2018年1月23日 (火)

「家康、江戸を建てる」:人が作った現代東京の礎

_20180120_231759先日『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞した門井慶喜さんが2年ほど前に上梓した『家康、江戸を建てる』(祥伝社)を中古で買って読んだのですが、面白かったですよ。 出た頃に書評などで評判で、面白そうだなと思っていた作品です。

「流れを変える」「金貨を延べる」「飲み水を引く」「石垣を積む」「天守を起こす」の5話に分かれていて、これがまさに家康が江戸の地に移って来て成した大事業。 利根川の流れを変えて、質が良く信用できる貨幣を作り、上水道を整備し、江戸城の石垣と天守を建造したってことで、それらを入府から17年でやっちゃったんですから、スピード感がありますね。

それぞれのプロフェッショナル(治水工事のプロとか、貨幣鋳造のプロとか・・・)が、大事業を意気に感じて精魂を傾け、失敗を乗り越えて成功に至るというストーリーです。誰かが「江戸の『プロジェクトX』とか評してたのは、的を射た表現だと思います。裏返せば、どんな大事業もそれを成し遂げたのは一人一人の個人なのだということを雄弁に語っている物語なのです。

時代物のテイストや風格や考証はしっかり持ちながら、とても読みやすい文体なのもいいですね。面白さも相まって、すらすらと読めちゃいました。東京の今があるのも、これらのおかげなんですねえ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年1月20日 (土)

のん in 『SWITCH』

_20180120_212901
本日発売の『SWITCH』2月号は「のん 7つの冒険」ってことで、表紙+合計60ページの大特集!

7人のフォトグラファーによる7つの切り口ののんさん、そしてロング・インタビュー。

メガネののんもいるし、男性もの着物ののんもいるし、テレキャスター弾いてるのんもいるし・・・いいですねえ。表紙ののんも、のんらしからぬのんで、でもカワユス。

『文藝春秋』1月号には、小松成美さんの、「女優・のん『あまちゃん』からの四年半」と題するレポートが掲載されたし、先日の『週刊朝日』の「2018年を彩る100人」のトップものんでしたし(もちろん『映画宝庫』もありましたね)。

レプロに圧力かけられてテレビ局が弱腰になっても、出版関係はのんさんの味方になってくれてますね。今年はテレビにもその力が及んでいってほしいと切に願います。もちろん映画界にも!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月31日 (火)

「わたしを離さないで」 by カズオ・イシグロ

_20171029_170233ノーベル賞に敬意を表してって感じで、先日古本屋で買って、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』(早川文庫/土屋政雄訳)を読みました。

これ、映画化されたもの(2011年公開)は観ていますが、今一つ印象が薄くてほとんど忘れちゃってました。 (その時の当ブログの記事はこちら↓)

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-f87f.html

名人芸というか何というか、見事な筆の運びです。ある「謎」を孕みながら進行する物語。少しずつ小出しに秘密を明かしながら、じれったいほど徐々に核心に迫って行く筆致で、小説の面白さを堪能させます。先が知りたくなって、ぐんぐん読み進むのです。

これ、何の予備知識もなく読んだなら、さぞや驚くことでしょうねえ。それぐらいオールド・イングランド調の設定とSF的な謎とがかけ離れていて、でもリアルなキャラクターや精緻な心理描写が、そのギャップを感じさせないのです。そこらが小説家の腕ってもんですね。さすがです。

終盤からラストに漂う無常観は、映画も小説も同様です。静かに胸を打つものがあります。そして読む者(観る者)は、人間というものについて、人の生について、深く哲学せざるを得なくなるのであります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月 8日 (月)

「みみずくは黄昏に飛びたつ」by川上&村上

1494167645717
川上未映子が村上春樹にロング・ロング・インタビューを行った本『みみずくは黄昏に飛びたつ』(新潮社)を読みました。

4つの章に分けたインタビューで、少女時代からの村上作品の熱心な愛読者でもある川上さんがぐいぐいと村上さんに迫ります。時として「村上さんたじたじ」といった様子になるあたりが、結構スリリングです。

