2017年5月 8日 (月)

「みみずくは黄昏に飛びたつ」by川上&村上

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川上未映子が村上春樹にロング・ロング・インタビューを行った本『みみずくは黄昏に飛びたつ』(新潮社)を読みました。

4つの章に分けたインタビューで、少女時代からの村上作品の熱心な愛読者でもある川上さんがぐいぐいと村上さんに迫ります。時として「村上さんたじたじ」といった様子になるあたりが、結構スリリングです。

川上さんは縦横無尽に過去作品からの事例や引用を持ち出しますが、村上さんの方では大抵「そんな事書いたっけ?」って感じで、のれんに腕押し感たっぷりです。そんな所を含めて、とにかく面白いQ&Aの連続です。川上さん、鋭いです。ファンとしての視点、小説家としての視点、フェミニストとしての視点から、ズバズバと聞いたり、村上さんの答にのけぞったりしています。

中心となるのは『騎士団長殺し』なのですが、やはりこの作品の謎はきっちり解き明かされるわけもなく、謎のまま残ります。大江戸としてはこの作品、きっと1年後ぐらいに第3部が出るんだろうな(『ねじまき鳥クロニクル』や『1Q84』のように)と思っていたのですが、これを読むと「あ、あれで終わりなんだ。村上さん、基本的には続きをつくらないでいいと思ってるんだ」と感じずにはいられません。

まあ、それにしても村上春樹って、長編でも短編でもエッセイでも悩み相談でもインタビューでも、金太郎飴的にどこを切っても村上春樹だなあ。

帯に「ただのインタビューではあらない」と書いてあるあたりに、いい感じのセンスですね(『騎士団長殺し』を読んだ人には響くってことで)。

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2017年4月27日 (木)

「湘南ベルマーレ2016フロントの戦い たのしめてるか。」を読んで

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『湘南ベルマーレ2016フロントの戦い たのしめてるか。』(水谷尚人・池田タツ/産業能率大学出版部)を読みました。そのチームとしての在り方が注目されるので、結構出ているベルマーレ本の最新刊です。

湘南ベルマーレの代表取締役社長である水谷尚人のドキュメンタリーをはじめ、2016シーズンのベルマーレのスタート前からJ2での翌期へ向けてのあれこれを描くのですが、特にチームを支えるフロントの面々に焦点を当てているところが珍しい作りです。全スタッフ(といっても20人かそこらですが)へのインタビューを含め、ベルマーレというチームが好きな人以外にも(たとえばビジネス書が好きな人や、裏方が好きな人にも)興味深い内容になっています。

湘南が圧倒的強さでJ2優勝を果たした2014シーズンの先発メンバーのうち3年後の今シーズン、チームに残っているのは菊地俊介ただ一人という衝撃的な事実も書いてありました。あとの10人はみんな、湘南より財政規模の大きなクラブに移籍してしまったわけです。ありていにいえば、給料安いのに「使える」ヤツだから、引き抜かれちゃったのです。つらいですね。もっと多くの移籍金が育成したクラブに残るシステムを、切に望むものであります。

この本を読んで、新しいことも知ることができましたし、ますますベルマーレが愛すべきチームであることを確信できました。大江戸は昔からこういう「小さくても志のあるユニークな」ものが大好きなのです。早く新スタジアム計画がまとまっていくように、願うばかりであります。

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2017年3月22日 (水)

「騎士団長殺し」ようやく読了

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はい、ようやくです。ようやく読み終えました、村上春樹の『騎士団長殺し』第1部「顕れるイデア編」・第2部「遷ろうメタファー編」。発売日の朝に買った割には、長い道のりでした。ま、大江戸の場合、通勤等の電車内でしか本を読まないし、本だけじゃなくてフリーペーパーやフリーマガジンを読んだり、スマホを触ったりもしているので、しかもそんなに長い通勤時間でもないので、2巻1,000ページ以上の長編となると、随分かかってしまうのです。

