2019年10月14日 (月)

「ジョーカー」:陰鬱ホアキンのワンマンショー   #ジョーカー #ホアキンフェニックス #ロバートデニーロ

5_20191014232601 映画『ジョーカー』は、重いっすねえ。ヴェネツィア国際映画賞で金獅子賞(最高賞)を獲得したのがうなずける、シリアスな社会性を持ちながら人間の深奥を覗いていくドラマ。でもそれが大成功を収めているかというと、そこまでじゃないような気がします。大江戸的には『ダークナイト』の方が上だと思いますし…。

どの問題も、きちんと描いてはいるけれど、掘り下げは意外と浅く中途半端。暗さも重さも「極北」にまでは到達しておりません(メジャー大作映画なんだから当たり前か)。いずれにしても、これをデート・ムービーに選んじゃいけませんよ(選んじゃった人がいっぱい場内にいましたけどw)。気分がダウンしちゃいますもんねえ。

 

11_20191014233701 ホアキン・フェニックスのワンマンショーですが、この人の陰鬱かつ暴力的な個性がよく反映されています。どの役やってもうまいけど、好きにはなれない、そんな役者です。表情も往年のロバート・デ・ニーロ(特に『ケープ・フィアー』あたりの)みたいですし、映画の内容的にもデ・ニーロの『タクシードライバー』や『キング・オブ・コメディ』的でもあります。てなわけで、本作へのデ・ニートの登場は必然だったのでしょう。彼のおかげでメジャー感が担保されました。本作に描かれたジョーカーって、それこそ若き日のデ・ニーロが絶対やりたかった役でしょうね。

 

3 1980年前後の荒れて汚れたニューヨークそっくりのゴッサム・シティが舞台です。あの時代のNYの荒廃感と暴力的な空気が、見事に再現されております。そもそもオープニングのワーナー・ブラザーズのマークが、’70年代頃に使われていた赤と黒のシンプルモダンなもの(懐かしいと言うと、年がバレます)。さりげなくもしっかりと、徹底的な時代再現を行っています。

このジョーカーと、今の暗いバットマンが戦う映画ができるのかなあ。暗くてバイオレントなやつ。まあ、(怖いもの見たさで)見てみたい気もしますけど…。 大江戸は、明るくポップな狂気を振りまくジャック・ニコルソン版のジョーカーが結構好きだったりいたします。

 

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2019年10月11日 (金)

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」:音の映画、顔の映画   #ワンスアポンアタイムインザウェスト #セルジオレオーネ

T0024339p 映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(これまでの邦題は『ウエスタン』)が9/27から(東京では)丸の内と新宿のピカデリーで再公開というか、2時間45分のオリジナル版は初公開となりましたが、興行成績は厳しかったようで、すぐ新宿1館になり、上映回数も減りました。残念なことです。だって、(大江戸は今回初めて観たのですが)素晴らしい傑作だったんです。

とにかく「映画らしい映画」というか、映画を観ることの愉楽に溢れています。映像と音楽と役者たちが奏でるハーモニー。荒々しく、誇りと泥にまみれているのに、上質の映画ならではの馥郁たる香気を放つのです。映画として隙が無いです。完璧です。詩のようです。セルジオ・レオーネの最高作というのも、納得です。

音の映画です。静かな冒頭15分程の場面の中の微かな音やあの音この音が、見事に効いています。 そして顔の映画です。超クロースアップの顔、顔、ツラ。顔のアップとロングショットが交錯する編集も、実に映画。 先日書いた『蜜蜂と遠雷』がそうであったように、本作もまた「音の映画、顔の映画」なのです。

エンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしく、特に序盤にクラウディア・カルディナーレを乗せた馬車がモニュメント・バレーを行く時にかかる流麗なテーマ曲が、ただただ美しいです。

名場面は数々あり…いや、全篇名場面の連続。 そして数々の暴力を越えて、「昔むかしこんなことがありましたとさ」って感じのラストシーンでタイトルが出た時には、大いなる感動がありました。

メインの4人がしっかり描かれていますが、役者としては一番地味なジェイソン・ロバーズのおかげで、この作品にユーモアと下世話な人間味と深みが加わっています。もちろんブロンソンは(あの顔なのに)かっこいいし、カルディナーレはセクシーですけどね。ロバーズの見せる弱さと哀愁、好きだなあ。

そして“悪役”ヘンリー・フォンダ(よくこの役やりましたね)が、特に回想シーンでの若き日の彼が、驚くほど阿部寛にそっくり!で笑えます。正義の人=フォンダが悪人を演じたことが、アメリカ人と日本人には許せなかったのかも知れませんね。だから両国ではこの作品が大コケしたし、長らく評価されなかったのではないかと…。