川上さんは縦横無尽に過去作品からの事例や引用を持ち出しますが、村上さんの方では大抵「そんな事書いたっけ?」って感じで、のれんに腕押し感たっぷりです。そんな所を含めて、とにかく面白いQ&Aの連続です。川上さん、鋭いです。ファンとしての視点、小説家としての視点、フェミニストとしての視点から、ズバズバと聞いたり、村上さんの答にのけぞったりしています。

中心となるのは『騎士団長殺し』なのですが、やはりこの作品の謎はきっちり解き明かされるわけもなく、謎のまま残ります。大江戸としてはこの作品、きっと1年後ぐらいに第3部が出るんだろうな(『ねじまき鳥クロニクル』や『1Q84』のように)と思っていたのですが、これを読むと「あ、あれで終わりなんだ。村上さん、基本的には続きをつくらないでいいと思ってるんだ」と感じずにはいられません。

まあ、それにしても村上春樹って、長編でも短編でもエッセイでも悩み相談でもインタビューでも、金太郎飴的にどこを切っても村上春樹だなあ。

帯に「ただのインタビューではあらない」と書いてあるあたりに、いい感じのセンスですね(『騎士団長殺し』を読んだ人には響くってことで)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月27日 (木)

「湘南ベルマーレ2016フロントの戦い たのしめてるか。」を読んで

1493299046109
『湘南ベルマーレ2016フロントの戦い たのしめてるか。』(水谷尚人・池田タツ/産業能率大学出版部)を読みました。そのチームとしての在り方が注目されるので、結構出ているベルマーレ本の最新刊です。

湘南ベルマーレの代表取締役社長である水谷尚人のドキュメンタリーをはじめ、2016シーズンのベルマーレのスタート前からJ2での翌期へ向けてのあれこれを描くのですが、特にチームを支えるフロントの面々に焦点を当てているところが珍しい作りです。全スタッフ(といっても20人かそこらですが)へのインタビューを含め、ベルマーレというチームが好きな人以外にも(たとえばビジネス書が好きな人や、裏方が好きな人にも)興味深い内容になっています。

湘南が圧倒的強さでJ2優勝を果たした2014シーズンの先発メンバーのうち3年後の今シーズン、チームに残っているのは菊地俊介ただ一人という衝撃的な事実も書いてありました。あとの10人はみんな、湘南より財政規模の大きなクラブに移籍してしまったわけです。ありていにいえば、給料安いのに「使える」ヤツだから、引き抜かれちゃったのです。つらいですね。もっと多くの移籍金が育成したクラブに残るシステムを、切に望むものであります。

この本を読んで、新しいことも知ることができましたし、ますますベルマーレが愛すべきチームであることを確信できました。大江戸は昔からこういう「小さくても志のあるユニークな」ものが大好きなのです。早く新スタジアム計画がまとまっていくように、願うばかりであります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月22日 (水)

「騎士団長殺し」ようやく読了

1490184069043
はい、ようやくです。ようやく読み終えました、村上春樹の『騎士団長殺し』第1部「顕れるイデア編」・第2部「遷ろうメタファー編」。発売日の朝に買った割には、長い道のりでした。ま、大江戸の場合、通勤等の電車内でしか本を読まないし、本だけじゃなくてフリーペーパーやフリーマガジンを読んだり、スマホを触ったりもしているので、しかもそんなに長い通勤時間でもないので、2巻1,000ページ以上の長編となると、随分かかってしまうのです。

