2026年3月 9日 (月)

「花緑青が明ける日に」:そんなに高く評価するほどかぁ?    #花緑青が明ける日に #四宮義俊 

Hanarokushou映画『花緑青が明ける日に』は、新海誠監督や片渕須直監督の作品などに携わってきた日本画家の四宮義俊の映画監督デビュー作(日仏合作)。これ、いきなりベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選出されたってこともあって、観てみました。

新海誠監督の『言の葉の庭』のポスター・イラストを描いたのが四宮義俊なんですってね。緑の諧調とかみずみずしさとかが美しかったですもんね(同作の水彩画シーンにも参加)。

原作・脚本も四宮さんが手掛けているオリジナル作品。76分とコンパクトです。物語は正直なところどうでもいいような話なのですが、絵は個性的で、水彩画のようなあっさりした色調は、独自性が強いと思います。

で、クライマックスの花火のあたりはさすがに絵と色調が素晴らしいのですが、それ以外は「そんなに高く評価するほどのものかぁ?」って感じでした。身も蓋もない言い方をすれば、「どうでもいいような話」だし、情感やサプライズに乏しくて地味なんです。絵だって、圧倒するようなタイプではありませんし。まあ、大江戸はそんなには気に入らなかったってことです。

四宮義俊監督って、『ドライブ・マイ・カー』や『敵』などの撮影監督の四宮秀俊さんと兄弟か何かなのかなあ? 秀俊が1978年生まれ、義俊が1980年生まれで、この珍しい苗字に「俊」がつく名前だからたぶん兄弟だと思うんですけど、AIに聞いてもわかりませんでしたー。

| | コメント (0)

2026年3月 8日 (日)

「しあわせな選択」:殺人ブラックコメディー    #しあわせな選択 #パクチャヌク #イビョンホン 

Shiawase 映画『しあわせな選択』は、パク・チャヌク監督による殺人ブラックコメディー。想像以上にぶっとんでいて、想像以上に笑いの要素が強い作品でした。

とは言え、韓国社会の風刺になっていたりするんでしょうね。そういう社会性と、人間の奥にある「業(ごう)」を描いているってことで、なるほどやっぱりパク・チャヌクだなあと思うわけです。

アクの強い描写を、かなり振り切ったトーンで、でも下品にはならないように見せてくれます。役者たちもそれに応えて振り切ってます。毒ヘビの件りなんかは、「何を見せられてるんだろう?」って感じで、唖然としてしまいます。そこがこの映画の値打ち。

でも2時間19分ってのは、無駄に長いですよねー。普通にもう30分削った方が良かったろうにと思います。 そして、随分とバランスの悪い映画だと言わざるを得ませんし、コメディー仕立てにしない方が良かったのではと思ってしまいました。大江戸としては、失敗作だと思っております。

その一方で、紙や製紙へのリスペクトは、なかなか結構でした。この世界には、小生も大いに興味をそそられました。小生だったら、紙づくりの工程のどこかに被害者を入れて(溶かして)、被害者を紙にしてしまうような馬鹿げた話にするのになあ…などと考えておりました。

そして、イ・ビョンホンのエンケン(遠藤憲一)化が止まりませんです(笑)

| | コメント (0)

2026年3月 7日 (土)

「私は泣かない」(1966年):泣いてるじゃん    #私は泣かない #和泉雅子 #芦川いづみ 

Dsc_36443_copy_1030x1558 映画『私は泣かない』(1966年)を、神保町シアターの追悼特集「女優・和泉雅子」で初めて観ました(和泉雅子は昨年7月に逝去)。第1回青少年映画賞・文部大臣グランプリ受賞作だそうです。ポスターは色鮮やかだけど、モノクロ作品です。

まあ、小生は和泉雅子も好きですけど(『悪太郎』とか)、本作に関しては芦川いづみさん目当てでの鑑賞。芦川さん、本作ではこの頃よく演じていた「お姉さん」的な立ち位置。物足りない脇役ではありますが、清廉で落ち着いた感じがぴったりでした。

当時19歳の和泉雅子は、くっきりしたお顔でおきれいでした。彼女が銀座生まれなのは知っていましたが、竹中半兵衛の末裔だってのは今調べて知りました。びっくり。

今でいう「元ヤン」っていうか、元受刑者役の和泉雅子と身体障害者の男の子(両足が不自由)との交流と、彼女の成長を描く作品です。社会派の側面も持っていて、今日ではなかなか作れないほどピュアな物語。終盤などはけっこうピュアで爽やかな気持ちにさせてくれます。山内賢との間の「友だち以上、恋愛未満」な関係も爽やかです。

