2022年6月 1日 (水)

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」:主人公が甘ちゃん    #マイニューヨークダイアリー #マーガレットクアリー #シガニーウィーバー #サリンジャー

1_20220601230201映画『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』は、実話に基づく作品というか、ジョアンナ・ラコフの回想録『サリンジャーと過ごした日々』の映画化。本も映画も原題は“My Salinger Year”です。サリンジャー・マニアの大江戸としては当然読んでおりました。

出版業界版『プラダを着た悪魔』と言われてますが、まあそうですよね。アン・ハサウェイとメリル・ストリープが、マーガレット・クアリー(アンディー・マクダウェルの娘なんですってね。確かに似てます。)とシガニー・ウィーバーに置き替わったわけですね。でも、そうなるとあの二人ほどのインパクトはないし、二番煎じになった分不利ですよねえ。大江戸の評価としても、あの作品を超えていないことは明白です。

でもそれなりに健闘はしています。原作を上手に映画化したなあとも思います。でもこの主人公、最後まで結構ダメじゃん。どう成長したのかもはっきりしないし。そもそもあの状況になって、かなり長いことサリンジャー作品を読んでないってのが信じられません。仕事に誠実じゃないってことですよね(まあ、原作がそうだからしょうがないんですが)。甘ちゃんです。まるで『ちむどんどん』の主人公です。

シガニー・ウィーバーの方は、さすがの貫禄。素晴らしい芝居を見せております。でも、メリルが見事にやっちゃってますからねえ。そこの比較になると、辛いところです。

大江戸的には、職場の壁に飾ってあるサリンジャーの肖像写真や顔を隠して登場するジェリー(サリンジャー)の姿よりも、職場の棚にLittle Brown社版のサリンジャー作品がずらりと並んでる風景にぐっと来ましたね。

 

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2022年2月 3日 (木)

「キネマ旬報」2021ベストテンの発表    #キネマ旬報 #キネ旬ベストテン #2021年キネマ旬報ベストテン

Dsc_0074_copy_600x838 昨年同様のスタイルで、『キネマ旬報』の2021年ベストテンが発表されました。同様のスタイルとは、日本映画/外国映画両部門ともベストテンの第1位作品と個人各賞を発表し、2位以下がどういうことになったかは、直後に発売される最新号を買って確認してくださいよ、というもの。今年で言うと、2月2日の夜7時からYouTubeで発表式典のライブ配信があり(大江戸は、後から飛ばし見で見ました)、翌々日の4日にベストテン号発売。ただ、大江戸は定期購読者なので今日3日に届いたんです。昨年は「発売日まではSNS等に書いちゃダメ」って紙がはいっていたので控えましたが、今年は入ってないので、この記事もすぐにアップしちゃいます。

邦画も洋画も1位作品の圧勝でした。『ドライブ・マイ・カー』と『ノマドランド』。特に洋画は対抗馬がなかったんだと思います。だって2位がワイズマンの『ボストン市庁舎』ですからね(大江戸も3位に入れた作品とは言え)。ワイズマンとしても過去最高位。 でも、邦画も洋画も入るべき作品が入った印象。近年の中では「えー?!」とか「そりゃないでしょ」といった感想の無い順当な年だったと思います。強いて言えば、邦画で9位の『いとみち』が落ちて、11位の『BLUE ブルー』が繰り上がってくれると良かったなあとか、洋画10位の『少年の君』は、両部門のテンの中で唯一観逃していた作品だなあとかです。 それにしても、1位『ドライブ・マイ・カー』、3位『偶然と想像』(および監督賞、脚本賞)の濱口竜介さんは凄いですね。 ちなみに大江戸の洋画第1位『ラーヤと龍の王国』は、誰一人として(1点たりとて)投票しておりませんでした。…わかっとらんねえ。

(大江戸の2011年邦画/洋画トップテンはこちら ↓ )

2021邦画トップテン    #2021年日本映画ベストテン #2021年邦画ベストテン #シンエヴァンゲリオン #偶然と想像 #庵野秀明 #濱口竜介: 大江戸時夫の東京温度 (cocolog-nifty.com)

2021洋画トップテン    #2021年外国映画ベストテン #2021年洋画ベストテン #ラーヤと龍の王国 #春江水暖: 大江戸時夫の東京温度 (cocolog-nifty.com)

そして読者選出ベストテンも、まあ順当な印象。こちらも『ドライブ・マイ・カー』と『ノマドランド』の圧勝でした。1年前の邦画部門のような変事(三浦春馬ファンの組織票と思われる『天外者 てんがらもん』の第1位)は起きずに、ほっとしました。