 

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2019年10月 8日 (火)

「惡の華」:正しく美しい青春変態映画   #惡の華 #悪の華 #玉城ティナ #井口昇 #秋田汐梨

368391_013 映画『惡の華』は、ぶっ飛んでました。いや、素晴らしかった。「深く感動できる変態映画」ってことにおいて、塩田明彦監督の『月光の囁き』以来の傑作です。

そしてそれは、玉城ティナが演じた主人公=仲村さん(と伊藤健太郎が演じた春日)の造形の素晴らしさによるものが大きな要因です。仲村さんの嵐のような激しさの内にある狂気と哀しさが、本作に深みを与えています。そして春日の、自分で自分をコントロールできない「どうしようもなさ」もモヤモヤと感銘を同時に与えてくれます。 二人とも苦しいんです。その魂の深い所での結びつきを描いて、秀逸です。正しい青春映画です。正体のわからない悶々との戦いなのです。

 

368391_010 井口昇監督の映画って、あまりにdisgustingなテイストがあって(しばしばスカトロ趣味まであって)、大江戸は好きになれませんでした。なので近作はほとんど観ていませんでしたが、キラキラ映画まで手掛けるうちに角が取れて来たのでしょうか? この作品では、全然過去のバッドテイストとは違っていました。これはいいです。激しさと哀しさと甘美さをないまぜにした演出が、ある種の青春ノスタルジア的な感興をもたらしています。登場人物への愛もあるし…。

「悪魔と天使」のように描かれる仲村と佐伯さんですが、この佐伯さんに抜擢された15歳(撮影当時)の秋田汐梨が実に素人っぽくていいですね。美人ってタイプじゃないけれど、クラスに一人か二人のかわいい子って感じにうまくハマってます。後半に見せる変貌した表情なども見ものです。こういう子を使うことにおいては、もう井口監督さすが!としか言いようがありません。 もう一人、別のタイプとして登場する飯豊まりえも、悪くありません。

 

368391_002 今年の玉城ティナは、蜷川実花監督の『Diner ダイナー』に次いで本作と、当たり年です。『Diner ダイナー』では、人形のような美しさが只事ではなかったのですが、本作ではクールなメガネ美人でありながら、悪魔のような形相からふにゃっとした笑顔までを使い分けて、演技的にも健闘しています。大したもんです。

ラストの波打ち際なんて、なんてすがすがしく美しいんでしょう。間違いなく、今年の日本映画の収穫の一本です。 ボードレールの『悪の華』、未読なんで読まなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

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2019年10月 7日 (月)

「蜜蜂と遠雷」:音の映画、顔の映画   #蜜蜂と遠雷 #松岡茉優 #石川慶 #音の映画 #顔の映画

5 映画『蜜蜂と遠雷』は、原作者の恩田陸がベタ褒めしたのもうなずける秀作。何と言っても、音楽へのリスペクトに溢れているのがいいですね。ピアノ・コンペティションの映画というとリチャード・ドレイファス主演の『コンペティション』(1980年)がありますが、むしろ本作の方が勝っていると思います。

特にハッタリをかけたりはせずに「普通に」描くのですが、撮影にしても音響にしても演技にしても演出にしても、すべてが上等。上質の娯楽映画に仕上がっています。前作『愚行録』には今一つ乗れませんでしたが、石川慶監督、非常に良い仕事をしました。盛り上げよう、泣かせようとはしていないのに、中盤以降は結構泣かせ所が多くて、松岡茉優の演奏場面など、結構泣けましたねえ。

 

2 予告編や広告では松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士が4等分の扱いなのですが、本編を観るとはっきりと松岡が主役でした。堂々と主役芝居をやってます。やはりうまい人です。 元天才少女の心の傷と葛藤、そして復活の物語。王道の物語展開ですが、実際に音楽が、ピアノが聴こえるというのが映画ならではの強みです。恩田陸さんも、この音にやられちゃったんでしょうねえ。もちろん、松岡はじめ役者陣の健闘も大いに貢献しています。

演奏シーンの撮り方は普通。つまり、多くの場面ではスタントダブルが手先のアップや後姿などで使われ、カット割りでそれらしく見せているわけです。『コンペティション』のドレイファスみたいに、猛練習で自分で超絶演奏をやっちゃうわけではありませんが、別にそれでいいんです。いくつかのシーンでは実際にある程度の演奏をしていましたし、それで十分です。