でもやはり60年前の映画というか、今だとアウトな言葉(差別用語など)がバンバン出て来て「おお」と思ってしまいます。 (以降ネタバレあり) また、中盤の裁判ってのが、父親が苦悩した挙句思い迷って身障者のわが子を殺してしまったという事件でして、それをみんなが父親の情状酌量を求めて奮闘するわけですが、ここらへんも今の視点で見ると微妙なところですね(身障者は殺しちゃってもいいという短絡的な優生思想に結びつきそうで…)。

あ、タイトルとは違って、和泉雅子は何度も泣いておりました。

| | コメント (0)

2026年3月 6日 (金)

「レンタル・ファミリー」:古風だけれど、すがすがしい    #レンタルファミリー #ブレンダンフレイザー #HIKARI 

Rentalfamily 映画『レンタル・ファミリー』は、ウェルメイドでほっこりするハリウッド映画(サーチライト・ピクチャーズ作品)。でも全編日本ばが舞台で、ダイアローグも日本語中心です(ブレンダン・フレイザーもかなり日本語を話します)。エンドクレジットのスタッフや俳優の名前も日本語(カタカナ)と英語が併記されております。

まあタイトル通りの作品であり、新味はないどころかむしろ古風な匂いがします。でもテンポが良いのと、口当たりが良いので、万人受けのする作品に仕上がっております。HIKARI監督、今後も何本かハリウッドで映画を撮れるんじゃないでしょうか。

ブレンダン・フレイザーの茫洋として親しみやすく、一抹のペーソスもある個性と大柄な体躯が非常に効いています。ぬいぐるみ的かわいさもあるし。 共演陣も彼に負けず、及第点以上です。柄本明はいつも通りですが、ブレンダンに負けてないし。平岳大は達者な英語で、今後も国際需要がありそうですね(声がやけに渡辺謙に似ていることを発見しました)。そして、山本真理はこれまで知らなかった人ですが、なかなかの健闘でした。

ただ、本作で描かれているこのフェイク家族やフェイク人物の商売って、倫理的にも法律的にもけっこうヤバイんじゃないでしょうか。ギリギリセーフ、時によってはギリギリアウトな気がします。人の心をだます嘘はいけませんや。そこらへんを自覚した上で描いていることはわかるのですが、観ていてちょっとモヤモヤすることも確かです。

でも最終的には、ちょっといい人情噺になるので、鑑賞後の気分はすがすがしいのです。 それと、HIKARI監督が日本で撮っただけに、ヘンテコな「トンデモ日本」が出てきたりしなかったのも良い所ですね。

| | コメント (0)

2026年3月 5日 (木)

「嵐が丘」:大胆な翻案としょーもない人たち    #嵐が丘 #マーゴットロビー #エメラルドフェネル 

Wutheringheights 映画『嵐が丘』は、『バービー』のマーゴット・ロビーが製作・主演、『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネルが監督・脚本という、「この二人のベクトルが重なったら強烈だろうなあ」って思った作品。ロビーが言うように、「エメラルド・フェネルによる『嵐が丘』」になっています。

何せ原作の後半をばっさりカットしたりの大胆な翻案になっているそうです。まあ、確かにそうでもないと今、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』をやる意味はないですもんね。 とはいえ、この二人が関わっている割には、古典的な味わいもそこそこ残っております。残しながらも、自由な想像力で、ぶっとんだ場面も入れ込んでいるのです。

それにしても主人公の二人は、男の方も女の方も、現代人の共感を呼ばないですよね。まあ、割れ鍋に閉じ蓋的カップルというべきか。ヒースクリフは途中から、やけに悪人になっちゃうし、キャサリンの方もこじらせ過ぎで、なんかしょーもない人です。でも考えてみると、本作中の登場人物って誰も彼も大なり小なりしょーもない人たち。特に男性は、キャサリンの父親だとかヒースクリフだとか、とんでもない人が多いのです。そこらが、ロビー&フェネルの色合いってことなんですかね。

映像は美しいです。特に、赤を印象的に生かした美術(スージー・デイヴィーズ)と衣装(ジャクリーヌ・デュラン)が見事。スージーって、『教皇選挙』の美術を手掛けた人なんですね。あの作品も赤が印象的でした。なるほど。 あと、「ねちゃっ」とした描写がやけに多かったです。監督のオブセッションなんでしょうね。

| | コメント (0)

2026年3月 2日 (月)