でもそれは取りようによっては、「長く楽しめた」「値段のもとは十分取った」とも言えるので、悪いことじゃあありませんやね。

それにしてもこのブックデザイン、渋い色調とは言え緑系と赤系なんて、『ノルウェイの森』を連想しないわけにはいかないじゃないですか。

で、作品は素直に面白かったです。特に第1部の後半から第2部の前半にかけて、加速度的にぐんぐん面白くなっていき、本当に「小説の面白さ」を堪能させてくれます。 でも第2部の後半になって、妙にスローダウンしてしまいます。そしてクライマックスがないままに終幕。この感じは・・・、そして決着のつかないあれやこれやから考えると、また『ねじまき鳥クロニクル』や『1Q84』の時と同じように、最初に2巻を出して、翌年あたりにもう1巻追加するというパターンなのかも。だって、そうでなければ「終わり」になってませんもん、これ(「第1部おわり」「第2部おわり」としか記されていませんし)。

いつも通りの(現代社会を彩る)固有名詞の嵐、いつも通りの比喩の嵐、そしてしばらく離れていた「ムラカミらしい物語」(夢が出て来たり、穴があったり、壁があったり、セクシャルな描写が冴えてたり、シュールな展開があったり、ファンタジーの世界が出現したり、邪悪の影があったり、イノセンスが危機に瀕したり・・・)です。いつも通り「こんなこと言う奴いねーよ!」な会話が繰り広げられます。絵描きというクリエイティブな職業の主人公を登場させたのが、新しいところでしょうか。

たっぷり楽しませてもらいはしましたが、読み終えて宙ぶらりんな気分になってしまったことも事実です。うーむ、早く第3部(出ますよね??)を読みたいものです。「第3部はあらない」(←読めばわかる)なんて言わないでくださいね。

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2017年1月11日 (水)

「キネマ旬報」ベストテン発表

 昨日、恒例の『キネマ旬報』ベストテン2016が発表されましたね ↓

http://www.kinenote.com/sp/kinejun_best10/

 今年は邦洋とも順当な結果だったので、「うん、なるほど」「まあ、そうだよね」って感じ。計20本の中で、未見の作品が一つも無かったってことも、順当さを示しております。

 毎年読者選出ベストテンを投票している立場で言いたいことがあるとすれば、今年もまた12月半ば(12/15)までの1年間の公開作が対象だってこと。以前のようにというか、アカデミー賞のようにというか、1/1~12/31の公開作というシンプルな形にしていただきたいものです。決算号を遅らせてでも、そうしてほしいのです(もちろん年末の公開作を観る都合上、投票締め切りもせめて1/10頃にしていただきたいですが)。なぜなら、その年(暦年)の公開作と対象作が異なるってのは、後から調べる時に何かと面倒ですから。更に、自分でその年のベストテンを作ってブログにも発表している立場とすれば、同じ年に2種類のベストテンが存在してしまい、ややこしいのです。今回も、12/23公開の『アイ・イン・ザ・スカイ』を片方では入れ、片方では入れないために、ベストテン上位が大きく変わってしまうのです。

 それはさておき、日本映画では、『この世界の片隅に』が1位、『シン・ゴジラ』が2位と、ある意味一番想定しやすかったパターン。3位『淵に立つ』と4位『ディストラクション・ベイビーズ』は、入るとしてももう少し下位だと思っていたんですけどね。以下秀作、力作が並びますが、新聞によると『海よりもまだ深く』と『64 ロクヨン』が次点だったとか。普通の年なら当然テンに入る作品でしょう。自分で選ぶ時も難しかったのですが、本当に昨年は類例がないほど優秀な作品が多い年でした。そう、『君の名は。』も入ってませんしね。

 一方、外国映画は1位『ハドソン川の奇跡』は予想できたものの、『キャロル』が2位にまでなるとは思っていませんでした。これも自分で1位を選ぶことが難しかった(群を抜いて秀でた作品が無かった)のと同様、皆さん選ぶのに苦労したのではないでしょうかねえ? そんな中、スピルバーグ久々の秀作『ブリッジ・オブ・スパイ』が3位に入ったのは嬉しかったなあ。4位『トランボ』も頑張りました。1~4位をはじめ、10作中7作がハリウッド映画でした。

 個人賞では、宮沢りえ・杉咲花の『湯を沸かすほどの熱い愛』コンビが主演&助演女優賞を獲得したのには、大いに納得。花ちゃん、あの若さで助演賞ってのは珍しいけど、小生も1票!です。 柳楽優弥の主演男優賞には、ちょっとびっくり。佐藤浩市や本木雅弘や岡田准一らを差し置いて・・・ですからねえ。