個人賞もみんな妥当なところ。でも今年は男女とも「新人賞」が不作気味でしたね。

さて、これを読んで気になった人は、4日発売の『キネマ旬報』ベストテン特別号を買ってください。経営的にずっと苦しい会社ですから。「キネ旬ベストテン」を未来につなぐためにも、よろしくお願いします(小生はまったくの部外者ですが、ずっと応援してますので)。

 

 

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2021年10月30日 (土)

「そして、バトンは渡された」:もっとドライに!    #そしてバトンは渡された #映画と原作

1_20211030205201 映画化された『そして、バトンは渡された』ですが、小生は珍しく原作小説を読んでいて、その感想と夢想キャスティングを記しました(キャスティングでは、岡田健史だけが今回の映画と一致していたんですよね)。↓

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2020/11/post-decb6a.html

うーん、永野芽郁、田中圭というキャスティングで監督が普通の娯楽職人=前田哲だと聞いた時点で、あまり期待するのはやめてしまいましたが、まあ、それで良かったって感じの出来でした。いや、別に悪くはないんです。でも期待を上回ることはなかったというか、「やっぱり原作の方が上」を覆せなかったというか…(原作と映画とは別物だということは、理解しておりますが)。この原作なら、もっと名作にできたのかも知れないのになあと思ってしまいました。

脚本が(腕を見せようと張り切ったのか?)ずいぶん大胆に時制を原作から改変したり、妙にトリッキーな構成にしたり、あれやこれやをいじってます。全体的に原作のカラッとしたドライな味が、かなりウェットなものになってしまいました。あのあっけらかんとしたドライさが原作の良さだったし、新しさだった思うのですが、映画でもTVでも昔からメインストリームであり続けている「感動の物語」になっております。まあ、確かにけっこう泣かされはしましたが(涙腺弱いもんで)、それって「感動ポルノ」とまでは言わないけど、昔ながらの「お涙頂戴」劇ですよねえ。そこがちょっと…。 それはそうと大江戸は、はじめに『そして、バトンは渡された』というタイトルが画面に出ただけで、その言葉に感動して泣きそうになってしまいましたもん(笑)。

でも映画を最後まで観ても、「やっぱり森七菜のが良かったんじゃね?」「やっぱり田中圭じゃなかったんじゃね?」という思いは、変わりませんでした。あ、それと子役の稲垣来泉(くるみ)ちゃんが、かわいいしウマイったらありませんでしたよ。

 

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2021年10月 6日 (水)

「謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか」:驚愕の名探偵的文学評論   #謎ときサリンジャー #竹内康浩 #サリンジャー

Center_0001_burst20211006222502962_cover 新潮選書の『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』(竹内康浩 朴舜起)は、なかなか刺激的な文学評論でした。帯に書かれた文章を見ても、興奮すべき一冊だということがわかりますよね。

著者二人はアメリカ文学者にして北海道大学大学院助教授の竹内氏と、北海道大学大学院生である朴氏。そして果敢にチャレンジしたのは、J.D.サリンジャーの短編集『ナイン・ストーリーズ』冒頭の『バナナフィッシュにうってつけの日』のラストで拳銃自殺したと思われていたシーモアの死への疑問提起。果たしてそれは自殺だったのか? そもそも死んだのはシーモアだったのか? そして、その現場にはもう一人の男がいたはずだと言うのです。

ほとんど「たわごと」です。でも、読者はすぐにそれがたわごとではないことに気づかされます。そして、そこからは多くの「証拠」と大胆な推論に驚きあきれながら、ページを繰っていくことになるのです。作品も『ナイン・ストーリーズ』の最後の作品『テディー』をはじめ、サリンジャー最後の発表作『ハプワース16,1924年』などにも飛び、最後には『キャッチャー・イン・ザ・ライ』につながっていきます。その魔術的展開は、スリリングそのものです。評論ってもんは、実の作者ですら気づいてないことに気づいたり、作者が意識していなかったことをきちんと形にしてあげる作業なんですねえ。

その中で重要な位置を占めるのは「禅」の要素。英文学科出身で、卒論が『J.D.サリンジャーの作品におけるイノセンス』だった大江戸としても、これには唸りました。目からウロコでした。竹内氏のあとがきにある「やはりサリンジャーは禅なのだ」と言う言葉に、大いに納得しました。 一方ではこれだけ死を扱いながら、サリンジャーの戦争体験の方には目もくれてないあたりにも驚きました。うーん、やはり小生なんぞとはレベルが違います。おそれいりました。

