなことはどうでもいいんですが、『EO イーオー』は傑作でした。ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』にインスパイアされた作品とのことですが、大江戸にとっては『バルタザール』の何倍もこっちを支持したいですね。ロバの目を通して人間世界を描くロード・ムービー。大江戸が観たイエジー・スコリモフスキ監督作品の中でもベストだと思います。ロバを通して見た「♪人間なんて ララーラララララーラー…」です。

とにかく撮影が素晴らしいのです。これを観ると、映画ってやっぱり撮影だなあと思います。ロバの歩きを撮るだけで、こんなにもいろんなやり方があって、それぞれが素晴らしいことに感心します(撮影=ミハウ・ディメク)。テレンス・マリック作品を思わせる絵もいくつかありましたし、『2001年宇宙の旅』のスターゲイトを髣髴とさせる映像もありました。

加えてパヴェウ・ミキェティンの音楽も素晴らしいですし、なんてったってロバの表情というか瞳が深い何かを湛えていて雄弁なのです。ロバくん、けっこう主演賞ものです(6頭のロバが使われたそうですけど)。哲学的なロバ。

サイレント映画のような魅力もあり、映像詩の側面もあり、とにかく映画ならではの味わいと美しさに満ちた88分でした。

 

 

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