 2/3発売のベストテン号で明らかになる読者選出のテンも楽しみです。 そして皆様ご期待の大江戸時夫のベストテンも近日中に発表しますので、もうしばらくお待ちください。

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2016年12月26日 (月)

「酩酊!怪獣酒場」第3巻

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ウルトラ怪獣たちが出演(?)する人情酒場コメディ漫画『酩酊!怪獣酒場』の第3巻が出たので買いました。

(1・2巻はこちら↓)

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-b8d1.html

表紙は焼鳥を焼くゼットン。その背後にはカネゴンとダダの姿も。こんな感じにシュールなのです。 3巻では怪獣酒場のチーフのケムールさんがますます主役として活躍。ケムール人ファンの小生としても、嬉しい限りです。

今回、怪獣以上にインパクトがあったのが新入社員の瀬戸文太。打たれ弱くて、怒られるのがいやなばっかりに、わざと無能を装って見放されているというとんでもないキャラ設定なのです。うーむ、考えさせられる今日性がありますね。

そして最後にオドロキの展開が待っています。びっくりです。 第4巻が楽しみです。

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2016年11月16日 (水)

「オシム語録」を読んで

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文藝春秋から出た『オシム語録 人を導く126の教え』(監修:田村修一)を買いました。もともとは『Number』およびメルマガに載せられた2006年以降のインタビューの中から印象的な言葉をひろったものだそうです。

「部下を動かす言葉」「リーダーシップに必要な言葉」「組織を構築する言葉」「人生に効く言葉」「日本人に告ぐ」の5章に計126の言葉が、その解説とともに掲載されています。基本的にサッカーの事を語っていますが、それが仕事や人生の金言にも置き換えられるのが、実にオシム流なのです。

ハッキリ言って、一つ一つの言葉はそんなにアッと言わせるものではないし、大好きな言葉を一つ選べと言われても難しいのですが、全体として迫ってくるのがオシムならでは。同じことを手を変え品を変え、繰り返し伝えているように思います。それがじんわりとしみて来るのです。

先日旭日小綬章を受章したオシムさんですが、そうそう日本はそれぐらいしてあげるべき日本サッカーの恩人だと思います。毎度の繰り言ですが、本当にあそこで倒れなかったらなあ・・・。一番見たかったパラレル・ワールドです。

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2016年10月20日 (木)

オシムの新著「急いてはいけない」

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 イビチャ・オシム著・田村修一訳『急いてはいけない  加速する時代の知性と「知性」とは』(ベスト新書)を買いました。

これまでに出たオシム本はおそらく全て買っている大江戸ですが、この人には本物の知性がありますし、サッカーのことを語っていても人生を語ることになっているし、人生のことを語ってもサッカーを語ることになっている。そういう人です。

阿部勇樹、羽生直剛、水野晃樹、中村憲剛らサッカー選手および一般人やサッカー関係者からの質問にオシムが答えるという本なのですが、いわゆるQ&Aではなくて、4つの章に分けて「日本」「チーム」「個」「サッカー」について語りながら、トータルした全編の中で、それらの質問に対して答えを出したり出さなかったりしているのです。そこらへんが、いかにもオシムらしいところ。一筋縄ではいきません。

今まで読んだことの延長線上にあり、オシムらしい経験と智慧に裏打ちされた言葉が並びます。ただ、読んでいて「ちょっとこれってどういう意味」とか「なんか(訳が)少し違ってる気がする」ということが何か所かありました。

いつも思うことですが、本書を読んでまた「オシムが倒れずに2010年W杯・南アフリカ大会を戦っていたら・・・」と空想せずにはいられませんでした。ドラえもんに頼んで実現させたいことの一つです。

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2016年7月14日 (木)

コミックス「怪獣酒場」

1468502353031_2じゃーん。『怪獣酒場』(青木U平/小学館)というタイトルのコミックス1巻・2巻です。「みんなのごはん。Powered by ぐるなび」というWEBサイトに連載されていた(いる?)のだとか。