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2021年8月29日 (日)

「ドライブ・マイ・カー」:良作以上傑作未満   #ドライブマイカー #濱口竜介 #村上春樹 #西島秀俊 #ワーニャ伯父さん

1_20210829223801 映画『ドライブ・マイ・カー』は、前作『寝ても覚めても』が大江戸のその年のベストワンだった濱口竜介監督の新作だし、カンヌ映画祭をはじめ評判は高いし、大江戸は村上春樹のファンでもあるし、ってことで期待ヒートアップ気味で観ました。何しろチェーホフの『ワーニャ伯父さん』を、予習として読んでしまったぐらいです。

確かに素晴らしい作品でしたし、あの短編がこういう風に濱口映画になるんだなあって感じに翻案されておりました。でも、『寝ても覚めても』や『ハッピーアワー』に較べると、理詰めに計算された感じが強過ぎて、アラはないんだけど衝撃や深い感動は少なかったんです。あくまでも小生の中で、ってことですけど。

ワンカットごとの完成度は非常に高いと感じました。撮影監督の四宮秀俊の見事に映画的な絵が、作品のクォリティや緊密さを支えてくれています。もちろん役者たちの演技も素晴らしいです。西島秀俊、三浦透子、岡田将生は誰もが称賛しておりますが、大江戸的には、『ワーニャ伯父さん』でソーニャを演じたパク・ユリムに感銘を受けました。清楚で感じが良くて、一所懸命に生きている人の美しさがにじみ出ておりました。彼女が(手話で)西島と演じた『ワーニャ伯父さん』のラストは圧巻でした。感動しました。

あと、西島をはじめキャストたちの「喪失感を抱えた」感じと、下世話な生活感がない感じが、いかにも村上春樹作品の登場人物でした。中でも西島の妻を演じた霧島れいかは、いかにも村上作品に出て来る女性の顔です。小説だけど、絶対にそういう顔なんです。と思ったら、彼女はトラン・アン・ユン監督の『ノルウェイの森』にも出てたんですって!(全然覚えておりませんでした。)ほら、やっぱり村上作品的な顔なんですよ。

広島のゴミ焼却所の映像は、なんか良かったなあ。なぜなんだろう? それが映画ってもんかな。 一方で、ラストの韓国シークェンスの意味はよくわかりませんでした。ああとかこうとか想像はできるんだけど、あまりにも観客の想像力に委ね過ぎでは? もう少し観客を導くためのヒントが欲しかったですね。

本作のオープニングタイトルは、物語が進行して45分ほどたったところで出て来ました(もうオープニングじゃないけど)。2時間59分の作品とはいえ、大胆にやってくれましたよね。車の走る映像にかぶせて「西島秀俊」と出て来た時には、何が起きたのかと一瞬驚いてしまいました。

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2021年8月 4日 (水)

「イラストレーター 安西水丸展」@世田谷文学館   #安西水丸展 #イラストレーター安西水丸展 #世田谷文学館 #村上春樹

Dsc_03503_copy_675x576 芦花公園にある世田谷文学館で開催中の『イラストレーター 安西水丸展』(~8/31)を鑑賞。2014年に急逝された安西水丸さん(享年71)の回顧展です。

Horizon_0001_burst20210803152901239_cove 文学館の入口がいつになくゆるくてポップな水丸調になっておりました。

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水丸さんって、小生なんぞには村上春樹作品の挿絵や表紙絵をはじめとする仕事が一番なじみ深いのですが、小説、エッセイ、絵本、マンガなど幅広くやっておられたんですねえ。

Dsc_0344_copy_1024x576 村上春樹本に関しては、「おお、みんな持ってるぜ」って感じでしたが、懐かしいですね。

Horizon_0001_burst20210803161331743_cove 会場の壁面が多くの部分で、ベニヤ板むき出し(無塗装)なんですが、そういう感覚がいかにも水丸さんです。壁の上に春樹さんの頭が出ているのなんかもあったりして…。

 

 

Dsc_03452_copy_951x576 全体的に遊び心に溢れた展示となっています。順路もどう見たらいいんだかわからない! まあ、ぐるぐるとご自由にどうぞって感じなんでしょうね。

 

Dsc_03462_copy_1024x513 今まで気づかなかったけど、切り絵の作品なんかもあったんですよね。マティスの影響ですね。だから、彼の色彩って、キレイなんですね。

Horizon_0001_burst20210803155928221_cove 水丸さんにとって重要な三人がフィーチャーされていて、それは春樹さんと嵐山光三郎さんと和田誠さん。和田さんとの合作シリーズなんて、楽しいですよー。