今はi-padに楽譜を入れて、ペダルと連動させてページが替わる…なんてことができるんですね。譜面めくりの人がいらないのですね。本作中で、森崎ウィンがそれをやっておりました。

 

11 この映画の完成に向けて、この世界の実現のために、その質を上げるために、多くの人々が相当な努力をしていることでしょう。とりわけ「音」の面では。なんか、そんな気になってしまった作品です。見事な音楽映画です。

そして、「顔」の映画でもあります。人物の顔のアップがえらく多いのです。そして、顔(表情)にいろんなことを語らせています。 音と顔、まさに小説を映画化するにあたって、石川監督がこれらを戦略的に生かし切ったということなのでしょう。

だから、できるだけ音響の良い劇場で観るべきです。感動が違ってくることと思います。大江戸は新宿バルト9の「ドルビー・サラウンド7.1」で観ましたよ。

 

 

 

 

 

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2019年10月 3日 (木)

「天気の子」展@松屋銀座   #天気の子展 #松屋銀座 #新海誠 #天気の子ポンチョ

_20191003_1521251024x643 松屋銀座で『「天気の子」展』(~10/7)を観ました。残念ながら時間があまり無かったので、さらりと流し見といった状態でしたが、(映画を観ている者としては)なかなか引き込まれるものがありましたよ。そう言えばこの会場では、『「君の名は。」展』もやったよなあなんて思ったりなんかして。

絵コンテ、作画資料、キャラクター、美術などが多数展示されており、ところどころにスタッフの映像証言が挿しはさまれたりします。そして全体を通して新海誠監督のコメントがついているのが、楽しく読めるのです。もちろん場面映像もあって、そのクォリティーには改めてぶっとびます。

 

_20191003_1520221024x652 そして『天気の子』がいかに「東京の映画」なのかってことがわかって、改めて感心します。東京の風景を、これまでの新海作品以上に徹底的に美しく表現しています。スーパーリアリズム的に写実でありながら、きちんとコントロールして心情を映した、新海さんらしい表現になっているのです。この展覧会を観たら、もう一度映画を観たくなっちゃいました。

終わりの方には理科の実験的な気象コーナーがあったり、これまでの新海誠作品をたどるパネル展示があったりしました。

_20191003_152002768x1025 で、いつもながらの販売グッズの超充実ぶり! マニアだったら、あれもこれも欲しくなって、大変なことになってしまうでしょう。 その中でも大江戸が注目したのがこれ。「天気の子」ポンチョ! ポスターの図柄などにも使われた大空の絵柄=上半分の青空と、雲やら何やら…。しかも雨天の時に使えるわけですから、映画の内容にも合ってるし、MOMAの青空傘を連想したりもするし、いやー、これは名作です。買いませんが…。

 

 

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2019年10月 2日 (水)

「アイネクライネナハトムジーク」:モーツァルトは流れない   #アイネクライネナハトムジーク #今泉力哉 #三浦春馬

366951_004 映画『アイネクライネナハトムジーク』は、『愛がなんだ』の今泉力哉監督によるメジャー作。結構評判が良いみたいですが、大江戸はダメでした。映画がおとなしくて弾まなくて、119分が3時間ぐらいに感じるテンポの悪さでした。『愛がなんだ』の見事な演出力と全く違うんで、ある意味驚いちゃいました。

結婚発表でタイムリーな多部ちゃん(30歳)と、最近おっさん化が著しい三浦春馬(29歳)が主演みたいな広告や予告編ですが、実際のところは10人ぐらいがメインの群像劇になっていました。 それにしてもあの美少年だった三浦春馬が、こんなにカッコ悪く、おっさんくさくなってしまったのはなぜ? 自分で、キレイな顔が邪魔だと思ったのでしょうか?

 

366951_006 「十年後」でいろんな話を展開させるうまさがあって、いろんな登場人物が交錯し収斂していって、・・・でもその切れ味が今一つなんです。これ多分原作の方が面白いんだろうなあと思ってしまいました。

それにねえ、重要なボクシングのエピソードなんですけど、オーディションで選ばれたという成田瑛基がぜんぜんヘビー級の体に見えなくて…。これは原作がそうだったとしても、階級を替えないとダメでしょ。

 

366951_007 俳優陣では、矢本悠馬の良くできた嫁さん役の森絵梨佳が意外に良かったし、若手注目株の垣松祐里も人を惹きつけるサムシングがありました。

それはそうと、クライマックスに流れるのかなあ?などと思っていたモーツァルトの『アイネクライネナハトムジーク』は、1ミリも流れないのでありましたー。ってか、そもそもあったかクライマックス?