「センチメンタル・バリュー」:自己中心的で厄介な主人公    #センチメンタルバリュー #ステランスカルスガルド #こじらせ過ぎの娘

Sentimentalvalue 映画『センチメンタル・バリュー』は、ノルウェーのヨアキム・トリアー監督作品。家族のというか、父と娘の確執を描いたドラマです。評価はけっこう高いようですが、大江戸は乗れませんでした。

オープニングからして、この(主役の)女優の自意識過剰な責任感のなさに=自己中心的過ぎるプロ意識のなさに、かなりイラっときます。そして、その感情は最後まで消えませんでした。だってこの人、平気で人を傷つけることばかり言ってるくせに、本人はやけに傷つきやす過ぎるというか、打たれ弱いんです。厄介な人です。 

父親との確執にしても、こじらせ過ぎですよ。いい大人なんだから、もっと適切なふるまいをしていただきたい。大江戸なんかは芸術家コンプレックスがあるので、「こんな世界的大監督なんだから、仕事優先でもいいじゃん。家族が捨てられたと言ったって、何不自由なく暮らせてきたんでしょ」と思ってしまいます。もっとひどい私生活の監督(中平康とか)やら作家やらについて読んだりしてきたからでしょうかね。

妹のアグネスぐらいの反応が妥当な気がしますし、比較対象として出て来たレイチェル(エル・ファニング)なんか、スターなのに理想的なふるまいをいたします。ああいう人が増えれば、世の中は過ごしやすくなるのに。

いずれにしても本作で最高なのは、父親役=ステラン・スカルスガルドの名演です。これまでにも増して、微妙な表情の一つ一つが見事でした。大江戸の助演男優賞候補ですよ。でも本作中、彼が孫の男の子にギャスパー・ノエの『アレックス』やミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』のDVDをプレゼントするのを見て愕然! それ、子供には絶対見せちゃあかんやつでしょーが! まあ、こういう所のある人なんで、娘から嫌われちゃったのかも知れませんけど…。

 

| | コメント (0)

2026年2月28日 (土)

「木挽町のあだ討ち」:詩情がなくて残念    #木挽町のあだ討ち #柄本佑 #渡辺謙 #椎名林檎 #時代劇ミステリー

Kobikicho 映画『木挽町のあだ討ち』は、『国宝』に刺激されたわけじゃないでしょうけど、江戸時代の歌舞伎小屋(森田座)やそこで上演される『仮名手本忠臣蔵』がいろいろと関係してくるミステリー(でも所どころ笑えたりもします)。

時代劇で、ミステリーで、柄本佑や渡辺謙の出演で…と、どうにも若い人の食いつきが悪そうです。でも客席には若い人たちもそれなりにいました(永尾謙杜のファンばかりではなかった気がします)。

まあ、面白いと言えば面白いのですが、圧倒的ではないし、観ていて「これ原作小説の方が面白そうだなあ」と思ったりしちゃいました。コロンボ的な探偵役を演じる柄本佑が、まあ普通に柄本佑だなあって感じで、今一つ。渡辺謙だって、鬼気迫る『国宝』に較べると大したことありません。

ただ、誰かが『アベンジャーズ』を引き合いに出していましたが、渡辺謙さんのチーム=滝藤賢一、瀬戸康史、高橋和也、正名僕蔵らが、なかなか個性的で、それぞれの描き分けもしっかりしていて、良いアンサンブルでした。

ミステリーのタネは割と早めに気づきますし、中盤には早めに明かされるのですが、そんなのはどっちでもいいんです。ただ、もっと人情芝居が濃厚かつ感動的であってほしかったですね。妙にカラリとしていて、詩情がなかったのが残念です。

それはともかく、エンドクレジットに流れる椎名林檎の旧曲(『人生は夢だらけ』)が、歌詞も曲調もまったく合ってなくて、ひどいもんでした。椎名林檎は違うよねー。

| | コメント (0)

2026年2月24日 (火)

「私たちの一日」:キム・ミニが若くて細い    #私たちの一日 #ホンサンス #月刊ホンサンス #キムミニ #キジュボン

Inourday 映画『私たちの一日』は、ユーロスペースが5か月連続で未公開作を上映する特集「月刊ホン・サンス」の4本目。2023年の作品で、84分とコンパクトです。

でもやっぱり典型的なホン・サンス映画。おしゃべりして、酒飲んで、大したことは起こらなくて、でも面白くて素晴らしい。あ、品質保証のしるしのように、キム・ミニも出ています。