 

Horizon_0001_burst20210803160434853_cove 広告とかデザイン関係のお仕事が多かった水丸さん。デザイン関係のパーティーなどで、お姿をみかけたことが何度かありました。

Horizon_0001_burst20210803155806601_cove でも、旅好きで、酒好きで、お土産物やおもちゃが好きで、スノードームも大好きで、スタイリッシュにおしゃれ。ステキな大人でしたよね。

出口付近に展示してあった彼の愛用バッグが、カッコ良かったなあ。

 

 

Dsc_03472_copy_576x946 意外なほど見どころが多くて、楽しい展覧会でした。ショップで売ってた水丸グッズも、なかなかカワイイものが多かったですよ。

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2021年7月15日 (木)

「ディープフィクサー 千利休」:荒唐無稽なホラ話  #ディープフィクサー千利休 #波多野聖 #千利休 #歴史のホラ話

Tripart_0001_burst20210715221737283_cove 波多野聖の『ディープフィクサー 千利休』(幻冬舎文庫)を読了。荒唐無稽な娯楽作品です。

まず章の題名を見ていただければわかるのですが--「利休、根回しをする」「利休、ソフトパワーで人を動かす」「利休、人間関係のビジョンを示す」など、あたかもビジネス本のごとし。利休の行為や思想を現代社会のビジネスになぞらえて、彼のフィクサー的な政治力を解き明かしています。

(以降ネタバレあり!) そして、あっと驚きながらあきれかえる大仕掛け! なんと、死んだはずの明智光秀が生きていて、秀吉の庇護のもとに茶頭・千利休として政(まつりごと)の裏側を支配し、世に伝えられる様々な業績を残したというホラ話なのでした。ただ、利休自身が謎多き人物なので、興味深い考察であるとも言えなくはないです。実際、「なんで2畳の茶室・待庵を作ったのか?」「なんで武士でもないのに切腹したのか?」「なんで辞世がやたらと勇ましいのか?」などという利休に関する謎に答を与えているので、ある種の説得力を持ったホラであることも確かなのです。大きな嘘をつくために、細部のリアリティを精緻に作り込んでいるというか。

でも、利休の初心者向けではなく、ある程度彼の生涯や業績やエピソードを知っている人に向けた変化球的な作品です。利休本をやたらと読んでる大江戸は、楽しませていただきました。

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2021年6月 2日 (水)

森村誠一の「忠臣蔵」   #忠臣蔵 #森村誠一 #森村誠一の忠臣蔵

1月に「大江戸は『忠臣蔵』が好き」という話を書きました。 ↓

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2021/01/post-3b6873.html

Center_0001_burst20210602215944914_cover で、その後ぐらいに森村誠一の『忠臣蔵 上・下』(朝日文庫)を買ったのでした。ネットで評判が良かったものですから。もう絶版になっている作品で、メルカリで探して買ったのでありました。1993年の第一刷ですが、かなり日焼けして、水分を吸ったような汚れもありましたが、まあしょうがありません。それよりも驚いたのが、そのぶ厚さ。本文最後のページまでが、上巻604ページ、下巻588ページ。上下合わせて1,200ページ超です! しかも今の文庫よりも、文字が全然小さいので、その分量たるや!

元禄時代の、あの事件を生んだ時代背景(綱吉と生類憐みの令やら柳沢吉保やら…)を綿密に描いておりまして、四十七士やその周辺の人物一人ひとりにもけっこうスポットを当てていて、まさに大河ドラマという趣きなのです。

あとはニュートラルで現代的な視点とでも申しましょうか、例えば吉良側の「こっちが被害者だ」という視点にも立って(そこにも説得力を持たせて)描いておりますし、武士の社会の馬鹿らしさや残酷さも(美点とともに)描出しております。更には、大石内蔵助が世間の目を欺くために蕩尽の日々を送ったところも、非常に人間的にというか、かなりの淫蕩三昧であったことを(ウソかホントかわかりませんが)見てきたように描写しております。

まごうことない力作であり、実に面白いので、絶版のままではもったいないと思ったりしてしまいます。でも今、『忠臣蔵』を読もうなんて人はいないのかなあ。面白いのになあ。とはいえ、小生はえらく時間がかかってしまいました。通勤途上でしか読まないし、スマホ優先の時もあるし、その間に『キネ旬』読んだり、ベルマーレの本読んだり、フリーペーパーやら駅のフリーマガジンやらを読んだりもしていたので、なんだかんだ3-4ヶ月もかかってようやくの読了。読書の方も討ち入り同様、なかなか事が進まないのでありました。