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2019年10月 1日 (火)

「見えない目撃者」:わざと危険に突き進む?   #見えない目撃者 #吉岡里帆 #

368136_003 映画『見えない目撃者』は、韓国映画のリメイクだそうですが、そこらへんについてはできるだけ(広告展開や本編のクレジットの中で)隠そうとしております。まあ、今に始まったことではないんですけどね。、逆に日本映画を韓国や中国でリメイクする時の扱いってどうなんでしょうか? ちなみに大江戸は韓国版も、日本に先駆けた中国版リメイクも未見です。

最近、吉岡里帆の演技力を結構評価している大江戸ですが、ここでは主役にふさわしい堂々の芝居で押し切ってました。悪くありません。目が開いているけど目が見えないという役を、視力以外のいろんな感覚が鋭くなっている役を、丁寧に演じていることも確かです。

 

368136_001 で、かなり猟奇的な要素もある作品ですが、ミステリーやサスペンスとしてそこそこしっかり出来ているので、そこが独り歩きすることもなく、2時間超を飽きさせないエンタテインメントになっております。 時々挿入される「見えない主人公がイメージする映像」がペン画のように画面に描写されるシーンはが目新しかったです(元の作品にもあったのでしょうか?)。

でも終盤になるや、主人公たちが「それやっちゃダメ」な方にばかり進んで行って、それで危険な目に遭うことによってサスペンスを盛り上げようとしていて、ダメでした。あまりにも「バカなのか?」ってぐらい、危険な方に突き進んでいきましたから…。

 

368136_005 吉岡とバディ関係を組む高杉真宙。二人がだんだんと心を通わせていくあたりは、お定まりのバディものなんですけど、そういう通俗性は良いものです。 (以降ネタバレあり) ラストで高杉が言う台詞「俺も警察官になれるかな?」にはちょっと感動しました。お定まりではありますが、同じ「〇〇になりたい」という意味の台詞でも、『記憶にございません!』の「僕も総理大臣になりたい」とはえらい違いで、じんと来ました。 

それはそうと、先日『影に抱かれて眠れ』で目にした横浜の野毛の風景(川沿いの間口の狭い飲み屋がずらりと並ぶ建物のあたり)が、本作にも登場しておりました(東映がらみの作品で立て続けに)。

 

 

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2019年9月30日 (月)

「人間失格 太宰治と3人の女たち」:もっと狂気を   #人間失格 #太宰治と3人の女たち #太宰治 #蜷川実花

367252_004 映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』は、7月公開の『Diner ダイナー』からさほど間を開けずに公開された蜷川実花監督作品。現代日本を舞台にした(その割には無国籍でしたが)前作に対して、戦後の東京を舞台にしております。なので、意匠的には鈴木清順の大正ロマン三部作に近いような、独特の絢爛ワールド。リアリティを片隅に置いて、自分の得意なフィールドにどんどん持って行っちゃいます。でもねえ、大江戸の趣味としてはもっともっと狂って、もっともっとカラフルにしてほしかったですね。清順さんみたいに。

 

367252_002 だから大江戸的には『Diner ダイナー』の方が上なのです。狂いっぷりが上なのです。 

それにしても、小栗旬の太宰って、太宰のイメージじゃないですよねえ。こんな人だったのかしらん? とは言え、「自分の映画には男でも女でも美しくないと出さない」と公言している蜷川監督だけに、コンプレックスと自己愛にまみれたウディ・アレンみたいな太宰を出すわけにも行かないんでしょうね。なにしろ、小栗、藤原竜也、成田凌、高良健吾、瀬戸康史、千葉雄大…と、イケメンたち大集合なのですから。実花さんってば、撮影してて毎日楽しかったでしょうね。

 

367252_003 それに較べて(だめんず好きの)女性たちは、3人に絞られているわけですが、意外と精彩を欠いております。ってゆーか、脱がない宮沢りえの一人勝ち。さすがです。沢尻エリカに関しては、「『ヘルター・スケルター』みたいな狂った役じゃないとダメなの?」って感じでしたし、二階堂ふみに関しては、「テレビに毒されて、ヘタになっちゃったの?」って感じでした。

物語がとにかく弱い(ってゆーか、ほとんど物語など無い)ので、120分がかなり長く感じられました。ラストだって、ああ延々撮らなくたって、太宰の雪中の死で終わらせたら良かったのにねえ…。

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2019年9月29日 (日)