そのキム・ミニが若いんですよねー。そして細い! 20代に見えるんですけど、1982年生まれだから、本作製作時に41歳ぐらい。びっくりです。 そして『川沿いのホテル』(2018年)でも詩人役だったキ・ジュボンが、またも詩人役。それ以外のキャストも、近年のホン・サンス作品でよく見かける常連が揃いました。

でもキム・ミニたちの話と、キ・ジュボンたちの話が交わることはないのです。結局最後まで別々の話で、それが並行して描かれるだけなので、ある意味驚いちゃいます。それでも、ホン・サンスお得意の「反復」(好きなものをがまん、とか、ラーメンにコチュジャンとか、ギターで演奏とか)が、両者をつないでいくのです。

そしてラストなどは、なかなか味わい深いものなのでした。やっぱり好きです、ホン・サンス。

そうそう、肥えたネコも出ています(『逃げた女』(2020年)にもネコが出てましたよね)。小生が本作を観たのは2月23日。あと1日早かったら、2.22=ニャンニャンニャン=猫の日に鑑賞することとなったのに…。

 

 

| | コメント (0)

2026年2月23日 (月)

「クライム101」:ソーとハルクの犯罪サスペンス    #クライム101 #クライムワンオーワン #クリスヘムズワース #マークラファロ #ハルベリー 

Crime101 映画『クライム101(ワン・オー・ワン)』は、1970~90年代を思わせるクライム・サスペンス。現代のロサンゼルスの街がもう一つの主役です。夜の闇の黒が美しく、陽光はまぶしく、かなりスタイリッシュなアメリカン・ノワール。

なんせ、主役の二人がソーとハルクです(クリス・ヘムズワースとマーク・ラファロ)。それぞれを別々に描いていき、終盤に合流させるという手法を取っております。この二人のタイプの違いが、生きてます。こういう、男と男の、プロとプロとの激突みたいな映画って、近年はとみに少ないので、懐かしくも貴重です。 そこに加わって来るバリー・コーガンのイラっとくるような嫌な感じとチンピラ感も、ニック・ノルティ(久々!)の凶悪ジジイぶりも、うまく配置できています。

ハル・ベリーが作中で「53歳」と言われてハラスメントを受けておりますが、そのクソ上司と出張に行って飛行機事故で遭難すると別の映画になります(はい、『HELP 復讐島』ね)。でもハル・ベリー本人って、今年で還暦を迎えるんですよ。異常に若くてお綺麗です。びっくりだ。

こういう上質なオトナの娯楽作って、ほとんどなくなっているので、「よくぞ作ってくれました」ってところ。マーヴェルものなんかの「揺り返し」で、もっと増えてほしいものです。

それはそうと101といえば、台湾に「台北101(イーリンイー)」というタワーがありますね。「101匹わんちゃん」も連想される数字なのであります。

| | コメント (0)

2026年2月21日 (土)

「たしかにあった幻」:餅は餅屋の河瀨直美復活    #たしかにあった幻 #河瀨直美 #屋久島映画 #臓器移植

Maboroshi 映画『たしかにあった幻』は、『朝が来る』(2020年)以来6年ぶりの河瀨直美監督の劇映画。間に『東京オリンピック』のSIDE AとBがはさまってましたからねえ。本作を観て改めて思うのは、「なんで河瀨直美にオリンピック映画まかせちゃったんだろ?」ってこと。まあ、1964年のオリンピックで市川崑があんな画期的な傑作を作っちゃったもんで、新たなオリンピック映画には更なるチャレンジを期待しちゃったんでしょうね。「その意気やよし」ではありますが、結果としては惨憺たるものになってしまいました。詩人に小説書かせるみたいなことになっちゃってました。

なんと、けっこう屋久島映画だったりするのですね。白谷雲水郷や大川(おおこ)の滝などが美しく撮られています。屋久杉を神々しく撮った映像などは、まさに河瀨直美。もちろんそこに「いのち」を立ち上がらせて描いているわけです。ほんとに本作は得意の領域に戻ったようで、やっぱり餅は餅屋だよなあ、餅屋にパン作らせちゃダメだよなあと思った次第。ドキュメンタリー風のタッチも冴えてます。

ただ、寛一郎がらみの失踪パートが、「これいるの?」って感じ。臓器移植の本筋テーマは、その問題提起の強さのみならず、映画として素晴らしい出来なのですが、失踪に関しては何で本作に入っているのかが非常に消化不良。その上、寛一郎のキャラクター設定が行き当たりばったりな感じ。そこらは残念でした。

でもメッセージの訴求力は抜群です。本作を観るまで何となく自分の臓器を提供することには抵抗があったのですが、観た後では「まあ、提供してもいいかな」って思いましたもん。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