 

 

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2021年5月20日 (木)

ベルマーレ本「縦の美学Ⅱ」   #縦の美学 #湘南ベルマーレ #湘南スタイル

Center_0001_burst20210520215528235_cover 4月に『たのしめてるか。2020』を紹介(↓)したばかりですが、またも出ましたベルマーレ本。

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2021/04/post-52e18d.html

その名も『湘南ベルマーレ 縦の美学Ⅱ』。そう、2013年に出た『縦の美学』(↓)の第2弾です。

http://oedo-tokio.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-f17e.html

第1弾は96ページとかなり薄い本でしたが、今回は倍近い184ページとそこそこあります。でも(書店ルートに流通させるための)バーコードはついておらず、価格も入ってません。きっと関係者やメディアに配ったり、営業用に使ったりするのでしょうね(小生はベルマーレの通販サイトで買いましたが、あとは地元やスタジアムで売ってるようです)。

ベルマーレの歴史やサッカー哲学=縦の美学に関する章に加え、浮嶋敏監督をはじめ、アカデミーダイレクター、育成統括部長、U-12統括、坂本紘司スポーツダイレクターらがベルマーレのサッカーを語る章、齋藤未月・石原広教・田中聡らアカデミー出身選手のインタビュー、水谷社長、眞壁会長の言葉といった内容です。

浮嶋監督の就任以来、従来の「球際で負けずにボール奪取したら走力を生かしてゴールに迫る、縦に早いサッカー」から、次のステップへの進化を目指していますが、今期はそれが形になって来ました。ベルマーレのサッカーの定義が従来より複雑になっていますので、それを解き明かして共有するためにも必要な本なのです。明文化して共通認識にするということは、ブランドを守るうえで最も大切なことなのです。

「湘南スタイル」は、もともとは運営予算が小さく、タレントの少ないクラブが、何とかして勝つための工夫から生まれて来たものだと思います。でもそれはこのクラブの個性(ブランド)として、チームとサポーターと地元を結びつける哲学として、形を少しずつ変えながら進化しています。これからも末永く継承され続けていくことでしょう。

 

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2021年5月15日 (土)

「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道」:本造りのお仕事映画としても上質   #映画森山大道 #過去はいつも新しく未来はつねに懐かしい #写真家森山大道 

1_20210515230701 映画『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道』ってタイトルを聞いてまず思ったのは、クレイジーケンバンドの『愛があるなら年の差なんて』という曲の歌詞:「昔誰かが言ってた言葉 過去はいつでも新しくて 未来はつねに懐かしいって なんとなくわかる気がした」ってフレーズ。ググってみたけど、誰の言葉かわかりませんでした。同名の大道さんの本が2000年に出てるので、そこが元なのかなあ?

緊急事態宣言で4月30日の公開が延びてましたけど、ようやく公開された本作、いやー、素晴らしいドキュメンタリーでした。2年前に当時80歳の森山大道に密着して、東京の街でコンパクトカメラ(ニコン・クールピクス)を手に撮り続ける彼の姿と、過去からの作品、そして半世紀前(1968年)のデビュー写真集『にっぽん劇場写真帖』の新生プロジェクトの様子を描きます。

80歳になっても変わらず創作意欲旺盛な大道さんも面白いのですが、実は編集者と造本家と組んだ出版プロジェクトの描写の方が更に面白かったりして、一作で二本分楽しめる構成になっておりました。何しろ造本家が北海道で材料木を伐採するのを見つめるところから本造りが始まっていくし、その木材~製紙~印刷・製本と言う過程の映像が素晴らしく(これだけでもドキュメンタリーになりそうですし)、並行して描かれる編集打ち合わせ~資料の整理~製作~用紙決定~校正~擦り出し立ち会い~完成品チェック~森山さんのチェックという流れも(この方面の隅っこをちっとはかじったことのある大江戸としては)面白くてたまりませんでした(森山さんのチェックの、あの緊張感!)。「お仕事映画」としても上質なのです。あのおしゃれなプリンティング・ディレクターさん、「1㎏中に5gのスミ・インクを足す」という職人の感覚で見事な結果を出すあたり、カッコ良すぎます!

撮影も、音楽も、映画的に上質です。そして大道さんの写真はやっぱり力があるし、凄い。街中で面白いと感じる対象なんて、小生と似ていて、親近感を感じもしました。でも、あんなコンデジであの世界を作ることができるなんて、やっぱりマジックです。

監督・撮影・編集の岩間玄さん、良い仕事をしましたね。

 

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