「アド・アストラ」:ぼそぼそ&しんねりむっつり   #アドアストラ #ブラッドピット #スペースSF

368860_003 映画『アド・アストラ』は、とってもしんねりむっつりした作品。最初から最後まで、ブラッド・ピットが小声でぼそぼそと囁くナレーションが続きます。物語の進行自体も実にゆっくりしていて、もう眠気を抑えるのが大変です。静かに、淡々と、そしてゆっくりと進行していきます。

TOHOシネマズ日比谷のIMAXで観ました。やっぱり池袋のグランドシネマサンシャインのに較べると、あんまり大きくないじゃんって思っちゃいますよね。ま、それでもオープニングの大ロングショットとか高さや転落の描写では、IMAXの大スクリーンが生きておりました。

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(以降少々ネタバレあり) 国を守る組織の命を受けて、ある人物を探しに行くミッション、ってところが『地獄の黙示録』的です。ぼそぼそナレーションもそうですよね。ただ、せっかく探し当てたトミー・リー・ジョーンズにはカーツ大佐(マーロン・ブランド)のようなカリスマ性はありません。そこが映画の弱さなんじゃないかなあ。

それ以上に、絵的に「おお!」と思わせるものがないってことが、この手の作品としては致命的。やはり、壮大な宇宙を舞台にしたSFなんだから、“Sense of Wonder”を存分に味わせてくれないとね…。

368860_002 ああだこうだと思索はしておりますが、哲学的というほどのものでもありませんし、冒頭の事故シーンと、月面でのカーチェイス・アクションぐらいしか、派手な見せ場もありません。うーん、地味です。

『コンタクト』('97)以降のスペースSFは、特に近年は哲学性を含め秀作(『ゼロ・グラビティ』とか『インターステラー』とか『オデッセイ』とか…)が次々と登場したのですが、これは思わせぶりなだけで、ダメでしたねー。ブラピの父に対する思いや悩みが、全然こっちに届いてこない、刺さって来ないのです。124分がかなり長く感じられました。

 

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2019年9月26日 (木)

「台風家族」:終盤一気に「珍品」に…   #台風家族 #草彅剛 #市井昌秀

369344_001 映画『台風家族』を観た日は、『おいしい家族』からの「家族」つながりのハシゴでした。 小学生の頃「台風一過」を「台風一家」のことだと思っていたという人はゴマンといると思いますが、本作は「台風一家」とほぼ同意語の「台風家族」。さらに、この映画が公開された9月6日(金)にはあの(千葉県に、停電などの大きな惨禍をもたらした)台風15号が日本に迫っておりました。

だから何?と言われると、何でもないのですが、この映画、中身の方も台風並みに大荒れでした。

 

369344_007 今年公開の『新世界』では稲垣吾郎が、『凪待ち』では香取慎吾が、それぞれオーラを消したおっさん演技で高い評価を得たのですが、草彅剛は『まく子』では助演なので、二人ほどには話題とならず、この作品で捲土重来だったと思うのですが…。うーん、やはり「そこそこ」ではないかなあ。ある意味、いつもの草彅剛だし(「クズで結構~」とか踊り出すところも含めて)。

いつも通りといえば、藤竜也も近年の「いつも通り」なんですけど、このおじいちゃんに世話される認知症のおばあちゃんが、なんと榊原るみ! いやー、久々に見たんでびっくりしました。今69歳なんで、実年齢よりやや老け役ですけど、こんなおばあちゃんになっていたとは…。

 

369344_013 (以降ネタバレあり) 終盤の狂った展開には唖然。台風の暴風雨というシリアスな状況下なのに、あのガイコツ! ビジュアル的には完全にコメディーです。だいたい、あれぐらいの誰でも行けそうな川原なのに、なんで(白骨化するほど)長い間誰にも発見されなかったのでしょうか? もっと上流にあったものが、台風で流れた来たにせよ、それぐらいの台風、これまでだってあったろうに。そもそも、あんな年寄り二人ではそんな人跡未踏の地まで行けるわけもないわけですし…。『箱入り息子の恋』の市井昌秀監督のオリジナル脚本だそうですが、破綻してます。なんだこりゃ?です。珍品の域に入ってます。 そういえば、『箱入り息子の恋』もたしか終盤に破綻してましたもんねえ。ウェルメイドにまとめないのが身上なのかしらん?

出演者の新井浩文が事件を起こして、公開延期となっておりましたが、公開に至ったのは良いことだと思います。個人の罪と(多くの人の労力の結晶である)作品とは別物です。

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