でもそれは取りようによっては、「長く楽しめた」「値段のもとは十分取った」とも言えるので、悪いことじゃあありませんやね。

それにしてもこのブックデザイン、渋い色調とは言え緑系と赤系なんて、『ノルウェイの森』を連想しないわけにはいかないじゃないですか。

で、作品は素直に面白かったです。特に第1部の後半から第2部の前半にかけて、加速度的にぐんぐん面白くなっていき、本当に「小説の面白さ」を堪能させてくれます。 でも第2部の後半になって、妙にスローダウンしてしまいます。そしてクライマックスがないままに終幕。この感じは・・・、そして決着のつかないあれやこれやから考えると、また『ねじまき鳥クロニクル』や『1Q84』の時と同じように、最初に2巻を出して、翌年あたりにもう1巻追加するというパターンなのかも。だって、そうでなければ「終わり」になってませんもん、これ(「第1部おわり」「第2部おわり」としか記されていませんし)。

いつも通りの(現代社会を彩る)固有名詞の嵐、いつも通りの比喩の嵐、そしてしばらく離れていた「ムラカミらしい物語」(夢が出て来たり、穴があったり、壁があったり、セクシャルな描写が冴えてたり、シュールな展開があったり、ファンタジーの世界が出現したり、邪悪の影があったり、イノセンスが危機に瀕したり・・・)です。いつも通り「こんなこと言う奴いねーよ!」な会話が繰り広げられます。絵描きというクリエイティブな職業の主人公を登場させたのが、新しいところでしょうか。

たっぷり楽しませてもらいはしましたが、読み終えて宙ぶらりんな気分になってしまったことも事実です。うーむ、早く第3部(出ますよね??)を読みたいものです。「第3部はあらない」(←読めばわかる)なんて言わないでくださいね。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年1月11日 (水)

「キネマ旬報」ベストテン発表

 昨日、恒例の『キネマ旬報』ベストテン2016が発表されましたね ↓

http://www.kinenote.com/sp/kinejun_best10/

 今年は邦洋とも順当な結果だったので、「うん、なるほど」「まあ、そうだよね」って感じ。計20本の中で、未見の作品が一つも無かったってことも、順当さを示しております。

 毎年読者選出ベストテンを投票している立場で言いたいことがあるとすれば、今年もまた12月半ば(12/15)までの1年間の公開作が対象だってこと。以前のようにというか、アカデミー賞のようにというか、1/1~12/31の公開作というシンプルな形にしていただきたいものです。決算号を遅らせてでも、そうしてほしいのです(もちろん年末の公開作を観る都合上、投票締め切りもせめて1/10頃にしていただきたいですが)。なぜなら、その年(暦年)の公開作と対象作が異なるってのは、後から調べる時に何かと面倒ですから。更に、自分でその年のベストテンを作ってブログにも発表している立場とすれば、同じ年に2種類のベストテンが存在してしまい、ややこしいのです。今回も、12/23公開の『アイ・イン・ザ・スカイ』を片方では入れ、片方では入れないために、ベストテン上位が大きく変わってしまうのです。

 それはさておき、日本映画では、『この世界の片隅に』が1位、『シン・ゴジラ』が2位と、ある意味一番想定しやすかったパターン。3位『淵に立つ』と4位『ディストラクション・ベイビーズ』は、入るとしてももう少し下位だと思っていたんですけどね。以下秀作、力作が並びますが、新聞によると『海よりもまだ深く』と『64 ロクヨン』が次点だったとか。普通の年なら当然テンに入る作品でしょう。自分で選ぶ時も難しかったのですが、本当に昨年は類例がないほど優秀な作品が多い年でした。そう、『君の名は。』も入ってませんしね。

 一方、外国映画は1位『ハドソン川の奇跡』は予想できたものの、『キャロル』が2位にまでなるとは思っていませんでした。これも自分で1位を選ぶことが難しかった(群を抜いて秀でた作品が無かった)のと同様、皆さん選ぶのに苦労したのではないでしょうかねえ? そんな中、スピルバーグ久々の秀作『ブリッジ・オブ・スパイ』が3位に入ったのは嬉しかったなあ。4位『トランボ』も頑張りました。1~4位をはじめ、10作中7作がハリウッド映画でした。