実は近いうちに川崎の「怪獣酒場」に行く運びとなったので、その予習も兼ねているのです(と思ったら、全く予習になりそうもない内容でしたが)。

この本では怪獣酒場のチーフはケムール人。店員のダダやゼットンより偉いあたりが、ケムール人好きの小生としては嬉しいところ。

ま、基本シュールですし、そんな中にところどころファン心をくすぐる設定や小ネタがあるのがまた嬉しいのです。怪獣たちの絵がうまくて、うるさいファンでもこれならOKでしょう。ケムールさんもかっけーし。 作品の雰囲気を例えるなら「四畳半でメトロン星人と語らうウルトラセブン」みたいなもんですね。

1巻が出たのが昨年の10月、2巻がこの4月。ウルトラマン誕生50周年の今にふさわしいお楽しみと言えますでしょう。

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2016年5月26日 (木)

「銀座資本論」by渡辺新

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講談社+α新書『銀座資本論』を読みました。1年ちょっと前に刊行された本で、著者の渡辺新さんは銀座の高級紳士オーダースーツ店「壱番館洋服店」の社長さん('66年生まれ)。強い個性を持ちながら、日本の伝統、銀座の伝統を大切にする方です。

「資本論」というタイトルとは必ずしも合致しない内容で、銀座で商売をしている各分野の代表的人物に渡辺さんがインタビューを行うという本なのです。複数の方にインタビューを行っている章もあるので、計12人へのインタビュー集です。

サンモトヤマの茂登山長市郎さん、虎屋の黒川光博さん、ハツコエンドウの遠藤彬さん、ナイルレストランのG.M.ナイルさんあたりは小生も存じ上げているのですが、不勉強にして知らない方もいらっしゃいます。寿司屋さんも喫茶店主も不動産屋さんも呉服屋さんも・・・。

海外高級ブランドのショップが林立する一方で、この本に出て来るような個人商店が長年生き残っているのが、銀座の「銀座ならでは」の部分です。これは新宿も渋谷も表参道も六本木も真似できないところ(比較的近い日本橋ともちょっと違ったりします)。

みんな銀座の特殊性とその良さについて語っています。当たり前だけど、みんな銀座が大好きなんですね。守るべきものはいつまでたっても同じように守り通す、新しい時代感覚を常に取り入れる、あまり商売を広げない--ここらが銀座で長く商売を続けていくコツのようです。

銀座には末永く、頑固かつしなやかに、この街の個性を守り通してほしいものです。こういう人たちがいなくなっちゃったら、銀座じゃないもの。

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2016年2月19日 (金)

「人生を面白くする 本物の教養」by出口治明

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幻冬舎新書の『人生を面白くする 本物の教養』出口治明 を読みました。結構売れているようなのですが、いやー、面白かった!

著者はライフネット生命(株)の会長兼CEO。この人の話のわかりやすく明解なこと! はっきりした論旨を持ち、平明に誰にでもわかるような説明ができる--こういう人こそが、真の教養人なのだと痛感できます。出口氏はとにかく本をたくさん読み、そこから知識と知恵を広げています。その上で人と会い、旅に出ることで、教養に磨きをかけ、インターナショナルかつ実践的なものにしているようです。英語も大きな武器となっています。

冒頭に紹介されたココ・シャネルの言葉「私のような大学を出ていない年をとった無知な女でも、まだ道端に咲いている花の名前を一日に一つぐらいは覚えることができる。一つ名前を知れば、世界の謎が一つ解けたことになる。その分だけ人生と世界は単純になっていく。だからこそ、人生は楽しく、生きることは素晴らしい。」には唸りますね。これだけでもこの本を買って良かったと言いたいぐらいです。

「日本のリーダー層は勉強が足りない」という章における数々の例証にも「なるほどなあ」と瞠目させられ、感心&共感しました。著者が危惧するように、このままだと日本は本当にまずいことになってしまいます。逆に中国は大したものだということが、よくわかります。

「数字・ファクト・ロジックで考える」「常識を疑う」「行動をルール化する」など、どれもこれも合理的で実利的な氏の行動指針にも感心するばかりです。さらに時事問題への見解も、ことごとく正鵠を射ています。

「速読は百害あって一利なし」というのにも、わが意を得たりでした。また「連合王国(UK)が没落を運命づけられた国家だという事実を過不足なく認識させる」のがオックスフォード大学の教育方針だというのにも、驚きつつ畏敬の念を抱きました。

そんなこんなで、どの章もたまらなく面白いのです。もっと本を読んで、もっと勉強しなくちゃと思いました。モチベーションを上げてくれる本でもあるのです。

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