 個人賞では、宮沢りえ・杉咲花の『湯を沸かすほどの熱い愛』コンビが主演&助演女優賞を獲得したのには、大いに納得。花ちゃん、あの若さで助演賞ってのは珍しいけど、小生も1票!です。 柳楽優弥の主演男優賞には、ちょっとびっくり。佐藤浩市や本木雅弘や岡田准一らを差し置いて・・・ですからねえ。

 2/3発売のベストテン号で明らかになる読者選出のテンも楽しみです。 そして皆様ご期待の大江戸時夫のベストテンも近日中に発表しますので、もうしばらくお待ちください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年12月26日 (月)

「酩酊!怪獣酒場」第3巻

1482754671652
ウルトラ怪獣たちが出演(?)する人情酒場コメディ漫画『酩酊!怪獣酒場』の第3巻が出たので買いました。

(1・2巻はこちら↓)

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-b8d1.html

表紙は焼鳥を焼くゼットン。その背後にはカネゴンとダダの姿も。こんな感じにシュールなのです。 3巻では怪獣酒場のチーフのケムールさんがますます主役として活躍。ケムール人ファンの小生としても、嬉しい限りです。

今回、怪獣以上にインパクトがあったのが新入社員の瀬戸文太。打たれ弱くて、怒られるのがいやなばっかりに、わざと無能を装って見放されているというとんでもないキャラ設定なのです。うーむ、考えさせられる今日性がありますね。

そして最後にオドロキの展開が待っています。びっくりです。 第4巻が楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月16日 (水)

「オシム語録」を読んで

1479304957098_2_2
文藝春秋から出た『オシム語録 人を導く126の教え』(監修:田村修一)を買いました。もともとは『Number』およびメルマガに載せられた2006年以降のインタビューの中から印象的な言葉をひろったものだそうです。

「部下を動かす言葉」「リーダーシップに必要な言葉」「組織を構築する言葉」「人生に効く言葉」「日本人に告ぐ」の5章に計126の言葉が、その解説とともに掲載されています。基本的にサッカーの事を語っていますが、それが仕事や人生の金言にも置き換えられるのが、実にオシム流なのです。

ハッキリ言って、一つ一つの言葉はそんなにアッと言わせるものではないし、大好きな言葉を一つ選べと言われても難しいのですが、全体として迫ってくるのがオシムならでは。同じことを手を変え品を変え、繰り返し伝えているように思います。それがじんわりとしみて来るのです。

先日旭日小綬章を受章したオシムさんですが、そうそう日本はそれぐらいしてあげるべき日本サッカーの恩人だと思います。毎度の繰り言ですが、本当にあそこで倒れなかったらなあ・・・。一番見たかったパラレル・ワールドです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月20日 (木)

オシムの新著「急いてはいけない」

1476970144852
 イビチャ・オシム著・田村修一訳『急いてはいけない  加速する時代の知性と「知性」とは』(ベスト新書)を買いました。

これまでに出たオシム本はおそらく全て買っている大江戸ですが、この人には本物の知性がありますし、サッカーのことを語っていても人生を語ることになっているし、人生のことを語ってもサッカーを語ることになっている。そういう人です。

阿部勇樹、羽生直剛、水野晃樹、中村憲剛らサッカー選手および一般人やサッカー関係者からの質問にオシムが答えるという本なのですが、いわゆるQ&Aではなくて、4つの章に分けて「日本」「チーム」「個」「サッカー」について語りながら、トータルした全編の中で、それらの質問に対して答えを出したり出さなかったりしているのです。そこらへんが、いかにもオシムらしいところ。一筋縄ではいきません。

今まで読んだことの延長線上にあり、オシムらしい経験と智慧に裏打ちされた言葉が並びます。ただ、読んでいて「ちょっとこれってどういう意味」とか「なんか(訳が)少し違ってる気がする」ということが何か所かありました。

いつも思うことですが、本書を読んでまた「オシムが倒れずに2010年W杯・南アフリカ大会を戦っていたら・・・」と空想せずにはいられませんでした。ドラえもんに頼んで実現させたいことの一つです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